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球際で圧倒的に強い櫻川ソロモンに要求したい「闘わないすゝめ」

2022.08.09

櫻川ソロモン、21歳、身長は190cm。ジェフ千葉の未来を担う大型ストライカーだ。昨シーズンからレギュラーに定着し、今シーズンは苦しみながらも5ゴールを挙げている。先日のザスパクサツ群馬戦でも途中出場からゴールを決めた。そんな大器の覚醒に何が必要なのかを、ジェフ千葉を追い続ける西部謙司氏が考えてみた。

本物の「期待の大型新人」

 2020シーズンの新入団選手の発表で壇上に並んだ選手たちの中でも、ひときわ大きかった。190cm、91kgの見上げるような偉丈夫だ。外で見ると、背景が空になるのでもっと大きく見える。高いし分厚いし、日本ではちょっと見ないタイプのFWである。

 まさに「期待の大型新人」だった。しかしいつも思うのだが、この場合の期待は大型にかかっているのか新人なのか、それとも両方なのか。期待の新人で十分な気もするが、あえて「大型」をつけたくなるのは日本メディア独特の風習な気がする。新人に期待するのは当然として、大型だから期待できるとは限らない。サッカーは小型や中型でも十分期待できるスポーツなのだ。しかし、期待の中型新人とは決して言わない。

 大型新人の大型は体の大きさを表しているのではなく、才能や器の大きさを表していると解釈することもできる。だから中型や小型は使われないのだと考えもしたが、期待の大型新人と書かれた選手は必ず体格が大柄なのだ。つまり間違いなく大型は体格のことで、やはり期待の大型新人はサイズへの期待に他ならないわけだ。

 どうも我われには大きさへのコンプレックスがあるらしい。期待の大型とは逆に、「ウドの大木」などと大きさを揶揄する言葉もある。飛び抜けて大きい人は当然少数派だ。そこに自分たちにはない力を感じ恐れると同時に、多数派の威を借りて少数派を排斥するような言動もちらほらあるということではないか。

 ともあれ、櫻川ソロモンは期待の大型新人だった。大型にも新人にも期待した。そしたらすぐにスペインのセルタへ行ってしまった。2カ月程度のU-19への短期留学だったのだが、このまま帰って来ないなんてことはないよな、と思うぐらいに期待していた。なぜなら、彼が本物の「大型」新人だからである。

攻撃で「球際を作る」メリット

 日本の「期待の大型新人」は、実はそれほど大型ではないことが多々ある。日本人の中では大きいかもしれないが、例えばヨーロッパだとほぼ普通のサイズに過ぎないことも少なくない。世界的に大型ストライカーと認定されるのは身長190cm以上だ。

 185cmのロベルト・レバンドフスキは日本なら間違いなく大型だがヨーロッパではそうでもない。ズラタン・イブラヒモビッチ195㎝、オリビエ・ジルー192cm、ロメル・ルカク190cm。これぐらいでないと大型感は出ない。櫻川ソロモンは190cmある。世界的にも高身長FWだ。日本限定の大型ではなく、インターナショナルな大型である。しかも重量感があるのが良い。

櫻川が理想像として挙げるルカクと、自伝を好きな本に選んでいるイブラヒモビッチ。写真は2021年1月のミラノダービー

 日本代表にも選出されたハーフナー・マイクは192cm。日本代表のFWとしてはたぶん最長身だと思うが、体重は92kgでスリムな体型だった。櫻川の体重も同じぐらいだが体格はガッチリしていて幅と厚みがある。ゆくゆくは100kgのルカクのようになるのかもしれない。

 J2でのデビュー戦から球際の強さは圧巻だった。高身長が空中戦に有利なのは自明だが、球際の強さは高いだけでは作れない。重さや体の幅がモノをいう。櫻川にはそれがあるので、積極的に球際を作っていけば良い。もちろん球際のデュエルは体格だけで決まるものではないけれども、それが武器になるのは明白だ。体のぶつかり合いになればほとんど勝てる。どんどん球際を作って、ことごとく勝利するというのが第一の期待だ。……

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ジェフユナイテッド市原・千葉櫻川ソロモン

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。