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驚異のスピードと正確な左足で輝くベガルタ仙台・マテウス・モラエス。日本で切り開いてきた自分の強みを生かす道

2026.05.08

ベガルタ・ピッチサイドリポート第37回

今季はベガルタ仙台で唯一のブラジル人選手となったマテウス・モラエスが、加入3年目でようやく本領を発揮しつつある。とりわけ際立つのは圧倒的なスピード。彼がピッチを駆け上がると、スタジアムは大きなどよめきに包まれる。2026/27シーズンのJ1昇格を目指すチームにとって、欠かせないピースになった“マテちゃん”を、村林いづみが直撃する。

 村岡誠フィジカルコーチがこんなことを教えてくれた。「マテは(時速)35㎞台を出しています」。試合前日の練習メニューの一つ「ウインドスプリント」でのこと。練習で、しかも短い距離で、選手自身が持つ90%以上のスピードを出すことは極めて難しいと言われている。しかし、彼は出せる。この数値は国内外のトップレベル、原付バイクと同じくらいの速さである。 

 明治安田J2・J3百年構想リーグで3バックを採用するベガルタ仙台において、その存在感は日に日に高まっている。来日5シーズン目を迎える左利きのブラジル人DFマテウス・モラエス選手だ。どんなハイボールも跳ね返す188cmの長身。リーグ屈指のスピードとフィードの正確さを誇るモラエス選手に、今結果と共に得ている実感を伺った。

マテウス・モラエス選手(Photo: Vegalta Sendai)

日本人の精神文化、“謙虚さ”を積極的に取り入れる

――サッカーの話の前に、少しだけプライベートについて。モラエス選手のInstagramを拝見しましたが、奥様と一緒に和服を美しく着こなしていらっしゃいました。

モラエス「過去に和装で写真を撮ってもらっている人たちを見たことがあって、僕たちもいつか撮影しようと話していたんです。今回プロのカメラマンに撮影をお願いして、京都で綺麗な写真を撮ることができました」

――実際に着物を着てみていかがでしたか?

モラエス「とても美しいですよね。周りの人たちにも『すごく似合ってるからいい』と言ってもらいました。個人的にも、ものすごくかっこいい服だと思いますし、伝統のある着物を着ることができて良かったと思います」

マテウス・モラエス選手のInstagramより

――本当によく似合っています。日本の文化にも積極的に挑戦していますね。改めて来日して5年、日本での生活はいかがですか?

モラエス「最初にぶつかったのは、言葉の壁でした。始めは大きく感じましたが、今はその壁がだんだんと小さくなっています。僕だけが思っていることではないと思いますが、日本はすごく過ごしやすい国。安全ですし、いろいろなものが整っている。本当に幸せな状態で生活させてもらっています」

――すでに日本語もほとんど理解していると伺いました。

ロドリゴ・シモエス通訳「わかるね」

モラエス「うん(笑)」

――いろいろな経験をされていますが、改めてこの日本文化の良いところはどう捉えていらっしゃいますか?

モラエス「日本の文化や物ごとの考え方はとても良いです。特に、日本人の仕事に対する意気込みや真面目さ。この真面目さに比べられるものというのは、今まで世界のどこでも見たことがない。謙虚さや献身的な姿勢は、本当に素晴らしいと思いますね」

――そういうところをモラエス選手ご自身からも感じます。元々そういう性格なのか、それとも日本的な精神文化も取り入れようと思って過ごしているのでしょうか?

モラエス「僕自身、ブラジルにいた時から『頑張り屋』というタイプではありましたが、日本に来て、日本人から献身性や適応するという姿勢を吸収できたと思います。日本に来てから学び、身につけたものが大きいと思います」

Photo: Vegalta Sendai

3バックの左はもっとも力を出せるポジション。伸び伸びと輝く2026年

――そして仙台では今シーズンは3季目となります。過去2年間はけがもあったり、なかなか思うように出場機会が得られなくて苦しい時期もあったと思います。ここまでのこの過去2年間を振り返ると、ご自身どんな時間を過ごして来られましたか?

モラエス「難しい期間でしたね。膝の手術も経験しました。今まで手術するほどの大けがというのはなかったので、僕にとっては少し難しい、厳しい時間ではありました。状態が良くなった時に、またけがをしてしまって、何度か繰り返してしまった。そのことによって、ものすごく厳しい2年間ではあったと思います」

――その期間はどうやって乗り越えてきたのでしょうか?

モラエス「努力を続けてきました。今はパーソナルトレーナーをつけて、予防策やけがをしないために何が一番必要なのかという、いろんな情報をかき集めて取り組んでいるところです。このまま、けがなしでやっていきたいですね」

――今シーズン、百年構想リーグも後半戦ですが、モラエス選手は非常に良い状態でゲームができているのではないかと思います。どのような手応えがありますか?

モラエス「すごくいいですね。試合に出て私が自分のポテンシャルを出し、チームのために貢献できているという状態です。自分の力をチームのために出すことができるということはすごく幸せなことですし、今はそういう状況の中でプレーさせてもらっています。

 出る試合はもちろんそうですが、出られなかった試合でも仲間のために応援する。チームで結果を出せたらみんなと一緒に喜び合っていますし、常に『みんなで一つ』という考えです。試合に出ていても、それに満足することなく、一日一日、自分のできるベストを尽くしていきたいと思います」

Photo: Vegalta Sendai

――今季のモラエス選手は、チャンスを得た時にしっかり掴んだ印象です。そして「やっぱりマテちゃんってすごいよね」とみんなが口をそろえるような高いパフォーマンスを発揮しています。

モラエス「そういうプレーを見ていてくれて嬉しいです。ポジティブなフィードバックが返ってくるということは、自分が今までやってきたこと、今現在やっていることが正しいことなんだと自分の中で再認識することができます。そういう声は、今後さらに前へ進んでいくためにも“ガソリン”になるというか、力になる。このまま頑張っていこう、間違っていないんだなという気持ちになります」

――今シーズン採用しているシステムの中で、3バックの左は最も輝けるポジションではないかと感じます。ご自身としてはいかがですか?

……

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Profile

村林 いづみ

フリーアナウンサー、ライター。2007年よりスカパー!やDAZNでベガルタ仙台を中心に試合中継のピッチリポーターを務める。ベガルタ仙台の節目にはだいたいピッチサイドで涙ぐみ、祝杯と勝利のヒーローインタビューを何よりも楽しみに生きる。かつてスカパー!で好評を博した「ベガッ太さんとの夫婦漫才」をどこかで復活させたいと画策している。

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