水戸、磐田を破って天皇杯3回戦進出も…なぜJ3で低迷?「大事に行きすぎる」SC相模原が陥った悪循環の正体

相模原の流儀#17
2023シーズンにクラブ創設者の望月重良氏から株式会社ディー・エヌ・エーが運営を引き継ぎ、元日本代表MFで人気解説者の戸田和幸を指揮官に迎えたSC相模原。新たに築き上げた“エナジーフットボール”の礎を2024年6月より引き継ぐシュタルフ悠紀監督の下でJ2復帰を目指す中、“緑の軍団”が貫く流儀に2021年から番記者を務める舞野隼大氏が迫っていく。
第17回では、天皇杯でJ2の水戸ホーリーホック、ジュビロ磐田を撃破して3回戦へと駒を進める一方、リーグ戦では低迷から抜け出せていない理由を探る。
J3リーグも2025シーズンの折り返しを迎えようとしている。開幕前、優勝を掲げたSC相模原は第17節を終えた時点で3勝8分6敗と18位。“底”につきそうな位置にいた。
引き分けの数はリーグワーストタイ。黒星もすべて多くて2点差以内と大敗はない。天皇杯に目を向けると、1回戦ではJ2で8連勝中の首位・水戸ホーリーホックを1-0で撃破。2回戦では、ジュビロ磐田に2-1で逆転勝利を挙げている。
「ジュビロ戦の内容は良かったとは思わない。むしろ(中2日で迎えた)高知(ユナイテッドSC)戦(0-0)の方が、自分たちのサッカーができていた」(シュタルフ悠紀監督)
ではなぜ、同カテゴリーの相手には勝ち星をなかなか挙げられずにいるのか。
シュタルフ監督は「ジュビロ戦は相手を押し込んで、ロングスローから後半のアディショナルタイムに決勝点を取れました。高知戦では、最後の時間帯でも強引にボックス内にボールを入れる迫力が足りなかったかもしれない。フットボールの内容というよりも、メンタル面の差だと感じています」と端的に違いを語る。
「勝てていないチームによくあることですけど、ミスを恐れて『大事に行きすぎる』。これは日本の特有のメンタリティだとも思っています。今は、僕らが掲げていた目標から逆算すると、現状はかなり足りていない。それが“足かせ”になっているという、悪循環に陥っている。でも、こういう時こそ、選手にもっと自信を持たせて、ミスを恐れずのびのびやることが大切だと思います」
誤解を恐れずに言えば、天皇杯は“失うものがない”。“挑戦者”としての思い切りの良さがあった。しかし命題に掲げられているリーグ戦では勢いは影を潜めてしまい、「シュートを打つ前や、ラストパスを出す場面で安パイを選ぶ選手が増えてきている印象がある」と指揮官は語る。
だからこそ、「僕らはチャレンジャーなんだから、そこはもう一度意識して、チャレンジする判断を選ばないといけない」と選手に唱え続けている。
「決めるにはメンタルが重要」武藤がたどり着いた答え
その高知戦では、63分にDFライン発進でスムーズにボールを前へ運び、加藤拓己にフィニッシュを託したシーンがあった。
しかし加藤拓はゴール右上を狙ったシュートを外してしまい、このミスも尾を引いて勝ち点3には繋がらなかった。スコアレスドローに終わったのは彼だけの責任ではないが、試合後には心ない言葉もSNSを通じて投げかけられたようだ。
ミスをすれば小さくない非難を浴びる。プロならば当たり前のことかもしれないが、もしも選手の脳裏に焼きついてしまえば、プレーは萎縮しかねない。
「これは僕に対しても言ってることですけど、大事なのはシュートを打ち続けること。シュートを外して落ち込んで、打てなくなるのが一番良くない」
そうストライカー論を話すのは長くJ1で戦い続けてきた武藤雄樹だ。
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Profile
舞野 隼大
1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年からは神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当している。(株)ウニベルサーレ所属。