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大本命リバプールか、それとも“連覇”を止める強者が現れるか FCWC制覇を狙う王者たち

2019.12.11

FIFA Club World Cup QATAR 2019 presented by Alibaba Cloud

クラブ世界一を決めるFIFAクラブワールドカップ(FCWC)の季節が今年もやってきた。開催地は昨年までのUAEから同じ中東のカタールへ。大本命であるリバプールの戴冠か、それとも欧州代表の“7連覇”を阻止するクラブが現れるのか。出場する7チームを紹介しよう。

ますます勢いが止まらない欧州王者の最大の敵は「己自身」

欧州王者|イングランド
LIVERPOOL
リバプール
14年ぶり2回目
監督 ユルゲン・クロップ(52歳/ドイツ)

 トッテナムとの同国対決を制し04-05以来となる欧州制覇を遂げたリバプール。その勢いはこの19-20シーズンに入り、ますます加速している。

 今季公式戦での敗戦はCLのGS第1節ナポリ戦のみ。開幕から16戦無敗(15勝1分)を継続中のプレミアリーグでは、連覇中の王者マンチェスター・シティとの直接対決にも勝利(第12節/3-1)し首位を快走。CLでもGS突破を決め、カラバオカップでも準々決勝まで勝ち上がっている。

 彼らの強さについてはすでにいろいろなところで分析されているが、凄さを一言で言い表すなら「わかっていても止められない」ところだろう。メインキャストの顔ぶれや大枠の戦い方は昨季からほぼ変わっていない。それでも、相手の対策をもろともせずゴールをこじ開けてみせる。それこそがパフォーマンスの再現性に繋がっている。

 そんな彼らにとって、最大の敵は己自身になるだろう。前述のカラバオカップの日程変更が承認されなかったために、2チーム編成で両大会を戦うという異例の対応を強いられることに。主力組はFCWCに注力することになるが、長距離移動や環境の変化もある中でどこまでパフォーマンスを落とすことなくプレーできるか。主力とともに帯同するハーベイ・エリオットら若手の活躍にも期待したいところだ。

ブラジルが忘れかけていた超攻撃的スタイルで狙うは「38年前の再現」

南米王者|ブラジル
FLAMENGO
フラメンゴ

初出場
監督 ジョルジュ・ジェズス(65歳/ポルトガル)

文 沢田啓明

 超攻撃的スタイルで38年ぶりに南米王者となり、国内リーグも圧倒的な強さで制覇した。

 アンカーを置く[4-1-3-2]のフォーメーションで、序盤からGKとCBを除く全選手が激しく動いてスペースを作り、優れた技術と高度な連係で決定機を作る。ボールを失っても、すぐに取り戻して攻め直す。リードを奪っても手を緩めず、情け容赦なく攻め続ける。

 守備の中心は、クレバーで「チアゴ・シウバ2世」と呼ばれるロドリゴ・カイオと屈強なアンカーのウィリアン・アラン。2列目中央で相手ボールを奪い、両サイドにパスを散らすジェルソンもキーマンの一人。攻撃では、ブルーノ・エンリケが超高速ドリブルで左サイドを切り裂き、CFガビゴール(コパ・リベルタドーレスと国内リーグのダブル得点王)が左足から強烈なシュートを叩き込む。カイオ、エンリケ、ガビゴールらは現役ブラジル代表だ。

 チームを率いるのは、ベンフィカなどで実績を残した老練なポルトガル人指揮官ジョルジュ・ジェズス。近年、ブラジルのクラブが忘れかけていた攻撃的スタイルを復活させ、リオでは文字通り神様扱いされている(「ジェズス」はポルトガル語で「イエス・キリスト」を意味する)。ファンは、1981年にジーコが率いたチームがリバプールを倒してクラブ世界一となった偉業の再現を熱望している。

 注目点は、南米を席巻した攻撃力が世界のトップクラブにどこまで通用するのか、に尽きる。

アジア制覇の陣容に+α。決勝進出に足るポテンシャル秘める

アジア王者|サウジアラビア
AL-HILAL
アルヒラル
初出場
監督 ラズバン・ルチェスク(50歳/ルーマニア)

文 河治良幸

 ACLのファイナルで終始、浦和レッズから主導権を奪って合計スコア3-0でアジア王者に輝いた。西アジアのクラブとしては2011年のアルサッド以来、8年ぶりにアジア王者としてのFCWC参戦となる。

 特徴は高い位置からボールを奪いうディフェンスと、ペルー代表の技巧派MFカリージョを起点とした迫力ある仕掛けだ。前線には元イタリア代表ジョビンコ、元フランス代表ゴミスと個の力では欧州でもトップレベルのタレントがそろい、積極的にゴールを狙う。また、ACLでは外国人枠の関係で起用できなかったブラジル人の大型MFカルロス・エドゥアルドもエントリーできるため、ルチェスク監督がどういう布陣でまずアフリカ王者エスペランスとの準々決勝に臨むか注目される。

 最大のキーマンはカリージョだ。ボールタッチが独特でポジショニングも巧妙。日本代表DF橋岡大樹など浦和レッズの選手も、対戦して最も驚いた選手として一番に彼の名前を挙げた。またキック精度の高いボランチのアル・ファラジュ、俊足を誇る右SBのアル・ブレイクなどサウジアラビア代表の主力クラスが良質な外国人選手の周囲を固め、元FC東京のチャン・ヒョンスもライン統率と球際の強さでチームを支えている。

 高い位置でゲームを進めるのが基本だが、押し込まれても一発のカウンターで打開できるのは世界と戦う上での強み。初戦のアフリカ王者に十分対抗できる組織力、タレント力を備えるが、目標はその先。南米王者のフラメンゴを破って決勝にたどり着くポテンシャルは十分にある。

厚みのある前線が武器。勇猛果敢なメキシコの猛者

北中米カリブ王者|メキシコ
MONTERREY
モンテレイ

6年ぶり4回目
監督 アントニオ・モハメド(49歳/アルゼンチン)

文 池田敏明

 2011年から3大会連続でクラブW杯に出場し、2012年大会では3位に入賞したモンテレイ。今回が6年ぶり4度目の出場となる。19-20シーズンの前期リーグでは1試合平均3万7000人以上を集客するなど、地元モンテレイの街では屈指の人気を誇るクラブだ。

 2019年のCONCACAFチャンピオンズリーグでは、準決勝でスポーティング・カンザスシティを2戦合計10-2で下すなど危なげなく勝ち進み、決勝では同じ街のライバルであるティグレスとの激闘を2戦合計2-1で制して優勝を飾った。当時チームを率いていたディエゴ・アロンソ監督は国内リーグでの成績不振によって解任されたが、アントニオ・モハメド監督の下で復調し、大会後には帰国してリギージャ(プレーオフ)の決勝を戦うことになっている。

 基本的な布陣は[4-4-2]で、ボールを保持しながら人数をかけた多彩な攻めを見せる。フィニッシュシーンではゴール前に多数の選手が進入するなど、果敢な姿勢が注目ポイントの1つだ。現役メキシコ代表のロドルフォ・ピサロやヘスス・ガジャルド、元コロンビア代表ドルラン・パボンらに加え、7月にはオランダ代表歴を持つビンセント・ヤンセンも加入。前線の層はさらに厚みを増している。

2年連続参戦も、顔ぶれ一変で同じチームにあらず

アフリカ王者|チュニジア
ESPÉRANCE
エスペランス

2年連続3回目
監督 モイン・シャーバニ(38歳/チュニジア)

文 籠 信明(Qoly)

 2年連続でFCWC出場に成功したチュニジアの名門エスペランス。ウィダード・カサブランカ(モロッコ)と対戦したアフリカCLのファイナルではVARの故障で試合が中断するというトラブルに見舞われたものの、3カ月におよぶ裁判の末に勝利を勝ち獲った。

 監督は前回大会で指揮したシャーバニ氏が留任しているが、メンバーはかなり入れ替わりがあった。特に前線の変化は大きく、リビア代表FWハムドゥ・エルフーニ、コートジボワール代表FWイブラヒム・ワタラの2人が加入したことで、よりドリブル中心の攻撃が増加している印象だ。もともとエースであったヤシーヌ・ヘニシもまだ健在であり選択肢が広がっている。

 前回大会にも出場したチュニジア代表MFアニス・バドリが攻撃を司る存在であるが、エスペランスが上を目指すためには上述のワタラがポイントになるだろう。得点力が高いとは言いがたいものの、そのトリッキーなドリブルと身体能力は対戦相手に脅威を与えられる。

 もともと定評がある守備力は夏の補強でさらにレベルアップし、スピードある攻めも健在。あとは新しい攻撃陣の個人能力がどこまでFCWCの舞台で通用するかに懸かってくるだろう。

未知の魅力たっぷり。初見参ニューカレドニアからの刺客

オセアニア王者|ニューカレドニア
HIENGHÈNE
ヤンゲン

初出場
監督 フェリックス・タガワ(43歳/タヒチ)

 ニュージーランド勢の1強状態となっているオセアニアで、同国勢以外が代表となるのは2010年のへカリ・ユナイテッド(パプアニューギニア)以来2度目。当然ながらニューカレドニア勢としてFCWC初見参となる。

 OFCチャンピオンズリーグでは、準決勝でニュージーランドのチーム・ウェリントンを2-0で撃破。決勝では、逆のブロックでオセアニア最強のオークランド・シティ相手に大金星を挙げ勝ち上がってきたマゼンタとの同国対決を1-0で制し、悲願のオセアニア制覇を成し遂げた。

 ニュージーランドのクラブへの所属歴がある守備の要カヤラを除けば国外でのプレー経験すらない選手が大半というチームの正体は、ベールに包まれている部分が多い。

 こうした未知の魅力にあふれたチームに出会えるのも、FCWCの見どころの一つ。どんなチームなのか、ぜひ中継を見てその目で確かめてみてほしい。

攻撃のクオリティはアジア王者以上。侮るなかれ シャビ監督率いる開催国の雄

開催国王者|カタール
AL-SADD
アルサッド

8年ぶり2回目
監督 シャビ・エルナンデス(39歳/スペイン)

文 河治良幸

 元スペイン代表のシャビ監督が率い、開催国カタールの王者としてFCWCに臨むアルサッド。ACLでは準決勝まで進んだが、ホームの第1レグでアブドゥルカリーム・ハサンが退場するアクシデントに見舞われ4-1で敗れてしまう。それでもアウェイの第2レグでは2-4と勝利。合計スコア5-6でファイナルを逃したが、浦和レッズを破ってアジア王者になるアルヒラルを攻撃のクオリティでは上回っていた印象だ。

 注目選手はシャビの盟友とも言える元スペイン代表MFのガビだ。アトレティコ・マドリーで長く主将を務めた36歳が中盤から攻撃のダイナミズムを生み出す。そこから崩しのアクセントを付け、フィニッシュにも絡むのが韓国代表のナム・テヒ。2019年まで中島翔哉も在籍したアル・ドゥハイルで7年半プレーしたが、そこからライバルクラブのアルサッドに移籍する異色のキャリアを歩んでいる。そのナム・テヒと前線で名コンビを組むアル・ハイドゥースは今年のアジアカップでカタールの優勝に大きく貢献しており、22年のカタールW杯でも中心的な存在となり得る。ポルトガル生まれのミゲル、174cmながら天才的な攻守のセンスを持つサルマンの両SB、CBから驚異的なオーバーラップを見せるフーヒーもカタール代表の主力選手である。

 もともとの本職はボランチながらシャビ監督にさばけるCBとして重宝される元ヴィッセル神戸のチョン・ウヨンなど、中東屈指のタレント集団がシャビ直伝のパスワークを引っさげて世界に挑む。

<大会・放送スケジュール>

詳しい放送スケジュール等はこちら
http://www.ntv.co.jp/fcwc/

Huluでも全試合の国際映像をリアルタイムで配信!!
https://news.hulu.jp/programguide-cwc2019/


Photo: Getty Images, Takahiro Fujii, AFLO, FIFA via Getty Images

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