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すべてはリカルドのシナリオ通りに。浦和レッズのACL決勝進出をもたらした「5人交代時代の最善策」

2022.09.01

8月10日に久しぶりの声出し応援を受けて以来、浦和レッズは公式戦4連勝(18得点0失点)と絶好調だった。その状態で迎えた25日のACL準決勝・全北現代戦は、延長まで120分を戦い抜く激闘。一時は逆転を許して敗戦が近づいたが、土壇場の120分で2-2に追いつき、最後はPK戦を制して東アジアブロック優勝を果たした。浦和は来年2月に行われる、西アジア勝者とのACL決勝へ駒を進めた。過密日程を戦い抜いてミッションコンプリートしたリカルド・ロドリゲス監督のチームマネージメントを分析する。

 快進撃と言うしかなかった。その最も大きな要因は、声出し応援をきっかけとする一体感の高まり、ACLに懸ける熱量の共有だが、それ以外にもう一つ要因を挙げるなら、マネージメントの確立だろう。浦和はこの過密日程のトーナメント戦を勝ち上がるために、最適なチームマネージメントを見出していた。

小泉、伊藤、岩尾の明確な役割分担。個性のパズルの最適解と、固定

 まずはスタメンの固定だ。連勝軌道に入った10日のルヴァンカップ・名古屋戦以降は、ケガ人の復帰もあり、スタメンをほぼ固定した。2トップは松尾佑介と小泉佳穂、少し前までは流動的だったダブルボランチも、岩尾憲と伊藤敦樹の組み合わせで固定。どちらのコンビも固定起用されることで、試合毎に連係が高まった。

 浦和は守備時は[4-4-2]だが、攻撃時は岩尾をアンカーに残し、伊藤が右インサイドハーフへ上がって[4-3-3]へ移行する。岩尾が真ん中でタクトを握り、そのゲーム支配力が発揮される一方で、伊藤は相手にとって捕まえづらい位置から出て行くため、前を向いて攻撃に絡みやすい。その推進力を存分に発揮できる。岩尾と伊藤、異なる個性を持つボランチの明確な役割分担により、互いの個性が一層引き出されるようになった。

 こうして右から伊藤が上がる一方で、左はトップ下の小泉が下り、左インサイドハーフ化する。小泉はライン間でボールを受けるだけでなく、時にはさらに下がって岩尾をサポートしたりと、中盤を広範囲に動き、司令塔を務める。かつては「トップ下の割に得点力が物足りない」と揶揄された彼だが、伊藤が今ほどアグレッシブにゴール前へ飛び込むプレーを増やせるのなら、逆に小泉はプレーメイカー色を強めることで、全体が調和する。

ACL準々決勝、パトゥム戦ではチーム3点目を奪う仕事も果たした小泉

 少し前までの浦和を思い返すと、トップ下では汎用性の高い江坂任が、ビルドアップの出口、ゴール前のアシストや得点など、あらゆる仕事に奔走した。しかし今は、小泉、伊藤、岩尾が、各自の個性を発揮する分担スタイルで最適解を見出している。[4-4-2]からの可変型であるため、相手にとっても捕まえづらいのもメリット。また、伊藤が前へ潜るプレーを活発にすることで、酒井宏樹のオーバーラップがない状況でも、ダヴィド・モーベルグに集まるマークを分散させる効果もあった。

 個性のパズルの最適解と、固定。これは浦和が連勝軌道に乗る上で、欠かせないポイントだった。

必勝パターン確立。スタメンだけでなく、サブまで固定

 もう一つ挙げられる好調の要因は、5人交代の最大活用だ。ルヴァンカップ・名古屋戦からACL準決勝・全北現代戦のV試合すべてにおいて、後半にキャスパー・ユンカー、江坂任、明本考浩の3人が投入された。10日以降の浦和はスタメンを固定するだけでなく、サブも固定している。

 スタメンの2トップ、松尾と小泉の売りはプレッシングだ。松尾は小回りの効くスピードで相手DFに脅威を与え、小泉は攻守において次のプレーの予測が効き、出足が早い。速さと早さの2トップは、トランジションでも相手を素早く追い回し、彼らがそれだけプレスに走る以上、後ろも追随しないわけにはいかない。

パトゥム戦で前線からボールを追いかける松尾

 好調の直近5試合、浦和は序盤から強度の高いプレーを繰り出し、常に前半のうちに先制に成功した。全北現代戦以外の4試合は、前半に複数得点を挙げるほど。その爆発力を生むエンジンになったのが、松尾と小泉の2トップだった。

 しかし、時計の針が進めば、相手も対策を打ち始める。ACL準々決勝のパトゥム・ユナイテッド戦では、相手が[3-4-2-1]に変更した。3枚に増えたDFに対し、松尾と小泉のプレッシングがかかりにくくなり、芋づる式に相手ウイングバックが浮き、後半の浦和は押し込まれる展開を強いられている。……

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リカルド・ロドリゲス戦術浦和レッズ

Profile

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』『日本サッカーを強くする観戦力 決定力は誤解されている』『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。