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シティ優勢の裏で分かれたWMシステムの明暗【バイエルン 1-2 マンチェスターC】

2023.07.28

7月26日にバイエルンとマンチェスター・シティが相まみえた国立競技場には、平日夜ながら史上最多となる6万5049人が来場。日本で実現した22-23CL準々決勝での激突が記憶に新しいブンデスリーガ王者とプレミアリーグ王者の再戦を、現地取材した西部謙司氏が振り返る。

シティ優勢が決まった6対4のビルドアップ構図

 プレシーズンマッチではチームの本当の姿はわからない。体調は仕上がっていないし、新しい選手のテストもある。プレシーズンマッチで好調そうに見えても、単に対戦相手と仕上がりが違っていただけというケースはよくあることだ。

 ただ、チームの骨格は見やすい。親善試合で対戦相手に合わせてプレーすることはあまりない。チームでやろうとしていること、ベースの部分が浮き彫りになりやすい。試合中に大幅に選手交代をやるのでコンビネーションなどは未知だけれども、その分チーム全体でやりたいことは統一感を持ってやろうとするのでわかりやすいのだ。

 バイエルン・ミュンヘン対マンチェスター・シティは欧州トップクラス同士という組み合わせ。CLで対戦するとまた違う面も見えてくるのだろうが、骨格の付け合わせではシティが優勢だった。スコアも1-2でシティが勝利している。

 シティがボールを保持した時の基本フォーメーションは[3-2-2-3]だった。昔風に言うとWMシステムだ。GKエデルソン・モラエス、DFはカイル・ウォーカー、ルベン・ディアス、ナタン・アケの3人。ボランチにマテオ・コバチッチと「偽CB」のストーンズ。インサイドハーフにはリコ・ルイスとジェイムズ・マカティーの若手コンビが先発した。ウイングは右にベルナルド・シルバ、左がジャック・グリーリッシュ、CFはフリアン・アルバレスである。

 偽CBのストーンズは、引いて守る時はDFラインに入って4バック化するが、それ以外は1つ前のポジションでプレーしている。シティはボール支配力に優れ、攻撃している時間が長く、守備も押し込んだ状態でのハイプレスがメインなので、CBといってもストーンズがその位置でプレーする時間はあまりない。

 自陣のビルドアップは3バックと2ボランチの5人、ないしGKエデルソンも加えて6人で行う。対するバイエルンは[4-4-2]の守備セット。シティのビルドアップには2トップと2人のサイドハーフ、計4人で守備を行っていた。そして、この時点でシティのボール支配における優位がほぼ決まってしまっていた。

 単純化するとシティ6人に対してバイエルン4人なので、ボールが落ち着いてしまえばほぼ奪えるチャンスはない。フィールドを左右に分割すると、シティ3人に対してバイエルン2人という局面になるので、シティの1人が常にフリーだった。

 バイエルンのボランチがここへ加勢しようとすると、シティのインサイドハーフが前進したボランチの背後で縦パスを引き出す、あるいはCFアルバレスが下りて縦パスを受ける。この手順が明確なので、いったんシティがボールを落ち着けて配置を整えたら、バイエルンはプレッシャーをかけることがほぼできない。この対峙の構図でシティの優勢が決まったといっていい。

 21分、いつもの偽SBではない攻撃的なポジションで活発な動きを見せていたリコ・ルイスがポケットへのランでバイエルン守備陣を崩し、GKも引きつけてアルバレスへパス。アルバレスのシュートのこぼれ球をマカティーが押し込んで先制した。

ダブル「偽9番」で露呈したWMシステムの弱点

 バイエルンがシティのビルドアップに対してほぼ無力なので、シティのボール支配における優勢は動かない。ただ、前半はバイエルンの方が多くのチャンスを作っていた。……

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マンチェスター・シティ

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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