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モンテッラはなぜ失敗したのか? 指揮官が犯した4つの過ち

2018.02.07

イタリア長文分析メディア『ウルティモ・ウオモ』が分析


イタリアのWEBマガジン『ウルティモ・ウオモ』が、「ミランの指揮官(モンテッラ)に課された使命は困難なものだったが、過ちも多過ぎた。彼の責任を問う4つの事例」というテーマでモンテッラの“罪”を分析。本来味方であるはずのフロントにハシゴを外されたピッチ外の不運がクローズアップされてきたが、ピッチ内にも問題は潜んでいた。

 第14節にトリノと0-0で引き分け、ホームで4試合連続無得点という結果に終わってもなお、ビンチェンツォ・モンテッラは、遅かれ早かれ物事は正しい方向に進み始める、という信憑にしがみついていた。

 「今日は非常にいいサッカーをした。たくさんのチャンスを作ったけれど、落ち着きを欠いていたり、最後のプレー選択をミスったりして決め切れなかった。チームは連係が取れていたしコンスタントにプレーしていた。必要な時にはペースアップもできた。攻守両局面ともに目に見えて向上している。この調子で成長を続ければ先行するライバルを捉えることもまったく不可能ではない」

 モンテッラが主張するシナリオは、しかしクラブやサポーターの見方とはあまりに乖離(かいり)してしまっていた。夏に近年最高の年間チケット売上を記録したサポーターの熱狂は急速に冷め、トリノ戦の終わりにはチームにブーイングの口笛を浴びせるところまで冷え込んだ。モンテッラの解任とガットゥーゾの抜擢は、このネガティブな状況をあらためて確認する役割を果たしたに過ぎない。もう何週間も前から、監督とクラブ首脳の間にできた溝は広がる一方だったからだ。AEKアテネ戦の後、モンテッラは皮肉交じりにこう自嘲したものだった。

 「少し前から自分の葬式を眺めているような気分だ。決して悪いことじゃない。いろいろなことを教えてくれるから」

 ネガティブな結果にもかかわらず、モンテッラは最後まで自らの仕事を擁護してきた。それはそれで理解できることだ。かなり以前からハシゴを外されたという感触を持っていたようだが(トリノ戦の直前、ミラベッリSDは「もう間違いを犯す余裕はない。ミランは参加するためではなく勝つために戦っているのだから」と語った)、外向きにはそれを隠そうと試みてきた。あるいは、ここ1、2カ月の思わしくないパフォーマンスにもかかわらず、彼は本当に状況を楽観していたのかもしれない。第14節の時点で失点は昨シーズンと同じだったが、得点は6点少なかった。1年前の同じ時期、首位との勝ち点差はわずか4ポイントだったが、今シーズンはナポリに18ポイントもの後れを取り、6位サンプドリア(消化が1試合少ない)との差も6ポイントまで開いていた。

 クラブ史上移籍市場に最も多くの資金を投下したという事実は、内容と結果に対する評価に大きなバイアスをかける側面を持っていることは否めない。だとしてもモンテッラの仕事が、結果はもちろんシーズンのこの時期までくれば当然求められる戦術的な完成度という観点から見ても、巨額の投資がもたらした期待に大きく及ばなかったことに違いはない。

 以下、モンテッラ解任に至るまでの道程を、4つのポイントに整理しようと試みた。

1.ディフェンスを安定させることができなかった
1.Non è riuscito a dare solidità alla difesa del Milan

 ミランにおけるモンテッラの仕事は、即時奪回を目指すアグレッシブなハイプレス戦術と、自陣でのポジショナルなブロック守備に向いた特徴を持つDF陣との折り合いをいかにしてつけるか、その模索に終始した感がある。昨シーズンは、アグレッシブなハイプレス戦術を段階的に放棄し、自陣に引いて中央を固めることでスペースをコントロールするやり方にシフトすることを強いられた。それに対して今シーズンは、DF陣の補強により最終ラインからのビルドアップとボール支配の質向上が(理屈の上では)保証されたことを受けて、インテンシティを高めプレッシングの開始点も高く設定するアグレッシブな守備戦術への回帰を試みた。

 しかし、第3節ラツィオ戦での完敗(4-1)は、このタイプの守備戦術を遂行する上での困難を露にした。ミランはとりわけネガティブトランジションにおいて、高い重心のツケを支払う結果となり、それ以来モンテッラは、システムを3バックに変更しその[3-5-2]に向いたポジショナルなブロック守備を主体とする、より慎重な振る舞いへと移行した。ボヌッチを獲得した時点から運命づけられているように見えた3バックへの移行は、しかしすべての問題を解決するには不十分だった。ミランは2ライン間、アンカーの両脇と背後のスペースをあまりにも簡単に相手に使われ、実質5バックへの移行にもかかわらず裏のスペースを効果的にカバーすることも(第7節ローマ戦が典型)、ペナルティエリアをしっかり守ることも(こちらは第8節のミラノダービー)ままならなかった。

 このところモンテッラは、ビルドアップ時には3バック、守備の局面ではローテーションにより4バックとなって[4-4-2]の陣形を作る流動的なシステムを導入していた。スペースのより効果的なカバーと、[4-4-2]の布陣によってより容易になったインテンシティが高いハイプレスを両立させようとする、最後の試みだった。しかしそれでも、求めたバランスを見出すことはできなかった。ユベントスはディバラが2ライン間で余裕を持ってパスを受ける状況を作るために、前に出るか、止まって陣形を維持するか、という判断の迷いを利用した。一方ナポリは最終ラインの背後を突くことで、裏のスペースマネージメントという弱点をあらためて浮き彫りにすることを選んだ。

ナポリは、2ライン間にパスを引き出したメルテンスがそこから素早く裏のスペースを狙うことで、ミラン守備陣が抱える限界を突いて先制ゴールを奪った

 セリエAでミランよりも被シュート数が少ないのはユベントスとナポリだけだ。にもかかわらずモンテッラのチームはここまで昨シーズンと同じ18失点を喫していた。1試合平均被シュートが4本減っているにもかかわらずだ。10月初めの国際Aマッチウィークによる中断時点で、ミランは自陣の前半分で許したパス本数がナポリに次いで少なかったが、被シュートの61%をペナルティエリア内から打たれていた。これはエラス・ベローナに次いで悪い数字だ。敵のボール支配率と決定機の数を削ったにもかかわらず、ここまで見てきた弱点を克服できないがゆえに、許したシュートの危険度はそれに見合うほど下がらず、十分なディフェンスの安定度を確保することができなかった。

2.得点の形を見出せなかった
2.Non ha trovato il modo di far segnare l’attacco

 モンテッラが解決できなかった最も大きな問題は、攻撃における決定力の低さだ。こちらは守備の局面における弱点とは異なり、データ上にもはっきりと表れていた。ミランの得点は昨シーズンと比べて6少ない。より長くボールを保持し、多くのシュートを放っているにもかかわらずだ。しかしそのシュートの多くはエリア外から打たれている。最後の16mより外からのシュート数はリーグ1位だが、エリア内からのシュート数はカリアリ、キエーボよりも少ないのだ。ナポリ戦の前半、モンテッラのチームは敵エリア内で一度もボールに触ることができなかった。これは他にはベネベントがナポリ戦、ユベントス戦で実現しただけの「記録」である。

Optaのツイートから:ゼロ=ミランは今シーズンのセリエAで前半一度も敵エリア内でボールに触れなかった2番目のチームだ。以前にこれを成し遂げたのはナポリ戦とユベントス戦のベネベントだけだった

 システム変更もこの状況を改善できなかった。攻撃の局面におけるプレー原則は、スタート時点での布陣にかかわらず一定だった。敵最終ライン手前で5レーンすべてを埋め、自陣でポゼッションを確立した後、そこに敵中盤ラインを破る縦パス、あるいはサイドチェンジ(とりわけリカルド・ロドリゲスから右サイドへの)によってボールを送り込むというのがそれだ。

 前線に効果的な形でボールを送り込むメカニズムを確立できず、さらに攻撃のリズムとタイミングをコントロールできるMFも擁していないがゆえに、ミランはポジショナルな優位性を作り出す可能性を高めることができず、攻撃の危険性はもっぱら敵中盤ラインの背後でパスを受けたプレーヤーの個人能力に依存するという結果になった。2ライン間にボールを運んだ時点で、ミランの攻撃はサイドでも中央でも裏のスペースを脅かす奥行きを欠いており、個人能力に頼ったプレーによってしか優位性を作り出す余地が残されていなかった。

 とりわけそれを担ったのがスソだったが、逆に言えばそれ以外に敵の守備網を揺さぶり困難に陥れる術を持たなかったということだ。攻撃に関するすべてのデータ項目において、スソは際立っていた。得点(5)、アシスト(3)に加えて、シュート数、作り出した決定機の数もチームトップ。ドリブル成功数でもフランク・ケシエに次ぐ2位だ。

 CFの新戦力(カリニッチ、アンドレ・シルバ、クトローネ)が直面した困難は、ミランの攻撃が抱える問題点を反映している。3人は合わせてもわずか5得点しか挙げていない。部分的には彼ら自身の責任であるにしても、それ以上に大きいのは質の高い決定機を彼らにもたらすことができなかったミランの攻撃そのものにある。

3.混乱をもたらした戦術的柔軟性
3.La duttilità tattica è diventata confusion

 たび重なるシステム変更と多くのプレーヤーを巻き込んだ戦術的な実験は、時が経つにつれて、モンテッラは困難を解決する術を見出せずにいるという印象を強める結果になった。何度作品に手を入れても思い通りの形を作り出すことができない彫刻家のようなものだ。モンテッラが強みにしたいと考えていた戦術的柔軟性は、むしろチームを混乱へと導くことになった。

 モンテッラは、昨シーズン基本としてきた[4-3-3]に継続性を与える決断を下して開幕を迎えた。しかしラツィオに完敗した後、夏にボヌッチを獲得した時から構想に入っていた[3-5-2]への移行に踏み切る。その後、守備の局面では[4-4-2]に移行する[3-4-2-1]を導入して、どうにか落ち着きどころを見出したように見えた。

[3-5-2]からスタートしながら、守備の局面では[4-4-2]の陣形を取るトリノ戦のミラン

 しかし、何人かの選手は、これらのシステムの中では自らのポジションを見出せずに動き回っていた。ウイングとしてシーズンをスタートしたボリーニは、左右両方のウイングバックを務め、ナポリ戦ではSBとしてもプレーした。

 R.ロドリゲスは左SBとして開幕に臨んだが、続いて3バックのウイングバックとして中盤にポジションを上げ、最後はビルドアップにおける左足のクオリティを生かし、ライン際すべてをカバーし切れないというフィジカル的な限界を隠してくれる3バックの左CBに落ち着いた。

 ボナベントゥーラは左インサイドMFだけでなく左サイドMFも務めたが、組み立てをスムーズにするためにピッチ中央のゾーンに入り込んでプレーすることを許されていた。サイドMFが空けたライン際のスペースを使うSBが不在のシステムにおいて、これは異例のことであり、ミランがピッチの幅を使って攻撃する可能性を削ぐ結果に繋がった。

 攻撃の組み立てと展開においてシステムが持つ重要性は相対的なものであり、戦術的な柔軟性は一人ひとりのプレーヤーにとって重要なリソースとなり得る。しかしモンテッラのあまりにも頻繁な変更は、昨シーズンからレギュラー陣のほとんどが入れ替わったチームが必要としていた、相互理解に基づく呼吸を生み出し確立するプロセスを遅らせることになった。

4.スソを混乱に陥れた
4.Ha fatto impazzire Suso

 スソの起用法は、モンテッラにとってチームの持ち味を最大限に引き出す文脈を作り出すのがどれだけ大きな困難だったのかを、象徴的に示すものだ。誰もが認めるミラン最高のプレーヤーであり、チームが彼のクオリティに攻撃の多くを依存しているという事実すら、モンテッラの実験から彼を自由にすることはなかった。

 開幕からの2試合、[4-3-3]の右ウイングとしてプレーしたスソは、どちらの試合でも1得点1アシストを挙げ、勝負を決定づける働きを見せた。[3-5-2]への移行に伴って起用されたセカンドトップのポジションは、外から中に入り込む動きによって2ライン間でダイナミックにパスを受ける可能性を制約しただけでなく、逆に内から外への動きによって組み立てをサポートする仕事を課すことになった。

 さらにAEK戦とミラノダービーの後半には、ポゼッションを安定させると同時に最終ラインから前線に展開するタイミングを向上させる目的でインサイドMFとして起用される。そして最終的には、[3-4-2-1]の右トップ下として2ライン間に戻ってきたが、今度は守備の局面で中盤に下がるというタスクも加わっていた。このポジションではキエーボ戦で非常に高いパフォーマンスを見せ、サッスオーロ戦では勝利に決定的な貢献を果たした。どちらの試合でも、右サイドから中央に持ち込んでファーポスト際にシュートを叩き込むという十八番でゴールを決めている。

 そして、右サイドのプレーヤーがすべて故障欠場していたトリノ戦で、モンテッラはまたも実験に踏み切る。スソは[3-5-2]のウイングバックとしてプレーしたのだ。彼の技術的、フィジカル的特徴からすれば決して適性が高いとは言えないポジションだ。当然ながら彼はピッチの中央に入り込みがちな傾向があり、結果的にミランは右サイドの幅を取ることができなかった(背後にいたのは純粋なSBではなくCBが本職のサパタだった)だけでなく、下がり目のポジションでプレーした結果、自陣で敵ゴールに背を向けてパスを受ける場面が多くなり、その多くがアンサルディのアンティチポ(前に出てのパスカット)の餌食になった。

サパタからのパスを受けようとしているスソ。アンサルディにアンティチポを許してボールを失うことになる

 スソの技術的、フィジカル的な特徴は明確であり、それを生かすためには一定のスタイルを必要とする。右サイドから左足で中に持ち込むプレーがその土台となっている。モンテッラの手によってかつてないレベルに到達し、得点という観点に立てばキャリア最高のシーズンを送っていることは事実だ。14試合消化時点で、昨シーズンの総得点にあと2得点と迫る5ゴールを記録していた。にもかかわらず、彼の起用法はモンテッラにとって大きな問題であり続けた。[3-5-2]を導入した直後は2試合続けてスタメン落ちを強いられたほどだ。

 「スソとボナベントゥーラはミランの資産だ。その価値を彼らは示した。チームの一員として貢献を果たしてくれるだろう。[4-3-3]の放棄? 昨シーズンは3位と23ポイント差に終わったが、今シーズンのミランはまったく別の選手を擁する別のチームになった。このシステムでやっていくには12~15得点を挙げる力を持ったウイングが2人必要だ」

 これはモンテッラがローマ戦に敗れた後に語った言葉だ。この試合、スソはアンドレ・シルバとカリニッチの2トップにポストを譲ってベンチを温めていた。

 スソとの関係をある一時期象徴していた相互理解の欠如は、モンテッラがこの数カ月直面していた困難を象徴するものだ。総入れ替えに近い陣容の刷新が、どんなチームにとっても基盤となるプレーの協調とそれに基づく確信を育むために少なくない時間を要求することは、誰の目にも明らかだった。さらに言えば、レベルアップをもたらしてくれるはずだった新戦力が期待ほどのパフォーマンスを見せていないという事実も、無視するわけにはいかない。この議論はとりわけボヌッチとビリアに当てはまるが、期待通りの活躍を見せたプレーヤーを探すのが難しいこともまた事実だ。

 しかしそれでも、モンテッラがチームに施したたび重なる変更が、状況を好転させるよりもむしろ混乱を助長する方向に働き、今シーズン序盤のパフォーマンスを期待を下回るレベルに止めたという見方を否定することは難しい。

 そして今度はガットゥーゾの番だ。彼はこれまでの短い監督キャリアの中でも、1つのスタイルを持っていることを示してきた。戦術的に見ても、また外部やチームとの関係の持ち方にしても、彼のアプローチはモンテッラのそれとは大きく異なっている。かつてのミランの「バンディエーラ」は、極めて困難な課題を前にしている。これまでのキャリアの積み重ねが、ここまでのネガティブな流れ、非常に複雑なクラブとチームの状況を変えるレベルに達しているのかは確かではない。ガットゥーゾがこの課題をクリアするためには、クラブ、チームからサポーターまで、すべてのステークホルダーが一丸となって彼を支えることが必要だろう。

 しかし現時点では、その確証はまったくない。

ガットゥーゾ就任後のリーグ戦5試合も1勝1分2敗とショック療法の効果なし。ミランは光が見えないまま前半戦を折り返すことになった


Photos: Getty Images

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ウルティモ・ウオモビンチェンツォ・モンテッラミラン

Profile

ウルティモ ウオモ

ダニエーレ・マヌシアとティモシー・スモールの2人が共同で創設したイタリア発のまったく新しいWEBマガジン。長文の分析・考察が中心で、テクニカルで専門的な世界と文学的にスポーツを語る世界を一つに統合することを目指す。従来のジャーナリズムにはなかった専門性の高い記事で新たなファン層を開拓し、イタリア国内で高い評価を得ている。媒体名のウルティモ・ウオモは「最後の1人=オフサイドラインの基準となるDF」を意味する。