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まさかの開幕4戦未勝利。14年ぶりのJ2を戦うサガン鳥栖が迷い込んでしまった不振の袋小路

2025.03.11

プロビンチャの息吹~サガンリポート~ 第13回

いきなり突きつけられたのは開幕3連敗。第4節のいわきFC戦で何とか引き分け、ようやく勝点1は獲得したものの、「J2を優勝してJ1に復帰する」という目標を掲げるサガン鳥栖としては、受け入れがたいシーズンスタートとなってしまった。小菊昭雄監督を新指揮官に迎え、新たな戦い方で魔境J2へと挑んでいるチームに見え隠れする現状の課題を、杉山文宣が分析する。

開幕前に浮かび上がった「守備の安定」と「得点力という課題」

 サガン鳥栖が苦境に喘いでいる。14年ぶりにJ2の舞台を戦う鳥栖だが、小菊昭雄新監督を迎えて「J2を優勝してJ1に復帰する」という目標を掲げて今季に臨んでいる。しかし、開幕から3連敗を喫し、4試合を終えて挙げた勝点はわずかに1。いまの鳥栖に何が起こっているのか。不振の原因はどこにあるのか。開幕からの戦いを振り返り、探っていく。

 始動以来、開幕までの期間で行われた練習試合は5試合。そのうち、最後の3試合はすべて非公開で行われたが、小菊監督や選手たちの言葉から探っていくと、守備の安定という成果とともに得点力という課題が浮かび上がってきた。

 「私はハードワーク、守備のところは徹底して求めます。選手たちとも共有しましたが、攻撃で違いを作れる選手であっても、ハードワークができない選手は試合には使わない」

 小菊監督は選手起用において自らの信念を強調した。さらに「[4-4-2]が守備の基本」とも話し、始動からまずは自らの守備理念をチームに落とし込んでいった。そのチームビルディングは上々だった。プロになるような選手たちであれば、最も慣れ親しんだシステムであろう[4-4-2]ということもあり、選手たちの理解もスムーズだった。チームは早い段階で均整の取れた[4-4-2]から高い強度の守備を展開できるようになった。

 一方で課題は攻撃面だった。チームは水物と言える攻撃からではなく、組織として確実に上積みしていける守備からチーム作りを進めていった。どのチームもそう選択するであろう形でチームビルディングを進めていったが、極めてオーソドックスなチームスタイルは守備の安定と裏腹に、攻撃においては対峙する相手に意外性や驚きを与えるクオリティにまでは達せず。こうなるとクロスの質やフィニッシュの質といった個人の質が、得点のためには最も問われることになる。

 しかし、J2降格の影響や債務超過解消がマストといったチーム事情も影響し、昨季14得点を挙げたマルセロ・ヒアンを筆頭に、J1でも個の質を見せた選手たちをキープすることができなかった。どうやって点を奪っていくのか。その課題について確かな光明を見いだせないまま、開幕を迎えることになった。

ハイラインとビルドアップに不安を覗かせた開幕節・ベガルタ仙台戦

 一抹の不安を抱えたまま、開幕戦を迎えることになった鳥栖だが、開幕戦ではその不安がいきなり顕在化することになってしまった。ベガルタ仙台とのマッチアップは互いに[4-4-2]をベースに選手個々のハードワークを持ち味としていたこともあり、立ち上がりから堅い展開で試合は進んでいったが、71分、中盤でのセカンドボール争いで後手を踏んだところを起因に、クロスから郷家友太に得点を許してしまう。結局、これが決勝点となり、開幕戦は得点を奪うことができずに零封負けとなった。

 内容自体は拮抗しており、悲観すべきものではなかった。ただ、ハイプレスという武器を生かすためのハイライン。そして、もう一つの武器として平行して取り組んできたビルドアップ。その2つについてはやや不安を覗かせる面もあった。……

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Profile

杉山 文宣

福岡県生まれ。大学卒業後、フリーランスとしての活動を開始。2008年からサッカー専門新聞『EL GOLAZO』でジェフ千葉、ジュビロ磐田、栃木SC、横浜FC、アビスパ福岡の担当を歴任し、現在はサガン鳥栖とV・ファーレン長崎を担当。Jリーグを中心に取材活動を行っている。

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