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中国戦最大の謎は前半の右サイド偏重。左WB俵積田晃太を脇役から主役へと引き上げた日本の修正力とは?

2025.07.14

東アジアE-1サッカー選手権2025決勝大会の第2節・中国戦を2-0で制したものの、前半の攻撃は右サイドに偏っていた日本代表。給水タイムを挟んで逆サイドのウイングバックを務める俵積田晃太を脇役から主役へと引き上げていったその修正力を、『森保JAPAN戦術レポート 大国撃破へのシナリオとベスト8の壁に挑んだ記録』の著者、らいかーると氏が解説する。

3バックか?4バックか?中国の配置の仕組み

 予想通り、前節の香港戦から先発11人全員を入れ替えた日本代表。今注目を集めているパリSGのあえて敵陣のタッチラインを割って相手ボールにするキックオフでも、日本がお馴染みとする左サイドにロングボールを送り込むデザインでもなく、先行の中国は丁寧に繋ぐ意志を見せてきた。そのボール保持の配置は[4-2-3-1]であったが、眺めていくと[3-2-5]を志向しているようでもある。同じく[3-2-5]の日本は左CBに長友佑都が入っている関係でボール保持、非保持にかかわらず4バックの雰囲気を感じさせたが、プレスの基準点が定まらなかった序盤に右シャドーの佐藤龍之介の二度追いが発生。早々にゴール前まで相手の侵入を許す結果となっていた。

 日本のハイプレッシングを受けたGKイエン・ジュンリンは、SBにロングボールをつけようと画策。中国は公式戦というよりも親善試合のように、機を見てポゼッションにチャレンジする姿勢なのだろう。ボール非保持を[5-4-1]で我慢する相手を前に、日本は長友、逆サイドのCB綱島悠斗の持ち上がりをきっかけとして、左シャドーの原大智、佐藤が流れてビルドアップの出口を作る設計のようだった。ライン間に残るか、大外に出てボールを受けるかで守備者にジレンマを突きつける動きは、ケビン・デ・ブルイネの得意技でもある。

 6分には左ウイングバックのワン・シーチンを、右ウイングバックの望月ヘンリー海輝が前に出てマークすることで、佐藤が走り回る必要がなくなっていく。よって3バックは晒されやすくなったが、森保一監督はこのシビアさを求めているはずで、その期待に応えるべく綱島、中央の植田直通は1対1でも果敢に相手より先にボールに触って日本のハイプレッシングを支えていく。彼らが負ければ一気にゴールまで中国に迫られてしまうが、この戦術では受け入れなければならないリスクでもある。

 8分まで来ると、中国の配置の仕組みがわかってきた。ゴールキックでは右ウイングバックのバ・ドゥンが前線に立ち、右肩上がりで4バックに構える様子。ただし嚙み合わせがズレたとしても前線がイエン・ジュンリンまで追いかける日本のハイプレッシングを受けて繋ぐことは諦めてしまったので、相手にさらなる混乱を与えることはなかった。つまり、まとめると中国のビルドアップの開始時は4バックであり、成功すれば3バックのように変化する作戦のようだった。

輝く望月と対照的に…前半の俵積田が影を潜めた理由

 段々とボール保持の時間が長くなっていく中で、中央と右サイドにボールが循環することが多くなっていった日本。中国はサイド攻撃を警戒してかそこまで圧縮しなかったため、ダブルボランチの田中聡と宇野禅斗は内側に立つ前線3人へボールを供給する。そんな展開で迎えた11分、田中からCF細谷真大への楔が通り、個の力を見せつける反転シュートで日本が先制点を奪う。

 反撃したい中国は170cmの長友と181cmのバ・ドゥンのミスマッチ目がけて右サイドにハイボールを送り込むものの、想定内だと言わんばかりに長友に代わってエアバトルを申し込む植田。跳ね返したボールを細谷が戻すがミスになると、リカバリーで植田が相手にぶつけてしまい、そのままCFジャン・ユーニンに1対1を許してしまう大ピンチに。しかしGK早川友基は冷静に距離を詰めてシュートに反応し、数少ない見せ場で決定的な仕事をすることとなった。GK経験者ならよく知っているとだろうが、力の差があったとしても1試合に1度くらいのピンチはあるもの。そこで結果を残せるかどうかで選手の価値が決まるといっても過言ではない。

 中国はゴールキックでも繋ぐふりをしてからロングボールと、日本の前がかりな姿勢を利用しようと試みる。しかしときどきファウルになっていたものの、あらためて植田が空中戦の強さを知らしめることとなった。そんな前半の最大の謎は、日本のボール保持が妙に右サイドに偏ること。

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E-1サッカー選手権中国代表戦術日本代表

Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』 (小学館)。

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