12人放出は「リセット」ではない。大分が“湧き上がるフットボール”のために選んだ改革
トリニータ流離譚 第37回
J3からJ2、そしてJ1へと昇格し、そこで課題を突きつけられ、漂泊しながら試練を克服して成長していく大分トリニータのリアルな姿を、ひぐらしひなつが綴る。第37回は、大胆な12人放出の裏側にあったクラブの決断を追う。百年構想リーグで露呈した戦術的なズレを受け、大分は「湧き上がるフットボール」を体現する新たなチーム作りへ舵を切った。その改革の狙いと、新加入・林田滉也に託された役割を考える。
「湧き上がるフットボール」のためのスクラップ&ビルド
ベルギー2部のヨング・ヘンクへの期限付き移籍からV・ファーレン長崎へと完全移籍した保田堅心も含め、大分トリニータはJ2・J3百年構想リーグ終了後に12名の戦力を放出した。
出場機会に恵まれない若手たちをレンタルで武者修行に出すケースもある一方、主力として活躍していたプレーヤーも複数、チームを離れている。百年構想リーグ16試合に出場して5得点を挙げたキム・ヒョンウが東京ヴェルディに、同17試合に出場して攻守に奮闘し2得点した𠮷田真那斗がサガン鳥栖に引き抜かれた。さらに、苦戦した百年構想リーグ後半に出場機会を増やして組織をまとめようとした伊佐耕平と野嶽惇也、2025年夏に加入してJ2残留のために力を尽くした岡本拓也と、戦術的にチームに貢献してきた経験豊富なメンバーも放出。
「僕らが試合に出るようになって内容は改善されたけど、多分それはチームがやりたいこととは違っていたんだと思う」
大卒ルーキーとして加入後以来、12年半を大分で過ごしてきた伊佐耕平が最後にそう話した通り、百年構想リーグを戦ったチームは、最後まで全員が戦術的な意識を揃えることができなかった。その要因について吉岡宗重SDは、以下のように分析する。
「最初の3試合では目指す方向性をある程度表現できたと思います。その後、1つの負けや上手くいかないことに対して少し自信をなくしたのではないかと感じました。これで本当にいいのか、もっと違うやり方があるのではないかといったふうに、チームの中で考え方のズレが出てきたのかなと」

それを踏まえ、チームの目指すスタイルをより体現できる編成へと舵を切ったのだという。
「この2年半の成績を見ると、やはり今のままでは難しい、抜本的にチーム編成をやり直さなくてはならないだろうと考えていたんです。我々の目指すスタイルに上手くアジャストできずになかなか試合に絡めずにいる選手については、彼らがマッチするチームに移籍させた方がお互いにいい結果になると考え、話し合って送り出しました」(吉岡SD)
2024年までGMとしてクラブのフィロソフィを築きながらチームの強化に努めてきた西山哲平氏の後を継いで強化部門の最高責任者に就任した吉岡SDが掲げた、これからの大分が目指すのは「湧き上がるフットボール」。90分間の多彩な試合展開の中で攻守に前への矢印を描き出すスタイルだ。現場のタクトはJ2・J3百年構想リーグを迎えるタイミングで、過去に北海道コンサドーレ札幌や横浜FCをJ1昇格へと導いた四方田修平監督に託した。
百年構想リーグで見えた「2つの課題」
そうやって段階的に大幅な改革を目指すクラブが、26-27シーズンに向けて新たに獲得した戦力は8人。うち1人は現在、国士舘大学在学中で来年1月に合流することになるアカデミーOB・後藤響だが、それ以外はそれぞれに実績を持つ中堅どころの即戦力が並んだ。

百年構想リーグを戦いながら「湧き上がるフットボール」構築を目指す中では、数々の課題が噴出した。中でも特に「ここさえ上手くいけば攻守に良好なサイクルが整うのではないか」と感じられた要素が、大きく2つある。
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Profile
ひぐらしひなつ
大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg
