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サッカーニュースでよく聞く「CAS」って何? スポーツ紛争の仲裁手続きを弁護士が解説

2021.10.06

エントリー資格のない選手を出場させたとして、Jリーグから下された没収試合処分に異議を唱える浦和レッズが、8月に提訴を発表したことで注目を集めた「CAS」(スポーツ仲裁裁判所)。海外サッカーのニュースを読んでいてもよく登場する国際組織だが、そもそもなぜスポーツ紛争において仲裁が必要なのか。そしてなぜ浦和レッズは日本からわざわざCASへ手続きを進めているのか。藥師神豪祐弁護士と諏訪匠弁護士に解説してもらった。

 エントリー不備に関するJリーグからの懲罰について、浦和レッズは2021年8月19日付のリリースで、懲罰規程の適用に誤りがあることを理由にCASに対して仲裁判断を求めることを発表しました。このように、スポーツ紛争に関する報道では、「CAS」という名称を見かけることがあります。しかし、「聞いたことはあるけど、どのような組織かよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。

 CASとは、スポーツ紛争を解決する際に用いられる国際組織です。代表選手選考に関する紛争、選手やスポーツクラブに対する懲戒処分をめぐる紛争などの「スポーツ特有の紛争」においては、通常の裁判所ではなく、CASのようなスポーツ仲裁機関に判断が持ち込まれることがあります。本稿では、CASを含むスポーツ紛争の仲裁手続きについて解説します。

「裁判所」というより「仲裁機関」

 CASとはCourt ofArbitration for Sportの略称で、日本語ではスポーツ仲裁裁判所と呼ばれます。1984年に国際オリンピック委員会(IOC)によって設立され、スポーツ紛争を解決する最高裁判所としての役割を担っています。本部はスイスのローザンヌにあり、仲裁人は世界各国のスポーツに詳しい弁護士や学者から構成されます。申立費用は1000スイスフラン(日本円でおよそ12万円)。また、日本国内の手続きと比較すると、この点が大きな特徴となりますが、CASの手続きでは、当然ながら日本語を用いることはできず、英語、フランス語もしくはスペイン語を用いる必要があります。

 CASの手続きにはいくつかの種類がありますが、最も典型的なものが上訴仲裁です。上訴仲裁は、競技団体や仲裁機関が示した判断に対して不服がある場合に、上級機関であるCASに対して再度判断を求める手続きです。今回の浦和レッズもこの上訴仲裁を利用するものと考えられます。

 CASは、「裁判所」という名称がつけられていますが、厳密には「仲裁機関」です。

スイス・ローザンヌにあるCASの本部(写真は2009年)

 一般的には「喧嘩の仲裁」などと言われますが、法的な意味は少し異なります。法的手続きとしての「仲裁」とは、紛争の解決を第三者(仲裁人)の判断に委ね、その判断に服するという合意に基づいて行われる紛争解決手続きです(仲裁法2条1項参照)。裁判に似ていますが、当事者の合意(仲裁合意)が要件となっている点、民間人が判断を下す点などで裁判と異なります。

 一般民事紛争で仲裁が使われることはほとんどないですが、外国企業との紛争においては国際商事仲裁が広く用いられています。……

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文化浦和レッズ経営

Profile

藥師神豪祐 諏訪匠

【藥師神豪祐】1984年生まれ。法律事務所fork代表弁護士(第一東京弁護士会)。Twitter:@hell_moot【諏訪匠】2015年弁護士登録。名古屋市出身、京都大学卒。現在は都内法律事務所に勤務。不動産、相 続、企業法務やスポーツ団体設立業務などを取り扱う。30年来の鹿島サポーター。好きな選手 は小笠原満男と荒木遼太郎。