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ポイントは「動き」の数値化。FIFAが発表したW杯新データの見方を解説!

2022.12.12

半自動オフサイド判定など最新テクノロジーを取り入れているカタールW杯だが、試合スタッツも新しい要素が数多く盛り込まれている。グループステージの具体的なスタッツを例に、FIFAが最高峰の大会で挑戦している新データの見方を解説する。

 大会直前にFIFAは、今大会で多くのパフォーマンスデータを公開することを発表(「FIFA Training Centre: FIFA to introduce enhanced football intelligence at FIFA World Cup 2022™」)。大分類として11の項目があり、リンク先のJapaneseのPDFからは日本語でも説明が公開されている。これらのデータは試合の中継、WEBサイト上での速報ページ、試合後のPDFレポート、スタジアムでのARを利用した表現など多くの手段で目にすることができ、メディア関係者や大会に参加するチームスタッフ、選手にはこれらのデータとビデオ分析のための専用プラットフォームまで提供されている。

 PDFのレポートはこちらのページ「FIFA Training Centre: Post Match Summary Reports」にて誰でも閲覧できる。このレポートの内容からいくつかのデータをピックアップしよう。

ボール支配率に“3つ目の項目”?

 ボール支配率は古くから使われており、パス数などのプレーデータが一般に浸透する前から存在している。

 細かいデータの定義はデータ会社や取得方法によって差異があるが、ボールを持っている時間(もしくはプレー数、パス数など)の合計値と相手の同データを合算した上でその比率がボール支配率として使われ、片方が54%であれば相手は46%となり、合計が100%になるのが一般的だった。

 しかし、今行われているカタール大会ではIn Contest(日本語資料では中立)として3つ目の数値が掲載されている。FIFAが公開した資料では空中戦時にボールに触れた際や守備プレー後のルーズボール状態をIn Contestとしているようだ。シュートをブロックした場合や、クリアボールなどもこれに含まれると考えて良いだろう。グループステージの試合のIn Contestのパーセンテージと空中戦、クリア、ブロックの試合の合計値を下図に分布したが、やはり後者の数値が大きい試合はIn Contestの割合が増えている。概ね8〜11%となるが、特に試合序盤において蹴り合うような展開になると増えやすいため、試合が落ち着かない前半早々の表示はこの傾向より大きくなることもあるだろう。通常のボール支配率の表現よりもどういった試合が展開されているのかを把握しやすくなる。

試合状況を17のプレイフェーズに分類

 このボール支配率を細分化したのが「Phases of Play」(日本語資料ではプレイフェーズ)となる。ボール支配率はその名称から「どちらが優勢か」を表現したスタッツのように扱われる場合があるが、単にどちらがボールを持っているかを表しただけの数字であり、その中身を読み取ることはできない。

 その課題を解消する一手として「プレイフェーズ」は有効だ。ボール保持時と被保持時の中身を分類しそのパーセンテージを示すことで、どういう試合状況だったかをもう1段階深く把握することができる。詳細はFIFAのページ「FIFA Training Centre: EFI metric phases of play」にある動画付きの説明を参考にしていただきたいが、保持であればビルドアップ(プレス有無)、プログレッション、ファイナルサード、ロングボール、アタッキングトランジション、カウンターアタック、セットピース(セットプレー)の8つ。被保持の場合は、ハイプレス、ミッドプレス、ロウプレス、ハイブロック、ミッドブロック、ロウブロック、リカバリー、ディフェンシブトランジション、カウンタープレスの9つに分けられている。

 下表は日本のグループステージのデータだが、それぞれの試合の状態が数値となって表れている(なお、保持、被保持内で合計値が100%でなく、これらのフェーズに特定できないシーンがあると推測されるが、100%を超えるケースについては詳細不明だ)。

 保持時においてはこれまでのボールタッチベースのデータでもいくつかは再現できたが、被保持時の状況判別ができるようになったのはトラッキングデータの存在が大きい。そしてそのトラッキングから得られた選手配置のデータを生かし、さらに細かいデータの創出にFIFAは挑んだ。

ライン(ユニット)が持つ意味=「定性分析の定量化」

 トラッキングデータといえば走行距離やスプリントと思われがちだが、実際に取得しているのは瞬間ごとの選手、審判、ボールの位置データの集合体で、そこからスピードや移動方向を判定している。よって、各シチュエーションの選手のポジショニングから、幅や深さの距離の計測が可能となるのだ。

 PDFレポート内の保持、被保持の双方にあるLine Height、Team Lengthのデータはゴールラインから最終ラインまでの距離、フィールドプレーヤーの縦、横の距離を意味しており、保持の際にどれくらい幅を取るチームか、ブロックの際のラインの高さはどれくらいか、などを読み取ることができる。

 そして被保持側の配置データからポジション別のライン(FIFAではユニットとして紹介しているが本記事ではラインと表記する)を判定。保持側がこのラインを超えたプレーを行った際をラインブレイクというデータで表現している。ポジション別のラインは[4-4-2]のフォーメーションであればDFライン(4人)、MFライン(4人)、FWライン(2人)と説明するのが一番わかりやすいだろう。……

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Profile

八反地 勇

1981年、愛媛県生まれ。音楽で食べていくために上京するもサッカーに魅入られ、サッカーのデータ入力、速報配信運用業務を経て、現在はフリーランスにてサッカーのデータ分析向けの設計、分析記事の執筆、ウェブフロントエンジニアなどを担当。サッカー観戦は1チームに絞らず、広く浅く見るタイプ。

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