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RBグループを飛び出した辣腕マルコ・ローゼのボルシアMG改革

2019.10.08

ボルシアMGのマルコ・ローゼ監督

昨シーズンの5位フィニッシュは、決して悪い結果ではなかった。それでもボルシアMGがシーズン終了を待たずして指揮官交代を発表したのは、引く手あまたのこの男を一刻も早く確保するため。マルコ・ローゼの手腕を、見逃してはならない。

 2014-15のフースバルレーラー(ドイツ版S級ライセンス)講習を修了した24人の指導者の中で、出世頭と言えるのはブレーメンのフロリアン・コーフェルトだろう。この戦術家に比肩し得る同期が一人だけ存在する。現役時代のネームバリューなら上のトルステン・フリンクスやバイッド・ハシェミアンではない。ボルシアMGの新監督に就任したローゼだ。ザルツブルクU-19を率いた2016-17にUEFAユースリーグ優勝、同クラブのトップチームを率いた直近2シーズンに国内リーグ連覇、ELベスト4進出などの実績を残し、母国の名門で指揮を執るチャンスをつかみ取った。

 この43歳のプロフィールはファンの期待をおのずと膨らませる。現役時代はユルゲン・クロップ率いるマインツでプレー。指導者転身後はトーマス・トゥヘルの下でコーチ経験を積んだ。そして2013年夏、当時RBライプツィヒとザルツブルクのSDを兼任していたラルフ・ラングニックに誘われ、隣国オーストリアに渡った経歴を持つ。その3人の名将がいずれもローゼの資質を絶賛。ボルシアMGのレジェンドで、辛口解説者で知られるローター・マテウスもこう称している。

 「ローゼのサッカーは攻撃的で、魅力的だよ。素晴らしいゲーゲンプレスを武器に、ザルツブルクで成功を収めたんだ」

 この言葉の中に聞き流せないキーワードがある。ゲーゲンプレスだ。昨シーズンまでのボルシアMGはディーター・ヘッキング前監督の志向から、この守備戦術を軸に据えていなかった。ローゼがザルツブルク時代と同様のスタイルを築くには、こと守備に関しては種を撒く作業から始めなければならない。すぐに芽が出るかどうか。ともに走力に優れるFWで、前線から激しくボールを追える新戦力のブレール・エムボロマルクス・テュラムが鍵を握りそうだ。

 攻撃サッカーの理念を浸透させていく中で、ローゼが絶対に避けられないチームの課題がある。2018-19にリーグ最低を記録したスプリントや競り合いの勝利数の改善だ。モダンフットボールにおいて、「走れない、闘えない」集団が白星を積み重ねるのは難しい。実際、昨季のボルシアMGはRBライプツィヒやボルフスブルク、ヘルタ・ベルリン、フライブルクなどインテンシティの高さが特徴のチームに大苦戦。この4チームとの対戦成績は2分6敗で、一度も勝利を挙げられなかった。

 マックス・エバールSDが功労者のヘッキングに限界を感じたのも、モダンフットボールの潮流から取り残されたチームが、後半戦に大失速したからだろう。そう見なす現地メディアも少なくない。抜本的な改革が求められるローゼのお手並み拝見だ。

第7節を終えて5勝1分1敗で首位と上々の滑り出し。ただ、この代表ウィーク明けから次の代表ウィークまでにドルトムント→ローマ(EL)→フランクフルト→ドルトムント(DFBポカール)→レバークーゼン→ローマ(EL)→ブレーメンという7連戦が待ち受ける。ここをどう乗り切るか、ローゼの手腕の見せどころとなりそうだ


Photos: Bongarts/Getty Images

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Profile

遠藤 孝輔

1984年3月17日、東京都生まれ。2005年より海外サッカー専門誌の編集者を務め、14年ブラジルW杯後からフリーランスとして活動を開始。ドイツを中心に海外サッカー事情に明るく、『footballista』をはじめ『ブンデスリーガ公式サイト』『ワールドサッカーダイジェスト』など各種媒体に寄稿している。過去には『DAZN』や『ニコニコ生放送』のブンデスリーガ配信で解説者も務めた。