SPECIAL

「ホントに凄い監督」ヘントCB渡辺剛が引き込まれたモダンフットボールの世界

2023.11.01

昨季、移籍2年目のコルトレイクでレギュラーに定着した渡辺剛は、23-24シーズンからベルギーリーグのトップ6の一角を占めるヘントにステップアップを果たした。日本人CBの獲得を強く望んだハイン・ファンハーゼブルック監督の下で、ここまで全試合フル出場。いまやベルギーリーグ屈指のCBへと成長した26歳の現在地をレポートする。

 10月29日の夜だった。

 ヘントは前半だけで3点を奪う圧巻のサッカーを披露し、スタンダールの後半の反撃を1点に抑え3-1で快勝した。チームを率いるハイン・ファンハーゼブルック監督は「前半は今シーズンの中で最高だった。チーム全体がとても良かった」と敵を圧倒した前半を振り返った。高速ショートパスで相手を翻弄してからサイドを変え、ワンツーやドリブルで敵の守備網を破壊し、相手にいっときの休みも与えぬヘントのサッカーは、ここ5試合で4勝1分というスタンダールの勢いを潰した。

 90分を通じて見るとヘントにも危ないシーンはあったが、41%ものPK阻止率を誇るデービー・ルーフがスタンダールのCFコンガのPKを2度もストップし、チームの大ピンチはホームスタジアムに劇場効果をもたらした。ルーフのPKストッパーぶりにCB渡辺剛は感嘆する。

 「カンファレンスリーグ(ECL、対ブレイザブリク戦)、メヘレン戦(ベルギーリーグ第2節)でも止めているんです。だから俺もPKになった時に、なんか止めるんじゃないかなと思ったんです。あんなに止めるキーパー、見たことがない。練習でも止めているんです。試合でもそれが出ていてすごいですよ」

 チームの調和が狂っても守護神が補正しながら11人で奏で続けたヘントのアンサンブル。フランス語圏放送局『RTBF』選出の週間ベスト11はGKルーフ、DF渡辺、MFスベン・クムス、ホン・ヒョンソク、FWタリク・ティソウダリとヘント勢の5人が占めた。リーグ3位につけるヘントの『個』がチームとして調和していることが伝わってくる。しかしケガ人も多く、11人対11人の戦術練習はできない。それでも7月下旬からの3カ月間で21試合もの過密日程をこなしたヘントは、ローテーション制を敷いて選手をやりくりしている。

ベルギーの強豪、ヘントで全試合フル出場

 そのなかで唯一人、渡辺は全試合1,890分間出場し続けている。セントラルMF勢のクムス(1,676分)、ジュリアン・デ・サール(1,664分)も替えの効かない存在として全試合出場を果たしているが、出場時間で渡辺と比べると1試合半分の休養が与えられている。

 「昨シーズンも全試合フル出場しました。そのことも含めてヘントは自分を獲ったんだと思います」……

残り:2,850文字/全文:3,959文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

コルトレイクヘント伊東純也渡辺剛

Profile

中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。

RANKING