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キャリア絶頂期でパリSGを選んだクバラツヘリア。クラブ歴代4位の高額FWは新たな救世主になれるか

2025.01.19

おいしいフランスフット #12

1992年に渡欧し、パリを拠点にして25年余り。現地で取材を続けてきた小川由紀子が、多民族・多文化が融合するフランスらしい、その味わい豊かなサッカーの風景を綴る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第12回(通算170回)は、現在セリエA首位のナポリを離れ、パリ行きを決めた23歳のジョージア人ウインガーについて。

移籍金7000万ユーロでムバッペの「7」を継承

 数日前から噂になっていた、ジョージア代表FWクビチャ・クバラツヘリアのパリ・サンジェルマン(PSG)入団が、1月17日に正式発表された。

 生まれ故郷トビリシの名門クラブ、ディナモ・トビリシで2017年に16歳でプロデビューした後、ロシアのロコモティフ・モスクワ、ルビン・カザンなどを経て、2022年夏にセリエAのナポリに加入。そこで初年度にして12得点13アシストと活躍し、ナポリの33年ぶりとなるリーグ優勝に大きく貢献した。そして、この年のセリエA年間MVPにも選出。

 昨年はジョージア代表の主戦力として母国をEURO初出場に導くと、グループステージ最終節のポルトガル戦では開始2分に先制点を挙げ、ラウンド16進出を決める貴重な勝利をもぎ取っている。

 というキャリアを聞くと、すでに20代中盤の中堅選手かな、と思うが、2001年2月12日生まれの23歳とまだまだ若い。欧州5大リーグの舞台に立つジョージア人選手はまだ少なく、PSGにとってもクラブ史上初の同国出身選手だ。

 契約期間は2029年までで、移籍金は7000万ユーロ(約112億円)だと言われている。背番号は、昨夏レアル・マドリーに旅立ったキリアン・ムバッペがつけていた「7」を継承することになった。

 “クバラ”の主戦場は左ウイング。ドリブル突破を武器とし、右足から放つシュートもパワフルだ。そのドリブルにはスピードだけでなくパワーもあるから、少々のコンタクトではまったく軌道が乱れない。相手DFが距離を詰めてくるプレッシングの激しいリーグ1で、大いに力を発揮できそうなプレースタイルを持っている。

 今季ここまでのPSGは、チャンスは作れるが決定力に乏しい。ゆえにセンターフォワードを補充したいという思惑は常に抱えているのだが、チャンスを作れて自分でも決められるムバッペのような素質を持つクバラを獲ったということは、背番号だけでなく役割としても前任者のそれを引き継いでもらうつもりなのだろう。

 これまで左ウイングはブラッドリー・バルコラの持ち場だった。リーグ第18節終了時点で11得点はチーム最多だが、ここ7試合では1得点と序盤戦に比べて試合に与えるインパクトが落ち気味だ。メンタル的にも、どうも「ノッてない」印象を受ける。

 シーズン途中の加入でフィットネス状態には問題ないから、クバラがリーグ1のスタイルにすんなり順応するようなら、バルコラのポジションは奪われることになるかもしれない。

得か損か?パリを彩った高価なスターたち

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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