選手に答えを与えるのではなく、自ら答えを導き出せるようにする。東京ヴェルディの森下仁志コーチは、今季から新設されたU-21Jリーグで監督を務める中でも、その考えを大切にしている。目指すのは、選手自身が状況を見極め、判断し、プレーを選択できるようになること。もちろん、育成を掲げるからといって勝利を二の次にするわけではない。選手の成長とチームの勝利をどう両立させるのか。城福体制から相馬体制への移行期にも重要な役割を担う指導者の言葉から、その哲学と実践を紐解く。
選手の判断は「状況を見る」ことから始まる
東京Vの選手たちに練習への取り組みについて尋ねると、たびたび名前が挙がる人物が森下仁志コーチだ。ガンバ大阪時代から森下コーチの指導を受けていた福田湧矢も「ここに来たのは、(森下)仁志さんの存在が大きい」と語るほど、選手たちから厚い信頼を寄せられている。
なぜ森下コーチは、これほどまでに選手たちから慕われているのか。その理由を探ると、選手が成長するための道筋を示す指導哲学が見えてきた。
「答えを示せる選手にしていきたい」
森下コーチが選手たちに求めているのは、指導者が示した正解をなぞることではない。自分の目で状況を捉え、何をすべきかを考え、決断を下す。その積み重ねによって、選手自身がプレーの答えを導き出せるようになることだ。

サッカーは、判断の連続で成り立っている。ボールを持った選手がパスを出すのか、ドリブルで運ぶのか、シュートを狙うのか。1つの選択肢を選ぶまでには、味方と相手の位置、スペースの有無、試合の状況など、様々な情報を把握しなければならない。ボールを持っていない選手も同じだ。どこに立ち、いつ動き、どのように味方をフォローするのか。ピッチ上では、誰もが絶えず状況を判断しながらプレーしている。
森下コーチは、その判断の出発点となる「見る」という行為に着目する。
「サッカーというのは、状況を見て、判断して、決断して、実行する。その一番最初の、“状況を見る”ところで、必ず自分の感情が入ってしまう」
ミスをした直後。失点を喫した後。あるいは、思うように試合が進まない時間帯。選手の頭の中には、焦りや不安、悔しさといった感情が生まれる。そうした感情になるのは、人間である以上仕方がない。しかし、マイナスの感情にとらわれたまま状況を見れば、目の前で起きていることを正しく捉えられなくなる可能性がある。
状況を見誤れば、判断も変わる。判断が変われば、決断や実行にも影響が及ぶ。サッカーにおけるこの一連の作業はつながっており、最初の認識がずれるだけでも、プレー選択を誤る可能性がある。
だからこそ、指導者の役割は、単に気持ちの強さを求めたり、根性論で選手を奮い立たせたりすることだけではない。
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Profile
白谷 遼
2025年度まで縄手猟名義で活動。サッカー専門媒体『エル・ゴラッソ』で東京ヴェルディを担当。これまで日本代表、Jリーグ、大学・高校サッカーなど、プロアマ問わず幅広く活動している。小学校の頃に見たパク・チソン、イ・ヨンピョの活躍に感銘を受けて韓国サッカーにハマった埼玉県民。韓国サッカーに深い造詣があり、興味の守備範囲は広い。
