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舩木翔、田代琉我、長谷川元希。98年組がアルビレックス新潟にもたらすポジティブ・ムーブ

2025.08.22

大白鳥のロンド 第26回

この夏の移籍期間で、アルビレックス新潟には大きな出入りがあった。7人がチームを離れ、7人がチームに加入。その中でもセレッソ大阪からやってきた舩木翔は、関西人らしい明るいキャラクターで、グループに新たな活気を与えている。さらにその舩木の影響を色濃く受けているのが、彼と同い年の田代琉我と長谷川元希。“98年組”の3人がもたらし始めている『ポジティブ・ムーブ』に、おなじみの野本桂子が迫る。

キツいインターバル走で聞こえてきたパワフルボイス

 2025年7月29日。サマーブレイクによるリーグ中断期間、アルビレックス新潟は聖籠町のアルビレッジで、今季初の2️部練習を行っていた。

 午前の部、フィールドプレーヤーは1,000m×5本のインターバル走。

 練習が始まった朝9時の時点で、気温はすでに31℃超え。久々の“素走り”に黙々と取り組む選手たち。時間とともに苦悶の表情が濃くなる中、隣のピッチから大音量のエールが飛んできた。

 「頑張れ、元希!負けるな、翔(かける)! 引っ張れ、98年組!」

 パワフルボイスの主は、GK田代琉我。

 「98年組」とは、自身と同じ、1998年生まれの長谷川元希と舩木翔である。

 GKはGKで、千本ノックのようなセービング練習を行っていたが、田代は自分の番が終わればよろけながらも立ち上がり、仲間のGKも、フィールドプレーヤーも鼓舞し、ハードなトレーニングの完遂を後押しした。

「引っ張れ98年組」と声をかける田代琉我(Photo: Keiko Nomoto)

 長谷川元希、舩木翔、田代琉我。今年で27歳になる彼ら98年組のポジティブ・ムーブが、落ち込んでいたチームのムードを明るく変えている。

明るいキャラクターでチームにパワーを与える“関西人”舩木翔

 この夏の移籍期間で、7人の選手が離れ、新たに7人の選手が新潟に加入した。中でもセレッソ大阪から加入した舩木は、関西人らしく、よくしゃべる明るいキャラクター。すぐに同い年でノリの合う長谷川、田代と意気投合。現在は妻子と愛犬を大阪に残して単身赴任中なこともあり、98年組は、ほぼ毎日食事をともにするほど仲良くなった。

 主に定食屋や焼肉屋で、サッカーについてもよく話すという。「試合の振り返りをしたりもしますし、98年組は声を出せる選手がそろっているので、『俺らがチームを盛り上げよう』っていう話は、常にしています」(田代)。

 スクールから数えれば約20年をセレッソで過ごした舩木にとっては、覚悟の移籍だった。だからこそ、新潟をJ1残留へ導く思いは強い。試合になれば戦闘モード。失点しても顔色を変えることなく立ち上がり、すぐに気持ちを切り替えられるのが舩木の良さだ。

左足からの長短のパスで攻撃スイッチを入れられる舩木翔。「翔は、ポジションをとっていると、いいタイミングでパスを入れてくれる」と長谷川元希(Photo: Keiko Nomoto)

 加入後、出場した3試合は1分2敗。ベンチ前でうなだれている選手たちに「早く行こう」と声をかけ、サポーターのもとへ歩き出す姿は頼もしい。

 「負けたら悔しいけれど、落ち込んでいても、その90分は戻ってこない。だったら、よかったところと悪かったところをしっかり話して、次の試合に勝てるようにした方がいい」

 そんな舩木の振る舞いが、繊細で落ち込みやすい長谷川にとっては救いになった。

……

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Profile

野本 桂子

新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。現在はアルビレックス新潟のオフィシャルライターとして、クラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。

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