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クラブ分断の火種を残して…“リーベルプレート史上最高の監督”ガジャルド辞任

2026.03.04

EL GRITO SAGRADO ~聖なる叫び~ #26

マラドーナに憧れ、ブエノスアイレスに住んで35年。現地でしか知り得ない情報を発信し続けてきたChizuru de Garciaが、ここでは極私的な視点で今伝えたい話題を深掘り。アルゼンチン、ウルグアイをはじめ南米サッカーの原始的な魅力、情熱の根源に迫る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第26回(通算185回)は226日に最愛のクラブを去った名将マルセロ・ガジャルド(50歳)の辞任劇について。20146202212月に続く2度目のリーベルプレート指揮は、なぜ短命に終わったのか。

「目標を達成できなかった悔しさと悲しみで胸がいっぱいです」

 「今週の木曜日が私の最後の試合になることをお伝えしなければなりません。こみ上げてくる感情と痛みに飲み込まれてしまわないように、手短に話そうと思います」

 去る2月23日の夜9時過ぎ、リーベルプレートの公式SNSアカウントを通じて、マルセロ・ガジャルドは動画メッセージで監督を辞任する決意を明らかにした。苦渋の決断を告げるその表情は決して穏やかなものではなく、滲み出る悔しさと無念さが画面越しに痛いほど伝わってくる。

 リーベルの監督として2014年から8年間に14ものタイトルを勝ち取ったガジャルドは、クラブ史上最高の指揮官として崇められ、2022年に惜しまれながら退任。2023年5月にはホームスタジアムにリベルタドーレス杯を掲げる姿を象(かたど)った高さ8メートルの銅像が建てられた。

 サポーターから崇拝される彼が古巣に戻ってきたのは、今から1年半前のこと。後任のマルティン・デミチェリス(現マジョルカ監督)が15カ月間に3つのタイトルをもたらし、勝率59.3%という戦績を残しながら、ピッチ外の問題からサポーター及び一部の選手の信頼を得られず解雇された後、クラブを愛する大勢の人々にとって望まれる形での「待望」の帰還だった。

 だが、大きな期待を背負って挑んだ彼のリーベルでの2期目は、デミチェリスの実績にも及ばない結果に甘んじたまま幕を閉じることとなった。

 86試合を指揮して戦績は36勝32分18敗、勝率41.86%。特に昨年からの失速ぶりはサポーターを深く失望させ、直近の20試合では13敗を記録。かつての圧倒的な強度と安定感は影を潜め、重要な局面で勝てないチームへと変貌し、理想と現実の差が次第に広がっていく中、ガジャルドの様子にも変化が表れ始めた。以前のような自信に満ちあふれた勝者の面影は薄れ、まるですべてを諦めたかのような、どこか虚ろで疲労の色を滲ませた表情を見せるようになっていったのである。

2月26日のエスタディオ・モヌメンタルで最後のピッチに向かう“エル・ムニェコ”(ガジャルドの愛称で人形の意)

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Profile

Chizuru de Garcia

1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。

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