長谷部茂利監督と突き進む「守備も100%やる」ドリブラー。紺野和也が明かす福岡のルヴァン杯初優勝秘話と、川崎F移籍「即決」の裏側
フロンターレ最前線#26
「どんな形でもタイトルを獲ることで、その時の空気感を選手に味わってほしい。次の世代にも伝えていってほしいと思っています」――過渡期を迎えながらも鬼木達前監督の下で粘り強く戦い、そのバトンを長谷部茂利監督に引き継いで再び優勝争いの常連を目指す川崎フロンターレ。その“最前線”に立つ青と黒の戦士たちの物語を、2009年から取材する番記者のいしかわごう氏が紡いでいく。
第26回では、加入初年度ながら全試合に出場している紺野和也のインタビューをお届け。前所属のアビスパ福岡で信頼関係を築いた長谷部監督との再会、体に染みついている「セカンドDFとして出ていく」意識、「イージーミスを嫌う」新天地でつかみたいバランス感覚の模索、161cmのドリブラーとしての生存術、戦える体を作った法政大学時代、そして個人ではルヴァン杯優勝に続くさらなるタイトル獲得への意欲を大いに語ってもらった(取材日:3月4日)。
「選手の特徴を生かしたい」“シゲさん”と築く信頼関係
――川崎フロンターレ公式サイトのアンケート「フロンターレに関するコト」の「監督ってどんな人?」という項目で、長谷部茂利監督のことを「イケオジ」と書いてましたね。アビスパ福岡で最初に会った時はどんな印象だったんですか。
「最初は『ちょっと怖いのかな、厳しい監督なのかな』と思って身構えていたんです。でも実際に接してみると全然そんなことはなくて。とにかく『頭がすごくいい方だな』というのが第一印象でした」
――今季、その長谷部監督の下で、今度は川崎でプレーすることになりました。
「また一緒にやれるのはすごいうれしかったですね。自分も信頼してますけど、シゲさんからの信頼があるからこそのオファーだったと思ったので素直にうれしかったです」
――川崎では「福岡の時以上のプレーを求めている」と言われたそうですね。
「シゲさんが『福岡時代のプレーでは物足りないから、頑張っていこうね』と言っていたと、カズノさん(中嶋円野コーチ)から冗談っぽく言われました(笑)。それはその通りだと思いますし、成長していかないとこのチームでは出続けられないと思います。本当に初日からいろんな学びがあって、その中で自分の良さも出しつつトライしているので、まだまだ成長できると思います」
――長谷部監督のアプローチや指導は福岡時代と多少なりとも違うものですか。根本の考え方はそれほど変わってないと思いますが。
「ベースは変わっていないんですけど、システムも違いますし、いる選手も違うのでアプローチの仕方は違うかなと思います」
――意図的に変えてる感じなんですか。
「そうですね。選手の特徴を生かしたい、というのがシゲさんの考えだと思うので。アビスパは守備が得意でハードワークできる選手が多く、基本に忠実にやるのが最善の策でした。全員で体を張ることで、失点数もかなり抑えられていました。フロンターレは、攻撃に特徴があって技術の高い選手が多いです。その分、イージーミスに対する要求は厳しいですし、質の面で求められる基準は全然違うなと感じています」
――福岡時代に受けた指導で、今の自分の引き出しに入れてるものはどんな部分ですか。
「攻撃面は自由にやらせてもらいましたし、アイディアを大事にしようとしてくれました。ベースの攻め方がありつつ、それプラスアルファで自分の良さを自由に出してほしいという感じでしたね。そこはすごく気持ちよくできていました。あとはミスしてもチーム全体で前向きの声が多かったので、チャレンジしやすい雰囲気があって、みんなが伸び伸びプレーしてました」
――攻撃を自由にやれる分、守備では厳しく要求されたのでは?
「守備重視のチームだったんで、すごくハードワークできるようになりました。頭を使いながら守備もできるようになったので、そこでの学びは大きな収穫でした」
福岡で体に染みついた「セカンドDFとして出ていく」意識
――当時のアビスパは守備の堅牢さが際立っていました。長谷部監督の守備の要求は、他の監督とは少し違ったのでしょうか。
「違いましたね。当時は3バックで守り方がはっきりしていたんです。対戦相手によって『今週はこう追い込んで、ここで仕留める』というプランが共有されていて、同じ方向を向いてやれていました。それがバチン!とはまる感覚が何度もあって、失点もかなり少なかったと思います。逆に得点はあまり取れなかったので、周りからは『塩試合』と言われてたかもしれないですけど、やってる自分たちはこれが俺たちのスタイルだと思ってやっていたし、自信を持ちながらやってました。特に23シーズンはルヴァンカップを優勝して、リーグ戦も一桁(7位)でとてもいいシーズンでした」
――川崎の試合を見ていても紺野選手の守備は利いていると感じます。立ち位置やパスコースの消し方、味方を見ながら出ていくタイミングなど、その辺も福岡時代に研ぎ澄ましたものですか。
「そうですね。最初はできなくて、自分が出ていって穴を開けてしまうことがあったんですけど、アドバイスをもらううちに感覚をつかめるようになりました。今ではもう体に染みついてる感じです。今年も守備面では生かせてるなとは思います」
――紺野選手の場合、サイズが大きいわけではないので、頭を使って守るじゃないですか。そのコツをつかむまではどんな感じだったんですか。
「相手がどういう立ち位置で、どういうふうに攻めたいのかを見ていますした。川崎ならばFWの選手やトップ下の選手がファーストで行くので、『じゃあ、次はどこに出るかな』とか『どこを消しながら寄せたほうがいいのか』と見極めながら、セカンドDFとして出ていくっていうのを意識してますね」
――やはりファーストDFが決まることで連動していけると。
「アビスパの時は、山岸(祐也)選手(現:名古屋グランパス)がうまかったんですよ。そこが決まって、次にシャドー(自分)がバチンと決まって、ウイングバックやボランチと連動して蹴らせて回収する。そこでショートカウンターという形が多かった。ファーストDFが大事だと思いますし、次に出ていくサイドハーフも、周りの状況や後ろの状況を確認しながら出ていくことが重要ですね」

――確かに紺野選手は、右SBの山原怜音選手を確認しながら守りますね。
「自分だけ行っても、穴を開けてしまうだけなので。連動してレオン(山原)が来れないんだったら行かないほうがいいっていう時もあったりします。そこの連動はすごく大事かなとは思います」
――ドリブルを武器に生きてきた紺野選手が、守備の面白さを知るってのはどんな感覚でしたか。
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Profile
いしかわごう
北海道出身。大学卒業後、スカパー!の番組スタッフを経て、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の担当記者として活動。現在はフリーランスとして川崎フロンターレを取材し、専門誌を中心に寄稿。著書に『将棋でサッカーが面白くなる本』(朝日新聞出版)、『川崎フロンターレあるある』(TOブックス)など。将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。Twitterアカウント:@ishikawago
