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僅差の完敗。「秩序とカオス」のありように明確な違い【マンチェスター・シティ 1-0 チェルシー】

2022.01.17

1月15日にエティハド・スタジアムで行われたプレミアリーグ第22節、首位マンチェスター・シティと2位チェルシーの天王山は、70分の決勝点でホームチームに軍配が上がった。今季チェルシー相手に“ダブル”を達成し、勝ち点差は13に拡大(今節で2位に浮上した1試合未消化のリバプールとは11差)。これで11月からリーグ戦12連勝と、シティがプレミア2連覇に向けて大きく前進した一戦を西部謙司氏が振り返る。

遠くにシティの背中が見えている

 プレミアリーグの1、2位対決は1-0でマンチェスター・シティが勝利した。点差は1点、さすがに内容が互角とまでは言えないが、それでもチェルシーが勝つチャンスはあった。そして、この試合で両者の勝ち点差は13ポイントに広がった。もうよほどのことがなければ優勝はシティだ。

 シティとチェルシー、シティと他チームの間にある差はわずかなものにも見えるが、絶対的な僅差でもある。競った試合はできても勝ち点は絶望的に開いている。それはこの試合単体の感触としても同じだった。チェルシーからはシティの背中が見えているが、とうてい追いつける距離にはいないのだ。

 シティは例によって可変の[4-3-3]、チェルシーも不動の[3-4-2-1]でスタート。例によって決して縦に急がないシティのビルドアップに対し、チェルシーは1トップ2シャドーが中央3レーン、その隙間を2ボランチが見張る。カンテやコバチッチがシティのCBへプレスするケースもあり、この前方5人で可能な限り前から抑え込んでいこうとする。前方5人、後方5人のブロックを連結させる。これで序盤に2度ほど良い形でボールを奪えたが、その後のショートカウンターがいずれもオフサイドになる。

 シティは慌てず騒がず。時折、コンパクトなチェルシーの守備ブロックの背後にロングパスを落として牽制をかける。チェルシーはそれでも頑張ってコンパクトな陣形を維持するが、ぎりぎりの我慢だ。コンパクトにしてライン間を詰めれば裏、裏を警戒すればライン間が空くというジレンマ。どちらにも転ばないようにぎりぎりで耐える。

 シティはまったく慌てない。一発で裏を見せながら、基本はライン間へ運ぶのが狙いだ。相手の“門”を通過することでライン間へ運ぶので、ゲートができるまでは待つ。ライン間に運ぶ前進は速いと失敗する。相手がボールを奪いたい場所へボールを運んでしまうからだ。プレミアリーグのほとんどチームがこれで失敗している。シティはじっくりと、相手のプレスのベクトルをずらして、プレッシングをほどいてから前進する。

 チェルシーはプレスがほどけないように歯を食いしばって耐える。すると、シティは次の手を出してくる。大きなサイドチェンジで左右に揺さぶる。さすがにこれに対して瞬時に反応するのは無理。ボールの方が人より速い。したがってチェルシーはラインを通過されなくても全体が下がらざるを得ない。

 ここでモノを言うのはシティの質的優位である。この日の両翼はスターリングとグリーリッシュ。前半はスターリングのドリブルが光る。現在はアフリカ・ネーションズカップ参戦中で不在だがマレズもいる。偽9番のフォデンもウイングになれば1対1で優位性がある。守備側が縦を防げば中へ来る、中へ逃がすと定番の「ポケット」を狙ってくる。全部塞いだらサイドを変えてくる。ここでもシティに対峙する相手は我慢の連続を強いられる。

試合序盤から対面するチェルシーの左ウイングバック、マルコス・アロンソ(右)を1対1で圧倒したスターリング

思想の深み

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チェルシーマンチェスター・シティレビュー

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。