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ブレグジットとイングランド勢のMCO。“国内産業”で唯一、EU離脱を歓迎するサッカー界の事情とは?

2022.01.09

2020年末をもってEU法適用期間が終了し完遂された英国のEU離脱「ブレグジット(Brexit)」。発表時には選手獲得に関する懸念も広がっていたが、実際のところどういった影響が出ているのか。そして、サッカー界はどう対応しているのか。近年進んでいるマルチクラブ・オーナーシップ(MCO)の動きとの関連性から紐解く。

フットボリスタ第87号』より掲載

 「私はスポーツと金儲けに目がないのでね」――イングランドのシェフィールド・ユナイテッド(現2部)を所有するサウジアラビアの王子が、今春にフランスのシャトールー(現3部)を買収した際のコメントだ。経営母体の「ユナイテッド・ワールド」は、ベルギーやUAE、インドでもクラブを買収済み。今日のプロサッカー界は、エンターテインメント分野における国際ビジネスの世界だ。

 他の業界と同様、世界経済の動きにも左右される。その1つが、英国のEU離脱。2020年末の移行期間終了前には、外国人選手の多さでも知られるプレミアリーグを筆頭に、国内クラブの“リクルート難”が不安視された。

逸材を16歳時点で大陸側の“自軍”へ

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山中 忍

1966年生まれ。青山学院大学卒。90年代からの西ロンドンが人生で最も長い定住の地。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』『バルサ・コンプレックス』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。

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