REGULAR

ソン・フンミン&ハリー・ケイン。最強ユニットの2つの「速さ」

2020.11.25

風間八宏の真・ユニット論  第8回

「ボールをトラップしたのに“止まっていない”」「止める、外すの目をそろえる」など独自の技術論を突き詰めた指導者として、日本で唯一無二の存在となっている風間八宏。彼の技術論は個人で完結しているわけではなく、人と人の意思の疎通や駆け引きがベースになっている。個人の技術解説でもなく、チームの戦術解説でもない、数人の集団で構成されるユニットの動きは、サッカー解説の盲点になっているのではないか――名手たちの隠れた凄みを、“局面を切り取る達人”が斬る!

第8回は、現在のサッカー界で“最強”とも言えるトッテナムのソン・フンミン&ハリー・ケインのユニットに迫る。スパーズを支える2人のコンビネーションは、なぜ誰も止められないのか――?

Pick up MATCH
2020.10.18
Tottenham 3-3 West Ham|5|Premier League
8’ Harry Kane

敵を1度も止めず、狙わせない

 この一連のプレーで1回も相手は「止まっていない」んです。ボールが動き続けている中で、最終的に飛びついて股を抜かれてシュートを決められていますが、DFは常に一歩遅れてきています。

 そして、ソン・フンミンとハリー・ケインの2人はこのプレーの中でスピードを上げていません。これは結果論でもあるのですが、「動く良さ」と「動かない良さ」がある中で、この場合は後者が出ました。2人ともほぼ動いてないのですが、その一方でボールをまったく止めていません。そうなると、相手も狙いを定められない。守備側からしたら、まだ構えてもないのに、いきなり攻めてられて気づいたら点が入った、という感じですね。

 ボールだけ動かして自分たちは動かないことで、相手との距離をキープできる。だから、最後にケインが股を抜いて、シュートを打つだけの時間ができるんです。ものすごく混んでるようだけど、時間ができているんです。この速さは凄いです。

 また、ケインのスタンスの広さも1つの要因です。

……

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Profile

竹中 玲央奈

“現場主義”を貫く1989年生まれのロンドン世代。大学在学時に風間八宏率いる筑波大学に魅せられ取材活動を開始。2012年から2016年までサッカー専門誌『エル・ゴラッソ 』で湘南と川崎Fを担当し、以後は大学サッカーを中心に中学、高校、女子と幅広い現場に足を運ぶ。㈱Link Sports スポーツデジタルマーケティング部部長。複数の自社メディアや外部スポーツコンテンツ・広告の制作にも携わる。愛するクラブはヴェルダー・ブレーメン。

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