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なぜ上位に強く、下位に弱い?――ジェフ千葉の昇格の可能性を考える

2022.07.11

「新潟には勝てるかもしれないけど栃木に負けそうだから、その後でいいですか」。ジェフ千葉を見続ける西部謙司氏に、千葉の好調の理由を書いてほしいとお願いしたら、このような答えが返ってきた。果たして、現実はその通りになった。なぜ千葉は上位には強くて、下位に弱いのか、そして悲願の昇格の可能性はあるのか、ユン・ジョンファン体制3年目のチームのこれからを展望してもらった。

好調であると同時に不調でもある

 5月8日の第17節から7戦無敗、リーグ折り返し時点ではプレーオフ圏内まで順位を上げたジェフユナイテッド千葉は、その「好調」が取り上げられていた。

 好調の要因を挙げるなら、ユン・ジョンファン監督の下で積み上げてきたプレースタイルが固まってきたことが大きい。ただ、サッカーではよくあることだが長所は短所であり、好調の要因はそのまま不調の原因にもなる。

 今季のJ2はすでに上位3チームによる自動昇格争いになっている。横浜FC、アルビレックス新潟、ベガルタ仙台の3強体制だ。第26節時点で首位の新潟は51ポイント、2位の横浜も51ポイントで両者の差は得失点。3位の仙台が48ポイント。4位のファジアーノ岡山は1試合少ないとはいえ仙台から8ポイント離れている。3チームが突出している今季なのだが、千葉はこの3チームに今のところ負けがない。

 新潟とは2試合を終えていて1-0、2-1とダブル。横浜FCには1-1、仙台に2-0。上位陣に強い。ボールを保持して主導権を握ろうとする相手には相性がいい。それが千葉は強い、好調そうだという評価につながるわけだが、本当に強ければ現在の順位にはいない。

J2第25節、新潟戦のハイライト動画

 上位陣に強いかわりに下位、特にフィジカル重視で守備を固めてくる相手にはとにかく弱い。栃木SCにはすでに2敗していて、いわてグルージャ盛岡、ザスパクサツ群馬、大宮アルディージャ、ブラウブリッツ秋田に敗れている。現時点で17~21位のチームにすべて負けていて、最下位のFC琉球には辛うじて勝っているが、上位に強く下位に弱いという明確な傾向が表れている。つまり、千葉は好調であると同時に不調であり、相性に勝敗が左右されているだけという見方もできるわけだ。

得点力不足は「YES」だが、「2点」でほぼ勝てる

 ユン監督は一貫して守備をベースにした戦法を続けてきた。ゾーンを埋めて連動した守備ブロックは安定感がある。チャンミンギュ、新井一耀、鈴木大輔といったCB陣の空中戦と対人守備の強さ、GK新井章太のシュートストップ能力もあるが、チーム全体の守備意識が高い。1点でもリードすれば、それを守り切ることが優先という戦い方もはっきりしている。いわゆる堅守速攻型の典型と言えるだろう。

 このタイプのチームが陥りがちな穴は得点不足だが、千葉はその点でも典型と言える。1-1のドローが7試合ある。いずれも2点目が取れずに引き分けたわけだが、2点取れたゲームはことごとく勝っていて、例外は2-3で敗れた第24節(大分トリニータ戦)だけだ。これは得点力が低いというより、それほど得点力を重視しない戦い方の影響だと思う。体質的に2点目を取りにくく、3点取る必要性を感じていない。常に2、3点取れるような設計になっていないのだ。……

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ジェフユナイテッド市原・千葉ディエゴ・シメオネホルヘ・サンパオリユン・ジョンファン

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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