国立の敗戦から1週間で迎えたホーム・名古屋グランパス戦の苦闘。柏レイソルが執念で手繰り寄せた白星の価値
太陽黄焔章 第30回
タイトル獲得を期して挑んだルヴァンカップ決勝での完敗が、柏レイソルの選手たちにダメージを与えたことは想像に難くない。だが、彼らは逞しく立ち上がる。J1リーグ第36節。ホーム・日立台で名古屋グランパスと対峙した一戦は、苦しみながらも1-0で辛勝。粘り強く勝点3を積み上げた。国立での悔しい敗戦から1週間。この期間でチームは何を考え、何に注力したのか。選手たちの言葉を交えて、鈴木潤が多角的に振り返る。
ルヴァンカップ決勝で突き付けられた力不足
11月1日のYBCルヴァンカップ決勝。柏レイソルはサンフレッチェ広島に1−3で敗れた。二つのロングスローを含むセットプレーからの3失点と、広島のマンマークディフェンスに苦しめられ、完敗の試合内容だった。
そしてその翌週、名古屋グランパス戦に向けたトレーニング終了後、小島亨介はこんな言葉を発した。
「今までもその試合で出た課題を克服しながら、次の試合に向けて修正して、勝利を手繰り寄せてきたチームです」
広島の試合巧者ぶり、したたかさ、勝負強さ。柏は完全に屈した。あらゆる部分で対戦相手を上回ることができなければタイトルには手が届かない。ルヴァンカップの決勝戦は、間違いなくその部分での力不足を突きつけられた。
逃したものは大きい。しかしまだ柏には大きな目標が残されている。リーグ戦では、首位・鹿島アントラーズとの勝点差は1。まだACLエリート出場権獲得と逆転でのリーグ優勝の可能性が残されている。小島が言うとおり、残り少なくなったリーグ戦の3試合で柏に求められるのは、ルヴァンカップ決勝で浮かび上がった課題を克服し、勝利を手繰り寄せられるか。それに尽きる。

第36節・名古屋グランパス戦の苦闘から見えてきた光明
11月8日、第36節・名古屋グランパス戦でも苦しい展開を強いられた。
名古屋は広島と同じ[3-4-2-1]システム。守備の仕方も広島同様、前からつかみにくるマンマークディフェンスである。柏が相手のプレッシャーを剥がして前進できた場面もあったが、連勝を収めたリーグ戦の直近2試合、敵地ながら5-0で大勝した第34節・ガンバ大阪戦、ボール保持率70%超えを記録した第35節・横浜FC戦に比べれば、柏らしい局面の崩しは少なかった。
それでも柏は、広島戦で得た教訓を活かそうとしていた。それは広島と同じ名古屋のマンツーマンディフェンスをどう攻略するかである。
そのカギとなったのが、柏移籍後初スタメンの小西雄大の起用だった。
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Profile
鈴木 潤
2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。
