
EL GRITO SAGRADO ~聖なる叫び~ #13
マラドーナに憧れ、ブエノスアイレスに住んで35年。現地でしか知り得ない情報を発信し続けてきたChizuru de Garciaが、ここでは極私的な視点で今伝えたい話題を深掘り。アルゼンチン、ウルグアイをはじめ南米サッカーの原始的な魅力、情熱の根源に迫る。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第13回(通算172回)は、あのフリオ・グロンドーナとまったく同じやり方で権力基盤を固め、このほど3選を果たしたAFA(アルゼンチンサッカー協会)会長、クラウディオ・タピア(57歳)について。
独裁会長の“負の遺産”が今ここに
アルゼンチン1部リーグのフォーマットが毎シーズン変化することにはすっかり慣れてしまった私だが、去る1月23日に開幕したトルネオ・アペルトゥーラ(リーグ戦前期)の日程を見た時にはあらためて驚かされた。なんと、参加チーム数がまた30チームに戻ってしまったからだ。
1部リーグに30チームを参加させるアイディアは、1979年から2014年に急死するまでAFA(アルゼンチンサッカー協会)会長の座にとどまり続けたフリオ・グロンドーナが残した“負の遺産”だった。下部リーグを戦う地方のクラブに1部リーグ参戦の機会を与え、「リーグ戦にさらなる連邦制を」という聞こえの良いスローガンを表に掲げつつ、裏に秘められた実際の目的は国内の支持拡大と地方政治との同盟強化という利己的なもので、2015年2月、2部リーグから一気に10チームが昇格してスタートし、3期にわたって開催された。
最初は30チームによる総当たり方式で行われたが、のちに2つのグループに分けられてそれぞれがリーグ戦を行う形に変更。さらに各チームが1試合のみ他グループの“宿敵”とクラシコを戦うという仕組みは公平性に欠ける上、試合数の増加がプレー内容だけでなくリーグそのものの質を低下させることが懸念され、様々な議論を巻き起こした。……



Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。