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「全員で戦う」は美辞麗句に非ず。長谷部フロンターレの7連戦6勝に表れた大関友翔、山市秀翔、河原創の個性

2026.10.30

フロンターレ最前線#33

「どんな形でもタイトルを獲ることで、その時の空気感を選手に味わってほしい。次の世代にも伝えていってほしいと思っています」――過渡期を迎えながらも鬼木達前監督の下で粘り強く戦い、そのバトンを長谷部茂利監督に引き継いで再び優勝争いの常連を目指す川崎フロンターレ。その“最前線”に立つ青と黒の戦士たちの物語を、2009年から取材する番記者のいしかわごう氏が紡いでいく。

第33回は、7連戦を6勝で駆け抜けている過密日程で思い出す「ターンオーバーという言葉は僕にはない」という去年の発言。長谷部監督のチームマネージメントにも背中を押されて輝く、大関友翔、山市秀翔、河原創の個性を紹介する。

 秋が深まりを見せた10月。

 川崎フロンターレは怒涛と呼ぶにふさわしい過密日程を戦っている最中だ。

 10月7日に行われた天皇杯3回戦・テゲバジャーロ宮崎戦を皮切りに、11月1日までの26日間で公式戦8試合を消化する過密日程。内訳はJ1リーグ5試合、ルヴァンカップ2試合、そして天皇杯1試合。中2日、中3日のインターバルが容赦なく押し寄せ、カップ戦では宮崎と鳥栖の九州遠征が2試合。この週末にはJ1第13節の横浜F・マリノス戦が控えており、息つく間もなく、次のキックオフがやってくる状態である。

脇坂泰斗

 それでもチームにはポジティブな空気が流れている。

 現在(10月30日)までに消化したのは8連戦中7試合だが、戦績は6勝1敗。J1第9節・名古屋グランパス戦(1-2)で喫した黒星を除けば、それ以外は全勝という圧倒的な結果を叩き出しているからだ。

テゲバジャーロ宮崎戦:○2-0(天皇杯3回戦)

名古屋グランパス戦:●1-2(J1第9節)

ジュビロ磐田戦:○4-0(ルヴァンカップ3回戦)

セレッソ大阪戦:○4-2(J1第10節)

ヴィッセル神戸戦:○2-1(J1第11節)

ファジアーノ岡山戦:○2-1(J1第12節)

サガン鳥栖戦:○2-0(ルヴァンカップ4回戦)

 スコアで目を引くのが、得点力だろう。今シーズンの川崎Fはいまだ無得点試合はなく、ここまでの公式戦全試合でゴール中。その攻撃力は、この10月も存分に発揮されたと言っていい。敗れた名古屋戦こそ1得点にとどまったものの、勝利した6試合はすべて複数得点。現在リーグ戦8得点のマルシーニョを筆頭に、伊藤達哉、脇坂泰斗、デリキ・ラセルダと、前線4枚の得点力でねじ伏せている。

マルシーニョと伊藤達哉

過密日程という逆境を、総合力を押し上げる最高の触媒へ

 連戦中は長谷部茂利監督のチームマネージメントも光る。

 過密日程が続く中でも、特定の選手に頼るような出場時間の偏りは見られない。大胆な選手の入れ替えで出場時間をシェアし、結果も残しながらチーム力の底上げに成功しつつある。

 象徴的だったのが、ミッドウィークに開催されたルヴァンカップ3回戦のジュビロ磐田戦である。相手はJ2のチームとはいえ、直前の試合から先発メンバーを10人の入れ替え。そして若手中心のメンバーが躍動し、4-0というゴールラッシュを演じて見せた。

 10人の入れ替えは一般的には「ターンオーバー」ということになる。

 ただ長谷部監督の辞書にターンオーバーという用語はない。去年のことだが、過密日程によるメンバー選考に関する質問が出た際には「ターンオーバーという言葉は僕にはないです。常にベストメンバー」と自らの定義を明確にした上で、こんな説明をしている。

 「大事にしていることはコンディションです。コンディションが良いことと、試合に勝つために何がどう必要なのか。コーチと選手と練習を見て、状況を見て11人を選ぶつもりです。また、そこにサポートに入る、途中から入る予定の選手たちがベンチに入ります。コンディションといっても、体だけではなくて心も大事ですし、目つき、顔つきも大事ですし、周りとのつながりも大事ですし、多くのことがあると思うんですけれども、一言で言うと、勝てる確率を上げる。勝ちたい。そういう意思の強い、意思のこもった、そういう状況の選手を並べたいと、常にそういうことを考えています」

 つまり、直近の試合からスターティングイレブンがどれほど入れ替わっても、ターンオーバーではなく、それがベストメンバーなのである。そういうスタンスでチームをマネージメントしている。だから、川崎Fの根幹にある勝負への厳しさと基準は微塵も揺るがない。同時に、そのベストメンバーで結果がついてき始めたことは、指揮官の確信を強めていくことにもつながるのは間違いない。

 例えば4-0で勝利した磐田戦後の監督会見で、「若い選手がチームにもたらしてくれたものは何か」とこちらが問いかけると、普段は感情を抑え込みながら言葉を選ぶ指揮官が、この夜ばかりはやや饒舌に語ってくれた。

 「自分たちが持っている力があると証明しましたし、チームの一体感というか、ワンチームというか。チーム全体でやっていることに違いもないし、変わりもない。より高めていこうというスタンスが色濃く選手たちの自信となって出たのではないかなと思います。ミドルシュートも、セットプレーも、素晴らしい崩しも、クロスもありましたし、いろいろな形で点を取れました」

 この試合は過密日程という名の逆境を、チームの総合力を押し上げる最高の触媒へと変えてみせた瞬間だったのもしれない。翌週に迎えた難敵・ヴィッセル神戸とのJ1第11節でも先発5人を入れ替えて2-1で勝利。さらに翌週、ルヴァンカップ4回戦のサガン鳥栖戦では再びスタメンを10人入れ替えて2-0で勝利。

 10月のミッドウィークは、リーグ戦での出場時間が長くない選手たちを強く信頼して、ピッチに送り込んでいる。それで結果もついてきているのだから、チーム全体がいいサイクルに入り始めている。

 多くの選手にチャンスがめぐってくる中で、選手たちの成長も著しい。

……

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Profile

いしかわごう

北海道出身。大学卒業後、スカパー!の番組スタッフを経て、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の担当記者として活動。現在はフリーランスとして川崎フロンターレを取材し、専門誌を中心に寄稿。著書に『将棋でサッカーが面白くなる本』(朝日新聞出版)、『川崎フロンターレあるある』(TOブックス)など。将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。Twitterアカウント:@ishikawago

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