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現代サッカーの行方を占う定数と変数のバランス。コモのお手本のようなボール保持を分析する

2026.10.29

【特集】セリエAを革新するコモのビジョン#7

セスク・ファブレガス監督がピッチ上に植えつけるプレー哲学と、コモ湖を背景に街をプロデュースする独自のブランド戦略。2024-25シーズンのセリエA昇格からわずか2年でCLに初参戦しているコモ1907は今、欧州サッカーで最もユニークな存在だ。イタリアのプロビンチャーレだったクラブがなぜ、この短期間で異彩を放ちつつあるのか。その答えは、目の前の試合結果だけを追うのではなく、先を見据えた未来から逆算してチームを作る「ビジョン」にある。人材獲得と育成、移籍戦略、トップチームの戦術――それぞれの取り組みは別々に見えて、実は一つの思想によってつながっている。その革新のDNAを読み解く。

第7回は、今やお手本となりつつあるコモのボール保持を戦術分析。そのメカニズムを支える「いなくなる」「あらわれる」「ゲート」と、現代サッカーの行方をも占う定数と変数のバランスを、らいかーると氏が解き明かす。

 コモが注目されるようになったのは、昇格組として21年ぶりにセリエAに参戦した2024-25シーズンからではないでしょうか。日本でも試合中継が配信され、まだ背番号が79番だったニコ・パスのプレーを見て、只者ではないと感じさせられた記憶が残っています。

 ボール保持で参考例を探しているならば、パリSG、バイエルン、バルセロナなどのビッグクラブを見れば手っ取り早いことは言うまでもありません。一方で「エリート集団じゃないと無理!」「選手がいればできて当たり前だろ!」と挙がる声にも、正当性があるのではないでしょうか。

 そこでかつてスワンジーがお手本となってから十数年経った今、コモが名乗りを上げている最大の理由は昨季に初めてCL出場の切符をつかんだだけでなく、限られたリソースでビッククラブに見劣りしないサッカーの質を示しているからではないでしょうか。一時的にうまくいっても主力の引き抜きに遭って続けられないのが非ビッグクラブの常ですが、コモはニコ・パスらの引き留めに成功しているため、最終局面で質的優位がどうしても足りなくなるという永遠の課題にも、一定の答えを示しています。

 それでは、最近もCLリーグフェーズ第3節でマンチェスター・ユナイテッドに大勝したことで、ますます話題を集めているコモについて、みんなで考えていきましょう。かつてのバルセロナはボール保持だけでなく、攻守の切り替えが本質だったと言われていましたが、コモにも似たようなところはあります。ただし、すべてはボール保持を安定させられなければ始まらないので、そこを中心に追っていきます。

ビルドアップは7対6→7.5対7の世界へ

 本特集にも登場する現イタリア代表チーフアナリストのレナート・バルディは、「バイエルン時代の(ジョセップ・)グアルディオラと話をした時、 ビルドアップは7対6に収斂する、と言っていました」とインタビュー(『日本代表の大きなテーマ。モダンサッカーのビルドアップを考える(前編):「8対7の原則」と「プレッシャーライン」』)で教えてくれています。

 現在は、守備側が最終ラインで同数対決を受け入れることも躊躇わなくなったマンマークの流行を踏まえると、攻撃側から見て自陣での攻防は7対6から7対7へと発展してきました。その一方で、相手FWがGKをマークしてくる時代も、逆に運ぶドリブルをGKが行う時代もいまだに到来していないことから、GKを0.5人分と数えて実質的には7.5対7の構図となっています。

 この0.5人の数的優位を生かすコモのビルドアップは、両CBがペナルティエリア幅くらいに広がることから始まります。その間にGKを配置することで、フィールドプレーヤー顔負けの足下の技術を誇るジャン・ビュテまたはロベルト・サンチェスがエクストラCBとして活用されることが特徴です。

 両CBが開く狙いの1つは、相手のファーストラインに過負荷を与えるためでしょう。その間隔が広ければ広いほど対面選手の走らなければならない距離は増す、もしくは人数の動員に迫られます。そこにGKが加わるビルドアップ隊を1人で追いかけ回し続けることは、我らが前田大然でも難しいかもしれません。

 やがて相手はそれなりに枚数をそろえて対応することになりますが、人への意識を強めれば強めるほどに、守備側の網目は広がることになります。その選手と選手の間を「ゲート」と定義すると、この疑似3バックは相手の「ゲート」を限りなく広げることも役割の1つになっています。中盤へのパスラインを確保するためです。

……

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Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』 (小学館)。

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