「やることがすごく明確になった」関根大輝のランス再出発と、気になる中村敬斗の行方
Allez!ランスのライオン軍団 #17
リーグ2(フランス2部)を舞台に戦うこととなったスタッド・ランスの2025-26シーズンは、8月11日に幕を開けた。関根大輝の23歳のバースデー当日に行われたこの日の試合はアミアンと2-2で引き分け、残念ながら勝利で祝うことはできなかったが、16日の第2節は本拠地スタッド・オーギュスト・ドゥローヌでギャンガンを相手に1-0。ホーム初戦で幸先のいい初白星を手に入れた。
2戦連続フル出場、“偽SB”としての手ごたえ
決勝ゴールの起点となったのは関根。相手のパスをインターセプトし、 ゴールに向かってドリブルで突進しながらMFテディ・テウマにボールを受け渡すと、テウマが出した斜めのパスを下部組織出身のマリ人ウインガー、ティエモコ・ディアラが頭で押し込んだ。
「本当はあのまま自分で持ち上がりたかったんですけど、でもまあ得点になって、コーチにも『グッジョブ!』って言ってもらえたんで、良かったです(笑)」
開幕から2戦続けての先発フル出場を終えて、試合後の関根からも充実した笑みがこぼれた。
2025年1月に入団した関根にとっては、これがスタッド・ランスで迎える最初のシーズン開幕だ。試合開始直後のクロスや、ゴール直前のシーンではMFパトリック・ザビとのワンツーでチャンスを作るなど、序盤から攻撃面でも存在感を発揮した右SBについては現地記者たちも高評価で、試合後に取材エリアに降りて行ったら、「今日のセキネは良かった」「力強いプレーだったな」とみんなが彼の話をしていた。
自陣でボールを持った時には“偽SB”的な仕事も効いている。
「監督がそういう(偽SBを採用する)スタイルで、サイドバックは『どんどん内に入ってくれ』って言われて。セルジオ(左SBのセルヒオ・アキエメ)も入るんですけど、どちらかと言えば僕が入る方の役割で、後ろを3バックにしてモリー(守備的MFのグバネ)と自分が2ボランチになる、みたいな形が多い。練習でもやっていて、今のところ感触はいいですし、前節はあまりボールに関わることができなかったけど、ポジショニングなどを映像も見て振り返ったことで今日の前半は特に良かったので、そこは手ごたえを感じました」
プレーエリアが360度になることで、純粋なSBに比べてパスワークや視界も違ってくるこの役割は難易度も上がるが、カレル・ゲラーツ監督は「我われにはセキネというなかなか頭のいい選手がいるからね」と彼の戦術理解度を評価。「持ち味が違うアキエメが逆サイドにいることで、相手によってバリエーションのあるゲームが展開できる」と手ごたえを滲ませた。
開幕戦でCBのジョゼフ・オクムが左膝を負傷し、数カ月間の離脱となってしまった。ゆえにギャンガン戦では、関根と右SBを争う立場にあったアブドゥル・コネがセンターを務めた。移籍市場がクローズするまでに新たな人材を獲得する可能性もあるが、右SBについては関根がレギュラーの座を確保できていると言えそうだ。



2部でも「1年を通して存在感を放てれば絶対に…」
関根も、そんなゲラーツ監督の下でのプレーについて、「このサッカーはやってて楽しい」と言葉を弾ませた。
「充実感がある。去年はけっこう苦しいサッカー……もちろん(リーグ2へと)舞台が変わったというのもありますけど、自分の成長に繋がるようなサッカーができていると思います。代表とはちょっとタスクが違いますし、そこは代表でのプレーから少し離れてるかなっていうのは感じますけど、でも必ず自分の身になってますし、そういう意味ではとにかく結果を残すことが大事。今日も点を取れるチャンスはあったんですけど、 ああいうシーンをどんどん作れるのが今年の良さだと思うので」
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Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。
