「攻守においてパーフェクトなチーム」を目指すリカルド・ロドリゲス監督の妥協なきスタイル構築。柏レイソルのアグレッシブな[3-4-2-1]がとにかく面白い!

Jリーグ3バックブーム探求#5
なぜ、Jリーグに再び3バックブームが到来しているのか?日本サッカーの戦術史も振り返りつつ、3バックの伝統があるサンフレッチェ広島から、今季より本格導入した町田ゼルビアに、大木武監督が独自性を貫くロアッソ熊本まで注目クラブを参考事例に流行の理由を探求する。
第5回は、新指揮官に就任したリカルド・ロドリゲス監督の下で躍進を遂げている柏レイソル。昨シーズンとは大きく変わった攻撃的な[3-4-2-1]を敷く中で、果たしてチームがキャンプからどのような進化を遂げているかを、番記者の鈴木潤が深掘りする。
振り切った真逆のスタイル。堅守速攻型からボール保持型へ
昨季までのオーソドックスな[4-4-2]から[3-4-2-1]へ移行し、戦術に関しては堅守速攻型からボール保持型へ、真逆のスタイルへと振り切った。
リカルド・ロドリゲス監督が志向するサッカーは攻撃的であり、「相手を見ながら適切な立ち位置を取る」ということが前提にある。
ただ、「言うは易し、行うは難し」という言葉がある。
状況に応じて選手の立ち位置が変わるため、柏レイソルのシステムはかなり特殊である。今年1月のキャンプで、古賀太陽と田中隼人に新チームの戦い方について話を聞いたときも、彼らはその特殊性ゆえの難しさと、同時に戦術が積み上がっていく手ごたえを口にしていた。
「状況次第では難しいシチュエーションが出てくると思いますけど、そういう時でも自分たちで考えながら、監督の言うことだけじゃなくて、自分たちで導き出しながらやれているので、戦術面の難しさに関してはだいぶクリアになってきている部分が多いです」(古賀)
「去年もV・ファーレン長崎で、同じような攻撃的なサッカーをやっていたんですけど、リカルドはそれにプラスして、もっと一人ひとりの立ち位置や役割が大きくなった印象です。開いたり、中に入ったり、自分が攻撃に出ていくこともある。練習していて思うのは難しいということ。でも、自分にはなかった戦術の幅が広がっているので、良い手ごたえがあります」(田中)
原田亘。久保藤次郎。小泉佳穂。右サイドを攻略するローテーションの妙
第17節終了時点で、柏の1試合平均のパス本数は608.4本、平均ボール支配率は58.5%、これはいずれもリーグ1位の数字だ。そしてパスの供給源となるのは、3バックの中央を担う古賀。彼のパス総数はリーグトップの1532本にも上る。
このデータにも象徴されるとおり、柏は後方から丁寧にパスをつなぎ、攻撃を構築していく。足元の技術に長けたGK小島亨介を使い、「3バック+1」の局面を作ってのビルドアップ、さらに小島が加わることの数的優位を活かし、3バックの右を務める原田亘を高い位置へと押し出す。そこにボランチの熊坂光希がリンクマンとして、様々な角度からでも受けられるパスラインを敷き、もう一枚のボランチ・山田雄士は中央から左寄りの立ち位置でバランスを取る。
3バックに捉われず、様々なシステムに可変する柏の特殊性を発揮するうえで、キーマンの一人が原田だ。
……

Profile
鈴木 潤
2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。