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浦和の変化は即応性と流動性にあり!「背後へのランが少なかった」戦術用語に表れるスコルジャ監督の反省

2025.02.06

2025注目Jクラブキャンプレポート#5
浦和レッズ

新体制発表会、新チーム始動、そしてキャンプと各Jクラブが2025シーズン開幕に向けた準備を進めている。1年間を駆け抜ける体の土台、戦術の基礎を築く集中期間だが、その実態はなかなか見えてこない。そこで密着取材している番記者たちに昨季の課題を踏まえた取り組み、今季のサッカースタイルや新加入選手の現状など、注目クラブの最新情報をレポートしてもらおう。

第5回は、昨季途中にペア=マティアス・ヘグモ監督を更迭して前任のマチェイ・スコルジャ監督を呼び戻すも低迷から抜け出せず、思うように得点が奪えないまま13位と不完全燃焼でシーズンを終えていた浦和レッズ。続投で通算3年目を迎えている指揮官は、その反省を生かしながら即応性と流動性を高めてリベンジの炎を燃やしている。沖縄キャンプで目の当たりにした変化を、ジェイこと沖永雄一郎氏が伝えてくれた。

 開幕が前倒しとあって、2025シーズンの始動はどこのJクラブも早い。浦和レッズも例に漏れず、7日に行われた新加入/復帰選手会見の前日、1月6日に始動した。大原サッカー場で5日間の下準備を施したのち、チームは12日に沖縄へ移動。約3週間のキャンプを張って開幕に向けて本格的なチーム作りを行ってきた。

 プレシーズンキャンプのテーマは1つに絞れるものではないが、浦和が例年よりも重視していると感じられたのが、フィジカルコンディションについて。これまではキャンプ中のトレーニングマッチは4試合が相場だったが、今年は5試合を戦った。

 16日の初戦を皮切りに、20日、24日、28日、2月1日とすべて中3日の強行軍だ。なおかつ、完全オフ日は25日のみ。動きが軽快だったのは初戦の沖縄大学戦(45分×2本/○18-0)くらいのもので、以降の4試合はいずれも重さを感じさせた。

 そうした状態で何ができるのかも問われていたのだろう。午前・午後の2部練習もかなりの頻度で行われ、クラブW杯までに公式戦20試合をこなさなければならない過密日程への備えを進めた。

 では、今季の浦和のサッカーはどういうものか。基本的には、マチェイ・スコルジャ監督初就任時のキャンプをレポートした2023年とあまり変わらない。しかし大枠はそのままながら、日本サッカーへの造形を深めた指揮官の思考と、引き継いだ状況の違いから異なる色を見せそうな気配がある。

「それぞれのやりやすい形があれば…」意見交換を活発化

 スコルジャ監督が初めて浦和の指揮を執った第1次政権は、シーズン序盤の2023年4月末に最大目標のACL決勝が控えているという特殊な状況。そして前年にチームを率いていたのは、リカルド・ロドリゲスだった。

 チームを去った主力はキャスパー・ユンカー、江坂任といった前線の選手たち(キャンプ途中で松尾佑介が海外移籍となったことは指揮官に驚きと苦悩をもたらしただろうが……)で後方は健在ということもあり、ビルドアップなど自陣攻撃については“リカルドの遺産”を活用する形でほとんど手をつけず、守備と敵陣攻撃(主に速攻)、特にゾーンディフェンスの落とし込みに時間を割いた。

 しかし第2次政権では、昨季途中からチームを引き継いだ状態にある。再任時にJ1で降格圏がチラついていたこともあり、まずは着手したのは守備の立て直し。11試合で8失点と悪くない数字に収めたが、攻撃面に大きな課題を残してシーズンを終えていた。

 そうした事情から、今年のキャンプは2年前とは違い、どちらかというと攻撃に比重が置かれて進んでいった。ただし、キャンプ4日目の15日にはヴォイテク・マコウスキ守備担当コーチの下、ゾーンディフェンスの再履修を開始。攻守両面の深化が並行して行われた。

 スコルジャ監督の基本システム[4-2-3-1]は今季も変わらず。強いこだわりを感じさせる。しかしキャンプ序盤の練習終了後には「大枠を変えるつもりはないが、それぞれのやりやすい形があれば意見を伝えてほしい」と歩み寄る発言があった。これもマネージメントの一環かもしれない。

Photo: Yuichiro Okinaga

 こうした訓示や昨年の反省もあってか、今季の浦和はとにかく意見交換が活発だ。練習中も練習試合中でも、うまくいかなかった場面があればすぐにピッチ上で選手たちが解決を図る。これは大人しめな選手が増えた近年の浦和になかった姿勢だ。

 例えば、キャンプ最後の練習試合、名古屋グランパス戦(45分×4本/●5-6)ではこんなやり取りがあった。……

Profile

ジェイ

1980年生まれ、山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』浦和担当に。footballistaには2018年6月より不定期寄稿。心のクラブはレノファ山口、リーズ・ユナイテッド、アイルランド代表。