代表から遠ざかるアルゼンチン新時代の象徴、ガルナチョに寄せる期待
EL GRITO SAGRADO ~聖なる叫び~ #21
マラドーナに憧れ、ブエノスアイレスに住んで35年。現地でしか知り得ない情報を発信し続けてきたChizuru de Garciaが、ここでは極私的な視点で今伝えたい話題を深掘り。アルゼンチン、ウルグアイをはじめ南米サッカーの原始的な魅力、情熱の根源に迫る。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第21回(通算180回)は、あのスター性が本物だったことを証明してほしい……チェルシーで再スタートを切った21歳の、アルゼンチン代表における立場について。
アレハンドロ・ガルナチョがアルゼンチン代表の一員として名を連ねた最後の記録(2024年11月W杯予選)から、やがて1年が経過しようとしている。この期間は単なる空白ではなく、代表における彼の立ち位置を映し出す鏡だ。
私は、次世代のアルゼンチン代表でシンボル的存在になるガルナチョをイメージしていただけに、現状が残念でならない。彼がまだティーンエイジャーだった頃から過度な期待をかけたのは早計なことと責められるかもしれないが、代表がまもなく直面するポスト・メッシ期を見据えるにあたり、つい最近まで彼にその将来を託していたのは私だけではなかったと思う。
スペイン生まれユナイテッド育ち、今までになかったタイプの大物
ガルナチョが初めてアルゼンチン代表に招集されたのは2022年3月のこと。カタールW杯予選最後の2戦を前に、A代表のリオネル・エスカローニ監督が17〜18歳の選手7人を予備登録メンバーとして招集し、そこに“スペインで生まれ育ったマンチェスター・ユナイテッド所属のFW”という魅力的な肩書きを持つガルナチョが含まれていた。
すでに祖国スペインのユース代表として出場歴があったにもかかわらず、母親の祖国アルゼンチンの代表で挑戦する道を選択。代表のキャンプでリオネル・メッシと一緒に撮った写真をInstagramに投稿し、「夢は本当に叶う」との言葉を添えてその喜びを世界に伝えた17歳は、アルゼンチン国内でたちまち話題となり、注目を浴びた。
その彼が並外れたスター性を放ったのが、同年5月末から開催された第48回モーリス・レベロ・トーナメントだった。ハビエル・マスチェラーノ監督(当時)率いるU-20アルゼンチン代表のメンバーに選ばれ、4試合に出場して4ゴールを記録。チームは参加12カ国中5位という不本意な結果に終わったものの、大会のベストイレブンに選出された他、最優秀新星賞を受賞し、U-20フランス代表相手に決めた直接FKからのシュートは大会ベストゴールに選ばれた。アルゼンチン代表のユニフォームに初めて袖を通した舞台で、前評判通りの実力を見せつけた彼はメディアから高く評価され、ファンからも称賛を集めた。試合中、時折カメラを意識しているかのようなクールな表情を見せる余裕に、私も「今までになかったタイプの大物が出現した」と感じたものである。
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Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。
