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“優等生”ウルグアイで発生した新型コロナ集団感染にショック広がる

2020.11.21

 11月に行われたW杯南米予選第3節及び第4節のために合流したウルグアイ代表チームで、新型コロナウイルスの集団感染が起きてしまった。

 11月20日現在で感染が確認されたのは、選手10名、スタッフ6名の計16名。「コロナ対策の優等生」と評価され、中南米においてEU圏への入国が許可されている唯一の国ウルグアイで発生した今回の出来事は人々に動揺を与え、波紋を呼んでいる。

スアレス、トレイラ、ゴディンも陽性

 チーム内での最初の感染者が確認されたのは、アウェイで開催された第3節コロンビア戦の翌日。11月14日朝、コロンビアから帰国した直後に行われたPCR検査でマティアス・ビーニャ(パルメイラス)から陽性反応が検出された。

 結果が判明したのは夜だったため、この日の午後はメンバー全員が通常通りトレーニング。陽性検出の連絡を受けた後、ビーニャはチームの合宿施設を離れて隔離状態に入った。

 翌15日は午前中にトレーニングが行われ、16日の朝、再度PCR検査を実施。その結果、ルイス・スアレス(アトレティコ・マドリー)とロドリゴ・ムニョス(セロ・ポルテーニョ)、広報担当マティアス・ファラルが陽性であることがわかり、スアレスとムニョスは翌日の第4節ブラジル戦に出場できないこととなった。

 ブラジル戦の翌日には、前日の検査結果からアレクシス・ロリン(レンティスタス)とディエゴ・ロッシ(ロサンゼルスFC)、ウルグアイ代表に長年にわたって従事するアレハンドロ・パン医師、フィジカルコーチのホルヘ・レイ、理学療法士、トレーナー、メディア担当の7名が陽性だったことが判明。

 さらに選手たちがそれぞれの所属先に戻ってから検査を受けた後も次々に陽性結果の報告が舞い込んでくることとなり、18日にはルーカス・トレイラ(Aマドリー)、19日にはダルウィン・ヌニェス(ベンフィカ)、ブライアン・ロドリゲス(ロサンゼルスFC)、ガブリエル・ネベス(ナシオナル)、20日にはディエゴ・ゴディン(カリアリ)の感染が発覚した。

アサード&マテ茶で感染拡大か

 ここで物議を醸したのが、15日に選手たちがそれぞれのSNSアカウントに投稿した映像と写真である。エディンソン・カバーニ(マンチェスター・ユナイテッド)が公開した動画とトレイラが投稿した写真に、マテ茶を飲みながらアサード(南米式バーベキュー)を囲み、マスクなしで集う選手たちが写されていたからだ。

マテ茶を飲みながらアサードの火を囲むウルグアイ代表の選手たち

 また、チームの公式アカウントに投稿された写真も問題視されることとなった。その写真からは、ビーニャがブラジルからチームに合流した翌日、狭いジムの中でマスクを着用していないフジカルコーチのレイと至近距離でトレーニングを行っている様子がわかる。

ウルグアイサッカー協会が公開した画像では、ビーニャ(右)とフィジカルコーチが
ノーマスク・至近距離でトレーニングをしている様子がわかる(Photo: AUF)

 レイはコロンビア戦の後に発熱し、陽性と判明。ビーニャが所属するパルメイラスでは17日に集団感染が起きており、ウルグアイの『エル・オブセルバドール』紙に掲載された関連記事では、ビーニャが0号患者(集団内の最初の感染者)であった可能性が高いとの見方が示されているが、専門的にはまだ検証されていない。

 3月のパンデミック宣言以後、国内の感染拡大抑制に成功して高い評価を受けていたウルグアイだけに、世界的に注目を集める代表チームの中で集団感染が起きてしまったことについては、同国の公衆衛生省ダニエル・サリナス大臣も「非常に残念」と遺憾の意を表明。

 チームメイトの間でアサードとマテ茶を楽しんでいた様子から「みんなで一緒に火を囲みながらの強い仲間意識が、ルールを守らない方向へ導いてしまったのだろう」とやや良心的なコメントをしているものの、チーム内で16人もの陽性が確認されたのは、感染防止対策のガイドラインが守られていなかった証拠だ。

 サリナス大臣はウルグアイサッカー協会を呼び出し、代表チームの合宿所での状況について詳しい事情聴取を実施。その結果、 64万5000ペソ(約156万円)の罰金を課すこととした 。


Photos: AUF, Getty Images

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Profile

Chizuru de Garcia

1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。

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