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「降格組」大分に襲いかかった“魔の日程”。復調のメカニズムを求めて

2022.04.27

今季から下平隆宏監督体制の下、1年でのJ1復帰を目指す大分トリニータ。前任の片野坂知宏監督(現・ガンバ大阪監督)が築いたスタイルからの継続性もありつつ、J2降格にもかかわらず昨季までの主力を中心に28名の選手が契約を更新し、チームの土台が担保された状態で順調なスタートを切る……はずだった。しかし、4年ぶりのJ2で待っていたのは“魔の日程”だった。

コロナによる開幕延期、そしてルヴァン参戦…

 大分トリニータはリーグ開幕前々日の2月17日に、選手2名、スタッフ2名、クラブ関係者1名が新型コロナウイルス陽性判定を受ける。翌18日の抗原検査では13名以上の選手が確保できることがわかり、13時時点では翌日の開幕・水戸戦を予定通り開催するはずだったのだが、その後まもなくコーチと選手複数名が濃厚接触者と指定され、保健所からチーム活動停止の指示。17時には急転直下、リーグ開幕戦と23日のルヴァンカップ開幕・鹿島戦の延期が決定した。

 昨年の天皇杯を決勝まで勝ち上がったため始動が遅く、もとより5週間しかなかったプレシーズンには震度5強の地震発生によりキャンプ日程が短縮されるというアクシデントもあったが、新指揮官がベースとする[4-3-3]システムでの戦術浸透は順調に進み、選手たちも新たな刺激を得て生き生きとトレーニングしながら準備を進めていた。その矢先に出鼻を挫かれた形で、開幕に合わせて整えたコンディションとテンションは、一旦リセットされてしまう。

 活動停止期間が明けた24日午後に陽性判定者を除くメンバーがグラウンドに集まって体を起こし、25日には紅白戦で戦術確認。翌日のトレーニング後に敵地へと移動して、27日のJ2第2節・甲府戦が事実上の開幕戦となった。

 延期された2試合のリスケジュールにより、初戦からいきなりの11連戦。リーグ戦とルヴァンカップが並行して進む過密日程をターンオーバーしながら戦ったが、全員がコンディションを揃えた状態でのトレーニングができず、満足に紅白戦もできないまま、ミーティングと立ち位置確認程度で慌ただしく次の試合を迎えるというルーティンが続いた。

 ある程度波に乗ってからならともかく、スタートからこの状況は難しい。

 公式戦7戦未勝利と苦しみ、ようやく3月23日のJ2第6節・琉球戦で初白星を挙げた。11連戦の前半はホームゲームが多く、アウェイも長崎と近場だったことは救いのようにも思えたが、中2日での4連戦という負荷の高い時期もあり、最後は大阪、仙台、東京のアウェイ3連戦。J2第4節と第5節終了時にはJ3降格圏の21位にまで沈み、連戦で結果が出ないことにも拍車をかけられて、選手たちの疲労感はピークに達していた。昨季までいたJ1ではあったVARが今季はないことも、地味ながら影響していたように思える。

J2第6節、FC琉球戦のハイライト動画

 11連戦を終えて次の9連戦までにようやく初の1週間のブランクを得た時、下平監督が記者会見で思わずそれを「中断期間」と言い間違えたほどに、それは過酷な日程だった。昨季J1を17位・18位フィニッシュしてルヴァンカップに参戦している徳島と大分が、同じJ2降格組の横浜FCと仙台に大きく出遅れたことには、過密日程との因果関係を考えざるを得ない。

[4-3-3]に固執せず、[4-4-2]変更で守備が安定

 それでも初勝利後は2度の連勝もあり、リーグ戦の方は幾分、持ち直してきた感触がある。要因は大きく3つ。チーム不調時にも攻撃陣が好調を維持していたこと、指揮官のフレキシブルな戦術変更、連戦の間の1週間に戦術の再確認を行えたこと。それらの要素を重ねることで、ようやく今季のチームの当面の戦い方が安定してきた。……

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下平隆宏大分トリニータ戦術

Profile

ひぐらしひなつ

大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。note:https://note.com/windegg