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北欧で活躍中のスペイン人指導者が探求する「守備ブロック」の奥深さ

2021.03.06

欧州サッカーの最先端の知見を韓国、ひいてはアジアに広めるべく立ち上げられたプラットフォーム型シンクタンク『JUEGO』。今回は同じ志を持つfootballistaとのコラボ企画として、北欧の強豪コペンハーゲンでアシスタントコーチを務めるスペイン人指導者が綴った、ハイプレス全盛期の今こそ知っておきたい守備ブロックについての論考をお届けする。

※『フットボリスタ第81号』より掲載。

「死んだ時間」と「生きた時間」

 ライアン・ホリデイが著作『エゴを抑える技術』(パンローリング)の中で引用した小説家グレアム・グリーンによると、人生には2種類の時間があるようだ。「死んだ時間」と「生きた時間」である。みなさんも想像がつくように死んだ時間とは、何もせず怠惰に任せてなんとなく過ごした時間である。一方、生きた時間とは、勉強したり、本を読んだり、好きな人と一緒に楽しんだり、重要な試合をプレーしたり……生きる目的に捧げた時間である。

 この生きた時間を日々作っていきたいと考えた私は、頭を整理して論理を組み立て、サッカーにおいて最も大事なものの1つ、守備について執筆した。この記事が一方通行のコミュニケーションではなく、みなさんに思考をもたらしながら、私が物事を整理できるように、答えのない質問をいくつか入れたことをどうかお許しいただきたい。答えは読者のみなさんの中にある。この記事とともに生きた時間を過ごそうではないか。

「タイトルは守備によって制するものだ」

 シンプルな質問から始めよう。みなさんはサッカーの試合を見る時、何を最初に分析するだろうか? 一般的にはフォーメーション(特に守備時によくわかる)と、それを構成する選手たちではないだろうか。それらを皮切りにプレスの開始地点、最終ラインの高さ、加えてもちろん様々な攻撃への対応やマークの付き方などを分析していく。

 もしかすると、選手の役割、組織的な攻撃から分析するという、違う見方をする人もいるかもしれない。どちらが正しいと言うのではなく、それぞれ慣れた観察方法を持っているものだ。大事なのは、その後の仕事を効率良く進めるために自分の観察パターンを把握しておくことだろう。

 誰が言い始めたのか知らないが、「試合は攻撃によって勝つものだが、タイトルは守備によって勝つものだ」というフレーズがある。これは私のサッカーへのアプローチを完璧に表現している。私はいつも守備から始める指導者なのだ。ジョゼ・モウリーニョも「新しいチームを率いる時は常に守備から始め、次に守備から攻撃へのトランジションに進む」と語っている。なぜなら、秩序こそがチームと選手を一体とし、次の段階へ進む信頼を勝ち取らせてくれるからだ。次の段階とは、サッカーで最も複雑な要素――攻撃のことだ。

モウリーニョはチェルシーでの一次政権において、就任初年度からプレミアリーグで年間わずか15失点しか許さない堅守を構築。チームを50年ぶりのリーグ制覇に導いた

 守備のレベルについて語る時、私はバスケットボール指導者、ダスコ・イバノビッチの言葉を引用している。

 「良い守備者も悪い守備者もない。良い守備者になりたいか、なりたくないかだけだ」

 このフレーズは選手にもチームにも当てはまる。守備が「良い」と評価されるのはどんなチームだろうか? 守備力とは、守備者全員の個の能力を合計したものではない。守備には、堅固さを最大化し脆弱さを最小化できる明確な組織が求められる。すなわち、共通理解が必要なのだ。練りに練られたプラン――練習して身につく選手一人ひとりに理解されたプランが必要なのだ。

 チェスの元世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフの言葉に「1つの駒のポジションを間違えると、すべてがポジションを失ってしまう」という名言がある。この言葉は、全員が同じ責任を負うということや、アグレッシブに守らなければならないということを暗示しているわけではない。「各々が各々の瞬間にすべきことをする」という意味だ。この「すべきこと」の中には、「何もしないこと」も含まれている。例えば、カウンターアタックを仕掛けるために、「何もしない」選手を選んでおくことも私たちにはできる。彼らはプランに必要な役割をしているという意味で「守備をしている」のだ。重要なのは、その瞬間に何かをしているか、していないかではなく、事前のプランに沿ったことをしているかどうかだ。

コンピューターと対戦するカスパロフ

 守備時の振る舞いを評価する際に知っておかなければならないのは、選手個々の個人戦術を持続する力だ。集中力を失った時、私たちは習慣に従属することになる。すべては中枢神経と、その疲労具合に関係しているのだ。

 例を1つ挙げよう。右ウイングはボールが「弱い側」――彼と逆のサイドの大外にある時、内側のレーンを閉じる役目を担う。ところが、60分も経てば集中力が切れ始め、逆サイドにボールがある時、彼のポジションはまるでサイドバックのようになる。やがて相手のサイドバックに付いて行って、4バックの最終ラインに吸収されてしまう。この現象に対応するには、どのようにアンバランスが生じるかを知っておく必要があるだろう。

 ここでの教訓は簡単だ。60分も経てば疲れが溜まり、与えられた仕事ができなくなる。当然のことだ。しかし、その疲労は先に述べたように身体的なものだけではない。選手たちは無意識に、自分が最も得意とし複雑な判断を減らせる位置にポジショニングしてしまうものだ。それが習慣なのである。

 ゆえに、選手に新しい習慣を身につけさせるには、それが体の一部となるまで繰り返す必要がある。個々の選手の立ち返る場所と導く方向性を頭に入れながら考えてほしい。

相手ありきの「守備ブロック」

 「強さと弱さ。自らを知ることと相手を知ること。時間、スペース、タイミングを操ること」(ロベルト・モレーノ/前スペイン代表監督)

 プレスの開始地点の高低、最初のプレスに参加する選手の数、彼らの振る舞いは(原則的には)重要ではない。肝心なのは、それらの選手が1つのモデルに従って秩序のあるプレスをすることだ。そのモデルは、実行する選手たちの強度に合ったものでなくてはならない。あとは、相手の長所と短所を知ること。サッカーには相手が存在し、常に相手と対戦するスポーツであることを忘れてはいけない。プレーには2つの方向があり、プレーのスタンダードを相手を上回るレベルへと引き上げた者が勝つのだ。

 そのため、守備時のプランは原則と状況に基づいたものでなくてはならない。アイディアの中心には基本となる原則があるべきだ。その他のものは私たちが直面するチャレンジの種類に適合させていく。

 「守備原則とは、試合固有の状況で優位に立つために選手に与える解決方法である」(ホアンホ・ビラ/バーミンガム分析官)

 あのマルセロ・ビエルサの言葉も紹介しておこう。

 「それぞれ非常に異なるスタイルをチームに採用して成功したサッカーの監督を私は知らない」

一貫してマンツーマンを採用し続ける奇人ビエルサ

 つまり、自分が何をやっているかを知ることがカギである。何ができるか、何ができないかを事前に把握しておくこと。私たちが向上させたり深めることができるマエストロとしてのサッカーと、相手の策に立ち向かい無効化する研究対象としてのサッカーの両方を知っておくのだ。

 守備ラインの高さは、その要素の1つである。サッカーチームは守備のポジショニングを能動的あるいは受動的に適応させられる。能動的とはやや高位置の守備ブロック、高位置の守備ブロック、超高位置の守備ブロックを指し、いずれも相手がプレーを始める地点へプレスをかけることを目的としたものだ。「主導権を握り、敵陣でミスを誘い、プレーを高いインテンシティで支配する」という欲求に基づいている。

 一方、受動的とは守備ブロックの位置が低く、ライン間に通されるパスを予防すること、ボールを回復できる位置まで相手を誘い込むことを目的としている。この振る舞いは、攻撃時の素早いカウンターアタックとセットになっていることが多い。

 明確にしておきたいのは、こうした守備ブロックの位置はしばしば相手に決められてしまうということだ。相手のレベルが高ければ、何をもって高いレベルと言うかは議論の余地があるが、守備ブロックは後方へと押し下げられて高いプレスの効果が薄れ、守備システムに欠陥が見つかってしまうだろう。

 詳細は後に述べるが、この問題に対しては2つの解決法がある。1つは、非常に低い位置で守備ブロックを組むチームが多かったロシアW杯で、アイスランドやモロッコのような格下がアルゼンチンやスペインのような格上との対戦で披露し、大いに注目・議論された解決方法。もう1つは、スペインでヘタフェやエイバルがバルセロナのようなポジショナルな攻撃をするチーム(GKからボールを繋ぐチーム)に対して見せる、非常に高い位置で守備ブロックを組み、相手ゴールの付近でボールロストを誘発しようとする解決方法だ。時間、スペース、タイミング。この3つを操る者がサッカーを制する。難しいが、私たちは守備から始めていこう。

高位置の守備ブロック

 高位置・超高位置の守備ブロックについて説明をする前に、いくつかの考察を述べておく。すでにご存知かもしれないが、守備ブロックを前に置くほど各ライン間の距離は長くなってしまうのだ。だからこそ、戦略を選ぶ上で次の質問に答えなくてはならない。

● どこで優先的にボールポゼッションを回復したいのか?
● どのようにボールポゼッションを回復したいのか? その後は何をしたいのか?
● ピッチ上のすべてで1対1を作りたいのか? それとも1人余らせたいのか?
● フリーの選手を作るなら、どのライン、どのゾーンでカバーリングをさせたいのか?
● フリーの選手を選ぶなら、どのライン、どのゾーン、どのセクターで数的不利が起こるのか? プレスの最前線か? ボールとは逆サイドのSBが動くレーンか?
● どのように選手たちは振る舞うのか?最初は決められたゾーンに配置して、相手のアクションに従ってプレスをするのか? マンツーマンをするのか? チーム内でマンツーマンとゾーンを併用するのか? あるいは一人ひとりがマンツーマンとゾーンを使い分けるのか?

 これらを考慮しているだろうか。明白なのは、あなたが見る試合の一つひとつのアクションの背景には、プラン作成から実践までに膨大な量(と質)の仕事が隠れているのだ。物事は偶発的には起こらない。私たちはビエルサの言う「緊急メソッド」に頼ることもあるが、一般的なプランは常に主体となるアイディアに呼応していなければならないのだ。

 高位置・超高位置での守備ブロックには、能動的な守備という特徴がある。プレーを実感できる方法である。自ゴールから最も離れた場所で相手のミスを誘うアイディアを内在化するのだ。次の2つの状況で起こるのが一般的だろう。

● 相手のゴールキック。ほぼすべての相手選手が敵陣にいる。
● バックパスのような相手のアクションはファーストプレスの高さとインテンシティを引き上げる“起爆剤”となる。それに反応してポジションを上げていく。

 それぞれのケースで別々の考察が必要となる。ゴールキックの場合、守備組織はセットプレーの原則に基づいている。それは最初のキックでも、次の第2、第3のアクションでも、中位置の守備ブロックから連鎖的に起きたアクションであっても、原則が共有されていなければならない。

 一例として、上図のバルセロナのゴールキックに対してヘタフェが採用した非常に高い守備ブロックを見てみよう。マンツーマンを敷いていることがわかる。この守備ブロックでは、それぞれのラインが明確な役割を持っている。ロベルト・モレーノは言う。

 「前線のラインはプレスをかける。中盤のラインはパスの受け手の近くでボールを奪う準備をする。最終ラインはチームをコンパクトにする役割を担っている」

 これ以上、明解な説明はないだろう。高位置の守備ブロックでは垂直方面に各ラインの間隔が伸びてしまいやすい。この伸長には、オフサイドルールが決定的な影響を与えている。また、特にマンツーマンでマークする場合には、横方向にも間延びしてしまうことがある。

中位置の守備ブロック

 中位置の守備ブロックは最も多くのチームに使われている。基となっている考え方は次の通りだ。

 「ボールを回復するスペースが前方にあり、最終ラインの後方には、相手に侵入された時にも対応できるスペースの余裕がある。同時にチームはコンパクトになれるし、この配置ならプレス時に守備ブロックを前へ出すこと、維持すること、下げることもできる」

 このロベルト・モレーノの言葉に従うと、中位置の守備ブロックの定義はこの通りだ。ハーフウェイラインから最大で12m以内にファーストプレスのライン(1人あるいは複数人)があり、さらにブロックと呼ぶためにチームの最前線の選手と最後尾の選手(GKを除く)の距離が24~30m以内になくてはならない。そうなると最終ラインはゴールラインから35~40m前にあるということになる。

 一見すると簡単だろう。ただ、それは見た目だけの話だ。ロシアW杯でクロアチアが中位置の守備ブロックを敷いている上の動画を分析してほしい。もし可能ならシーンを巻き戻して、正確に状況を読み取りながら前へ前へとアルゼンチンを追い詰めて行ったクロアチアの守備のクオリティの高さを見せたいくらいだ。だが、ここで注目してほしいのは、GKのポジショニングとなる。

 私にもよくあることだが、プレーの重要な要素であり、ルール上でも不可欠な存在であるにもかかわらず、最終ラインの最高のオーガナイザーであるGKのことを、私たちは時に忘れてしまう。各守備ブロックにおいて、GKの仕事は多岐にわたっている。GKにしかできない手を使った仕事の他、脅威を見つけて直ちに味方に知らせるコーチングから、最終ラインのフリーマンとして裏へと相手が侵入してきた時のカバーリングまで、チームのダイナミズムに合わせた仕事が数多くあるのだ。

 だからこそ、先の動画をもう一度分析してみてほしい。GKのポジショニングについて思うことはあるだろうか? 正しいだろうか? それとも他のスペースにポジションを取るべきだろうか?

低位置の守備ブロック

 “守備的”なんていうのは単なるラベルに過ぎない。誰がそんなことを気にするだろうか? 私たちが現場に立つのは、より良いチームを作れるより良い監督になるためであり、チームのレベルを上げるためにリソースを最適化するためである。すべては勝利のためだ。この目的を忘れてはいけない。

 低位置の守備ブロックを使わなければならない状況もある。最初から適用しないといけない試合だってあるだろう。だからなんだというのか? どんなポジショニングであっても、私たちがしなければならないのは、パフォーマンスを向上させるためにすべてを事細かに準備することである。

 上動画のモロッコの守備ブロックが好例だが、ピッチの横幅を上手にコントロールできるよう、チームは配置されなければならない。低位置の守備ブロックの主な特徴の1つは、ライン間が非常に接近しており、結合してしまうことさえあるということだ。

 低位置の守備ブロックの中には、非常に低い守備ブロックがあることを強調しておきたい。そこでゴールは常に危険にさらされている。だからこそ、この守備ブロックには真のスペシャリストが必要だ。サイドからのセンタリングに対して、「下がる」のではなく「そのまま」守備をする。ただし、裏へ侵入されることはない。そんなスペースはないからだ。下動画のアイスランドの守備ブロックを見れば、一目瞭然だ。

守備ブロックの移行

 サッカーは不確実性に支配された複雑なスポーツだ。

 「1週間、普通はクローズドな状況を想定し、それに応えられるように選手たちと準備をするが、週末の試合になると選手はオープンな状況で答えを見出さなければならなくなる」(ファンマ・リージョ/マンチェスター・シティ アシスタントコーチ)

 興味深い考察だ。あなたはどのようにチームと準備するだろうか? 答えを与えるのか?それとも彼らに見つけさせようとするだろうか?いずれにしても、チームは様々な守備ブロックが使えるよう、適切な高さで位置につける準備がされていなければならない。これは両方向に起こり得る。高位置の守備ブロックのファーストプレスのラインを突破され、中位置の守備ブロックへ移行することも、超低位置の守備ブロックを最終ラインをより高くして、低位置や中位置の守備ブロックへ移行することもある。垂直方向へ守備ブロックを移行していくきっかけとなるアクションは、非常に重要な要素だ。相手のバックパスに対して、チームは最終ラインを上げなければならない。

 ただし上図のシーンでは、アランのバックパスを起点に上げた最終ラインの背後に、カジェホンが侵入してジョルジーニョのパスを受けようとしている。こうしてすれ違うように裏のスペースを突いてくる相手選手に注意しながら、最終ラインの調節をしなければならない。その他のアクションでも、後退するドリブル、トラップミス、体勢が悪い選手へのパスは、最終ラインを上げてチームを前進させるチャンスとなる。

 “上げる”やり方を覚えたところで、“下げる”やり方にも言及しておこう。ファーストプレスのラインを破るライン間へのパスが入った時や、大外のレーンを使われて体勢の良い選手の良いトラップによりラインを越えられそうになった時には、守備ブロックを下げてチームの再組織が必要となることを知っておいてほしい。

 2019年のCLラウンド16第1レグ、バルセロナ戦に備えリヨンは統計データを使ったという。彼らはバルセロナがサイドチェンジをされるたびに平均10m、守備ブロックを下げることに気がついたのだ。

 チームは、あらかじめ決めていたボールを奪うエリアを避けられて侵入されてしまった場合、相手の前進を妨げることはできない。相手をサイドに追い込んでボール奪取を狙ったのに、サイドチェンジを通されてしまった。サイドチェンジへの対応――特にマークの受け渡しを伴う場合は事前の対策の準備が非常に重要となる。プレスの方向をどちらにするか? プレスを突破された選手たちは何をすればいいか? サイドチェンジの場合、チームの守備ブロックは逆サイドの守備を強化するために対角へと移動しなければならない。その間に約10mの高さを失うことになる。新たなサイドへ最初に到達した守備者の仕事は何か? ライン間のスペースを閉じてチームに再組織の時間を与えることだ。

 ところが実際にその試合を分析してみると、バルセロナがサイドチェンジされるようなシーンは、カウンターアタックを除けばあまりなかった。とはいえ、ピッチ上で起こり得ることを予習しておくことは重要だ。あらゆるディティールが役に立つ。試合が終わった時に「想定外だった」なんて言うことはできないからだ。

2018-19シーズンのCLラウンド16で激突したリヨンとバルセロナ。2戦合計1-5で後者に軍配が上がっている

守備ブロックの分析フレーム

 この記事の狙いは正しい守備方法を教えることでも、私の守備のアイディアを披露することでもない。みなさんは自分にこう問いかけてほしい。日々の守備練習に役立つ知識は増えたか? 自分の考えを再確認したり、考え直したり、新しい発見がわずかでもあったか?

 もし自分のアイディアを整理したいなら、最後に行った試合での守備を次の方法で分析してほしい。

1. ゴールラインから最終ラインまでの距離(加えて、そこから派生した状況や振る舞い。例えば2 列目からの相手の裏を突く動きへの対応など)
2. 最前線の選手と最終ラインの間の距離(加えて、そこから派生した状況や振る
舞い)
3. 両サイドに最も開いている選手間の距離(横幅。加えて、そこから派生した状況や振る舞い。例えば相手のサイドチェンジへの対応など)
4. チームの守備ブロックは自らの意思によるものか、それとも相手のゲームプランに対応したものか?(得点状況や数的状況なども考慮して)
5. 能動的か? 受動的か?
6. ボールの周りで数的有利が作れていたか? 中盤の数的有利は? 最終ラインの数的有利は? マンツーマンはどうだったか?

 この分析が終わった時、新しい可能性を発見できていれば本望だ。

同業者へのアドバイス

 次の図はリーガが正式に定めている芝生の刈り方を示している。刈り取る間隔や方向には決まりがある。ということは、どのスタジアムでも同様に芝生のラインが引かれているということだ。

 想像してほしい。[4-3-3]で最終ラインの高さがゴールラインから40mの守備ブロックを敷きたい場合、芝生のラインを数えた方が簡単ではないだろうか? リーガのように6.1mあるいは12.2mを目安にして芝生を刈れば、選手を配置する距離もより正確になるのではないか?

 こうしたディテール――すべてのリーグではないものの、CLなど大きなコンペティションには同じルールがある――を知っていると、私たちは曖昧なスケールを持ち込むことなく、素早く直接的にチームが練習通りのポジションを取れているか、チームがコンパクトさを保つために再調整する必要があるかわかる。高位置の守備ブロックなのか、中位置の守備ブロックなのか、間延びした守備ブロックなのか。ぜひ試してほしい。

「生きた時間」を過ごせたか

 この記事全体において、様々な考察や答えのない質問を散りばめた。それによって、守備時の動き、特に知っておくべき最終ラインの高さについて、自ら考えてもらい理解が進めば幸いだ。

 もし「適当に配置して結果を見てみよう」という行き当たりばったりの守備を避けたいのであれば、どこにチームを配置するか、どのゾーンで誰に対してファーストプレスをかけるか、相手にラインを突破された時にはどう振る舞うか、どう個の特徴と力量を把握した上でブロックの移行を行うのか、緻密に練られたプランを遂行しなければならない。

 私が書いて得た満足感を、みなさんも読んで感じられたのなら幸いだ。この時間がみなさんにとって生きた時間であったことを望む。

Rubén SELLÉS
ルベン・セジェス

1983年生まれ。UEFAプロライセンスを保有し、12年間にわたり欧州のプロサッカー界でキャリアを積んできたスペイン人指導者。ギリシャ、ノルウェー、ロシアで指導した後、デンマークの古豪ストレームスゴトセトで分析官、アゼルバイジャンの名門カラバフでアシスタントコーチとして、両クラブの躍進に貢献。後者では17-18シーズンにアゼルバイジャン史上初となるCL本戦出場を果たした。20年はバレンシアのU-18チームを指揮。21年からコペンハーゲンのアシスタントコーチに就任している。

Text: Rubén Sellés
Translation: Hirotsugu Kimura
Photos: Getty Images

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JUEGO

シンクタンクとして韓国、さらにアジアのサッカー談論を発展させる集団。ピッチ内の指導者談論とピッチ外のスポーツ産業談論を深めるべく世界各地を飛び回っている。その一環としてジャーナルを発行するメディア活動をもとに、サッカー外の関係者をアジアサッカーに招き入れ、新たなスタンダードの確立を目指す。「Juego de posición」が意味するように、一つひとつの障害を乗り越えて究極的な目標を成し遂げるために努力している。

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