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Jリーグでは異質な町田の「北欧的」な重厚感と割り切った合理性。ただし、3バックとの相性は「?」

2025.05.15

Jリーグ3バックブーム探求#2

なぜ、Jリーグに再び3バックブームが到来しているのか?日本サッカーの戦術史も振り返りつつ、3バックの伝統があるサンフレッチェ広島から、今季より本格導入した町田ゼルビアに、大木武監督が独自性を貫くロアッソ熊本まで注目クラブを参考事例に流行の理由を探求する。

第2回は、黒田剛監督の下でJ1昇格1年目から旋風を巻き起こした町田ゼルビア。「北欧的」な合理性を突き詰めたサッカーの考察と3バック変更の「?」について検証してみたい。

[5-2-3]ブロックだとハイプレスの威力が減退?

 2024年にJ1へ昇格して町田旋風を起こした。序盤の好調を維持して3位フィニッシュ、ACLE出場権を獲得している。

 昨年は4バックが基調だった。しかし、今年は第15節まですべて3バックでプレーしている。獲得した選手の特徴に合わせてのシステム変更なのか、あるいはシステム変更を前提とした編成なのかはわからないが、後者の可能性が高い気がする。

 札幌から岡村大八を獲得したことで、ドレシェビッチ、昌子源との3バックが実現している。この3人のクオリティはJ1でもトップクラスだ。一方、昨年の主力だった選手を放出していて、右SB鈴木準弥、左SB杉岡大輝がいなくなった。ウイングも平河悠が昨年夏に移籍、藤本一輝も放出している。岡村の加入、SBとウイングの放出という編成からすると3バックありきだったように思える。

ドレシェビッチ、岡村、昌子のCB陣

 ただ、システムに変更があったものの町田のプレースタイルは変わっていない。

 攻撃ではロングボールを多用する。自陣からのショートパスを使ってのビルドアップはあまり行わず、トップのオ・セフンへのロングボールを狙う。ショートパスの組み立てをしないわけではないが、中盤を省略しての攻め込みがメインになっている。そのため1トップにはオ・セフンの他にもミッチェルデューク、桑山侃士の長身選手を擁している。ロングボールの競り落とし、あるいはセカンドボールを拾っての攻め込みが主なルート。

 2シャドーには相馬勇紀、西村拓真、ナ・サンホ、藤尾翔太。相馬はサイドに開いてドリブル突破を仕掛ける。昨年の平河、藤本の役割をシャドーのポジションと兼任しているような恰好である。西村はセカンドトップ的な振る舞い。テクニシャンのナ・サンホ、フィジカルの強さとクレバーさを併せ持つ藤尾がいて、層の厚いポジションになっている。

 昨年話題になったロングスローも健在。ロングスローワーは複数いるが、林幸多郎のスローインが特に威力がある。ロングスローのターゲットとして岡村がかなりの確率でボールに触っている。さすがに相手からも警戒されているので簡単に得点できなくなっているが、第15節(京都戦)の先制点は林のロングスロー、岡村のヘッド、望月ヘンリー海輝の押し込みという絵に描いたようなロングスローからのゴールだった。

……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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