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リーグ1のよくある育成型クラブ、アンジェはなぜ躍進した?

2020.01.29

 クラブ創立100周年を祝うかのごとく、一時はパリSGに次ぐ2位につけていたアンジェ。しかし彼らの好調は奇跡ではない。2011年にサイード・シャバンがオーナーになって以来のチーム運営の成果だ。その時にユースのコーチから昇格させたステファン・ムラン監督は、今季で9シーズン目と欧州5大リーグで最長の在任期間を誇る。

 彼らの年間予算はリーグ17番目と下から数えた方が早いものの、財政状況はいたって良好。ゼネラルマネジャー(GM)のオリビエ・ピキュウがリーグ2(2部)などを中心に優秀な若手を発掘し、上手に育てて羽ばたかせている。昨夏リールからアーセナルに8000万ユーロで移籍したニコラ・ぺぺも、もとはアンジェの出身だ。今回の移籍で彼らも1200万ユーロを得た。

 この仕組みだけなら、よくある「育成型クラブ」だが、アンジェで特筆すべきは発掘した原石の育て方がうまいところにある。ムラン監督はそれぞれの選手について、どこをどう伸ばしてやれるかを的確に判断する才に長けているという。それをフィジカル担当者がしっかりと日々のトレーニングに落とし込む。その担当者ブノワ・ピキュウはGMの実弟であり、オーナー以下、フロントが一枚岩になっていることも大きな要素だ。

 効果的なフィジカルトレーニングの成果は、昨季のアンジェがシーズンを通してリーグナンバーワンとなる走行距離(4179.4km)を記録したことにも表れている。得点&アシスト上位20人を見ても、アンジェからランクインしている選手はゼロ。誰か傑出した点取り屋が現れて、アンジェは急浮上したわけではない。新会長の下、長期的な視点で優良運営をしてきた賜物なのだ。


Photo: Icon Sport via Getty Images

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アンジェステファン・ムランフットバリスタ育成

Profile

小川 由紀子

1992年より欧州在住。96年から英国でサッカー取材を始め、F1、自転車、バスケなど他競技にも手を染める。99年以来パリに住まうが実は南米贔屓で、リーグ1のラテンアメリカ化を密かに歓迎しつつ、ブラジル音楽とカポエイラのレッスンにまい進中。