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「信念は理屈を覆す」「徹底を徹底する」――。5つの吉田語録から紐解く、ブラウブリッツ秋田の見方

2024.05.16

周知のとおり、ブラウブリッツ秋田を率いる吉田謙監督の言葉には熱とパワーがあり、浸透力がある。簡潔明瞭、それでいて本質を突く言葉の数々。いわゆる『吉田語録』は、いかに秋田の選手たちに浸透し、ピッチ上のプレーに昇華しているのか。秋田の番記者であるライター、竹内松裕が丹念な周辺取材から紐解く。

簡潔明瞭で本質を捉えているから響く『吉田語録』

 吉田謙監督は2020年にブラウブリッツ秋田(以下、秋田)の監督に就任すると、その年のJ3で前人未踏の28戦無敗優勝を成し遂げ、2021年から3年連続でJ2残留を達成。「走力・球際・切り替え」の原則を重視する縦に速いサッカーを徹底し、J2でも存在感を出している。

 本稿のテーマは「吉田語録から紐解く、ブラウブリッツ秋田の見方」となっている。吉田語録とは、文字通り、吉田監督の言葉を集めたものだ。吉田監督の簡潔明瞭な言葉は本質を捉えており、サッカーやスポーツの枠を超えて響くものが多い。クラブが発売した「まいにち吉田語録」という日めくりカレンダーが好評を博していることからも、その影響力がうかがえる。

 2021年に秋田に加入した稲葉修土(現FC町田ゼルビア)は、吉田監督の人物像とその言葉について、「侍みたいな、武士みたいな人。本当まっすぐで、選手に対しても思っていることをすごく分かりやすい言葉で率直に伝えてくれます。本当に難しくない、簡単な言葉ですごく伝える方です」と話している。同年の夏に加入し、いまも秋田でプレーする藤山智史も、同様に「すごくシンプルでストレートに、わかりやすく伝えてくれる監督です」と述べている。

 一方、中学時代から吉田監督の指導を受けてきた鈴木準弥(現FC町田ゼルビア)は、「謙さん(吉田監督)の発する言葉は、オリジナルというか、謙さん節というか。自分は中学時代から指導を受けていて、昔から文章で伝えるというよりは、あの人のなかのキーワードというか、パワーワードをぶつけてくるので。わかりやすいんですけど、ちょっと『なに言ってるのかな』というのもあったりします(笑)」という。

 ここで「謙さん節」の一例を紹介しよう。

 2021年栃木SC戦のポイントとして、吉田監督は『矢野バサミ』を選手たちに伝えた。栃木SCのFW矢野貴章は経験豊富で強度が高い。そこで矢野に前線に起点を作らせないように挟み込んでチームとして自由を奪う。それが『矢野バサミ』だ。2021年から2年にわたって秋田に所属し、今季現役を引退した増田繁人さんは、吉田監督の指導を通じて印象的な言葉のひとつとしてこれを挙げていた。

 閑話休題。稲葉と鈴木の言葉から共通して浮かび上がるのは、一続きの文章ではなく、シンプルでわかりやすい言葉で指導をする吉田監督の指導だ。

語録1――「走力・球際・切り替え」

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J2リーグブラウブリッツ秋田吉田謙

Profile

竹内松裕

フリーランスライター。1975年東京都練馬区生まれ。2005年秋田県秋田市に移住。紙・ウェブ媒体の制作会社などを経てフリーランスとしての活動を開始。2014年から『エル・ゴラッソ』でブラウブリッツ秋田の番記者を担当するなど、サッカー専門媒体を中心に執筆。Webマガジン『秋田サッカーレポート』を立ち上げて秋田のサッカーの記録に挑戦している。スポーツ写真・動画撮影にも意欲的に取り組む。

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