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内容濃厚な9位で終幕。「まだまだ続くチームにしたかった」田村いわきの後半戦躍進とJ1昇格への布石

2025.12.29

いわきグローイングストーリー第15回

Jリーグの新興クラブ、いわきFCの成長が目覚ましい。矜持とする“魂の息吹くフットボール”が選手やクラブを成長させ、情熱的に地域をも巻き込んでいくホットな今を、若きライター柿崎優成が体当たりで伝える。

第15回は、後半戦に躍進した2025シーズンのチームの成長、そして来季の続投が決まった田村雄三監督率いるいわきのJ1昇格への勝算を展望したい。

クラブ創設10周年の節目を飾った2025シーズン

 シーズンクラブ創設10周年の記念すべき年を迎えたいわきFCは、今季のJ2を15勝11分12敗、55得点・44失点、勝点56を記録し、9位でシーズンを終えた。

 2024シーズンと同順位でのフィニッシュとなったが、内容の濃密さは格段に異なっていた。

 開幕から9試合未勝利の苦しいスタート、エース谷村海那のシーズン途中でのJ1・横浜F・マリノス移籍、そして後半戦の大躍進。さらにはクラブ初の日本代表選手輩出など、ドラマチックな展開が続き、日曜劇場のような名残惜しい幕切れとなった。

 最終節ベガルタ仙台戦後の記者会見で、田村雄三監督は寂しげにこう語った。

 「まだまだ続くチームにしたかったのが正直な感想です。それが叶わなかったのは力がなかっただけ。次のシーズンに生かしていきたい」

田村雄三監督(Photo: ©IWAKI FC)

 いわきFCはこれまで、前年の成績を下回ったことがないという稀有な“ジンクス”を保持していた。

 第36節ブラウブリッツ秋田戦の敗戦でJ1昇格プレーオフ圏内の可能性が消滅し、残り2試合の目標を「昨年超え」に下方修正。昨年の勝点54を上回るためには、残り試合で少なくとも1勝1分か2勝が必要だった。逆転残留を狙うレノファ山口FC、昇格プレーオフ進出を争うベガルタ仙台という難敵との連戦となったが、特別な奇策に頼らず、1年間の積み上げと相手に応じた柔軟な戦いで勝点4を積み上げ、辛くも昨年超えを達成した。

 リーグ後半戦の巻き返しは圧巻だった。

 後半戦単独では11勝4分4敗、34得点・15失点、勝点37。前半戦が4勝7分8敗、21得点・29失点、勝点19(15位相当)だったことを考えれば、勝点は約2倍、得点は1.5倍以上に増加し、失点は半減。残留争いから一転、上位争いの直前まで駆け上がった。それだけに、後半戦の勢いがピークに達していた中で迎えた第28節モンテディオ山形戦(0-1敗戦)、第31節ヴァンフォーレ甲府戦(2-3敗戦)は、惜しまれる敗戦となった。

 シーズンの出発点は、何と言っても開幕9試合未勝利の泥沼だった。

 最下位から這い上がれたのは、選手・監督・コーチ陣の不屈の努力の賜物であり、目の前の1試合に勝利を集中した成果だ。当連載の第7回『「最下位のチームとは思えない」いわきが苦しみ抜いて掴んだ初勝利の舞台裏。いざ、逆襲へ』で前半戦不振の原因を分析したが、ここではシーズン開幕までの準備期に焦点を当てる。

……

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Profile

柿崎 優成

1996年11月29日生まれ。サッカーの出会いは2005年ドイツW杯最終予選ホーム北朝鮮戦。試合終了間際に得点した大黒将志に目を奪われて当時大阪在住だったことからガンバ大阪のサポーターになる。2022年からサッカー専門新聞エル・ゴラッソいわきFCの番記者になって未来の名プレーヤーの成長を見届けている。

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