クラブ史に刻まれた「日立台の大逆転劇」!柏レイソルが魂で手繰り寄せたルヴァンカップ決勝進出!
太陽黄焔章 第29回
ほとんど勝敗は決したはずだった。YBCルヴァンカップ準決勝第2戦。川崎フロンターレにアウェイで1-3と敗れていた柏レイソルは、いきなり開始4分で先制点を献上。2戦合計のスコアでも、この時点で3点差を付けられる。だが、日立台のスタンドも、ピッチも、そこにいる人は誰一人諦めていなかった。垣田裕暉が、仲間隼斗が、そして細谷真大は2度までも、ゴールネットを揺らす。Jリーグ史に残るような大逆転で引き寄せた決勝進出の熱量は、やはり鈴木潤に綴ってもらわねばなるまい。
第1戦の敗戦後に指揮官がサポーターへ送った明確なメッセージ
1−3で敗れた第1戦の試合終了直後から、大逆転に至るシナリオは始まっていた。
リカルド・ロドリゲス監督は、選手たちとともにアウェイゴール裏へ挨拶に向かうと、サポーターに向かって大きく鼓舞するアクションを見せた。
「試合はまだ半分しか終わっていない。そして第2戦はホームで、サポーターの皆さんの後押しとともに歴史に残るような逆転劇をやろうじゃないか」
指揮官は自らの振る舞いに、そんなメッセージを込めた。
サポーターも意気消沈することなく、整列する選手たちを拍手で出迎え、声を張り上げる。その激励の声は、確実に選手に届いていた。
「試合が終わった後のサポーターたちの全然諦めていない姿を見て鳥肌が立ちました。自分たちが悔しがっている場合じゃないというのは、サポーターたちの声援や顔を見て思ったので、やるしかないと思った」
敗戦の直後にもかかわらず、仲間隼斗は早くも第2戦に向けて気持ちを奮い立たせていた。
先制される最悪の立ち上がりも垣田裕暉が1点を返す!
第1戦から中3日の10月12日。柏レイソルのホーム、三協フロンテア柏スタジアムでは、選手入場の際に、スタンドを熱く煽り立てる指揮官の鼓舞する姿があった。会場のボルテージは確実に上がった。
だが柏は、最悪の滑り出しを迎えてしまう。
開始4分、川崎フロンターレの脇坂泰斗に先制点を奪われ、この失点によって合計スコアは1−4と点差は3点に開いた。
「失点をしたとしても、そこで諦めることなく逆転勝利を目指そう」
ただ、試合前にリカルド監督からそう伝えられていた選手たちは、開始早々の失点にも気持ちを切らすことなくプレーを続け、直向きに勝利を目指した。
シャドーのポジションながら、大外の立ち位置を取ることで起点を作る小泉佳穂のゲームメークを中心に、柏が徐々にペースを握り始めていく。26分には、その小泉のスルーパスに抜け出した、東洋大学在学中の山之内佑成のクロスから垣田裕暉がニアで詰めて、柏が1点を返した。これで1−1の同点となる。
この時点でトータルスコアは2−4。立ち上がりの失点を除けば、悪い内容の前半ではなかった。むしろ途中からは柏がボールを握り、決定機も何度か作り出すことはできていた。その流れを継続するという選択肢は十分にあり得たはずだった。
勝負の三枚代え!細谷真大、古賀太陽、原田亘が登場!
ここでリカルド監督が勝負に出る。「逆転勝利のためにもう少し攻撃的にいきたい」との理由から、ハーフタイムに三枚の交代カードを切った。
細谷真大、古賀太陽、原田亘の投入である。
……
Profile
鈴木 潤
2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。
