J3優勝を掲げながら16位に低迷も…良薬は口に苦し?「誤解しないでもらいたい」SC相模原の裏側

相模原の流儀#15
2023シーズンにクラブ創設者の望月重良氏から株式会社ディー・エヌ・エーが運営を引き継ぎ、元日本代表MFで人気解説者の戸田和幸を指揮官に迎えたSC相模原。新たに築き上げた“エナジーフットボール”の礎を2024年6月より引き継ぐシュタルフ悠紀監督の下でJ2復帰を目指す中、“緑の軍団”が貫く流儀に2021年から番記者を務める舞野隼大氏が迫っていく。
第15回では、J3優勝を掲げながらも16位に低迷している2025シーズンの序盤戦を振り返りながら、「僕たちが勝利を目指していないとか、優勝を諦めて、戦う気持ちがないということだけは(サガミスタの方に)誤解しないでもらいたい」(加藤拓己)と巻き返しに燃えるチームの裏側を、監督・選手の証言とともに伝える。
J3優勝を成し遂げ、J2へ昇格する──。そう高らかに宣言した2025シーズンだが、第10節を終えたSC相模原の順位は16位。2勝4分4敗と思うような成績を残せていない。昨季途中に就いたシュタルフ悠紀リヒャルト監督の下、それまでは時間がなく“マイナーチェンジ”を繰り返し、着手できていなかった“土台作り”にも、今オフはトライしてきた。
「『走る、戦う、助け合う』という根本的な志のベースを大切にしつつも、フットボール面では『繋がり、切り替え、対人』にフォーカスを置いています。攻守両面でよりスピーディーに切り替える。アグレッシブに対人を戦う。攻撃時に1対1で果敢に仕掛けていくような躍動感も大事な要素だし、それがエナジーとして観客に伝わってくれればいいなと思います。ただし、それらが単発になるのではなくて、しっかりとした仕組みの中で、周りのサポートがある中で、攻守に繋がりを感じてもらえるようなフットボールを磨き上げていきたい」(シュタルフ監督)
選手層もリーグ屈指の陣容がそろえられた。すでに上のカテゴリーでも通用する実力を秘めた常田克人や高井和馬、中塩大貴らが加入。シュタルフ監督と平野孝スポーツダイレクターがヨーロッパへ直接足を運び、その目でプレーを見て交渉したドミニカ共和国代表歴を持つGKノアム・バウマン、ドイツ人DFケヴィン・ピトリック、ブラジルFWラファエル・フルタード、そしてオランダ1部を知るフランス人MFロビン・モゥローンの4人も、新たにその一員となった。
期待が高まる中、開幕戦は栃木シティとのアウェイゲームだった。18戦負けなしでJFL優勝を成し遂げて待望のJリーグ初陣を迎えた昇格組の勢いにも押され、相模原は髙木彰人のゴールで先制こそしたものの、スローインとFKのセットプレーからそれぞれ失点を許して1-2で敗戦。続く第2節の栃木SCではホーム初戦の後押しも受けながら1-0で初勝利を収め、翌々節は敵地でヴァンラーレ八戸を1-2を下したが、以降は白星が遠のいてしまっている。
「世界一拮抗したリーグ」で落としてはいけない“本当の結果”
加入2年目で左ウイングバックの高野遼、新戦力で右ウイングバックの河野諒祐による正確なキックはチームの大きな武器であり、得点源にもなっている。一方で誤算だったのは、モゥローンの退団だ。中盤の核になり得る存在として迎えられ、中央突破・攻略の鍵を担うはずだったが、メンタル面でのコンディションが思わしくなく、キャンプ後から全体練習に合流できずにいた。自身にとって初めてヨーロッパを飛び出してのチャレンジになったが、公式戦の舞台に立つことなく3月という早いタイミングで帰国をすることになった。
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Profile
舞野 隼大
1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年からは神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当している。(株)ウニベルサーレ所属。