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“気にしい”で負けず嫌いの野菜を育てるストライカー。アルビレックス新潟・谷口海斗が達成した日本人初の「J1、J2、J3、全カテゴリーでの2ケタ得点」

2024.09.27

大白鳥のロンド 第15回

もともとの主戦場はボランチやCBであり、本格的にFWへと取り組んだのは大学2年生から。卒業後は当時J3だったグルージャ盛岡でプロサッカー選手にこそなったものの、並行してホテルでアルバイトに勤しんでいた。そんな男はゴールを積み上げることで、自身の立ち位置を着実に変えていく。J3とJ2に続き、とうとうJ1でも成し遂げたリーグ戦の2ケタゴール。その価値の大きさを野本桂子があらためて多角的に振り返る。

J1初の2ケタ得点。笑いに包まれたミックスゾーン

 谷口海斗が、J1でついに10点目を刻んだ。

 2024年9月14日、明治安田J1リーグ第30節・湘南ベルマーレ戦。[4−2−3−1]の左サイドハーフとして先発すると、2-0で迎えた75分。稲村隼翔のスルーパスを受けてエリア内へ運び、右足でグラウンダーのシュートを、ニアサイドに流し込んだ。

 しかし谷口自身、ピッチ上での喜びは薄めだった。

 「正直、オフサイドかなと思ったので、リラックスして振り抜けたのがよかったんだと思います。VARが入ってゴールになったので、『ゴールなんだ』っていう感じだったっすね」

 J1で初の2ケタ得点であり、この日の勝利を決定づけた3点目であり、7日に29歳の誕生日を迎えてから初めてのゴール。メディア陣はいろんな喜びのコメントを想像しながら囲んだものの、明かされた事実に、笑いが起こるミックスゾーン。正直で飾らない、谷口の人柄のよさが現れていた。

 あらためて、自身初の2ケタ得点について尋ねると、「僕自身、2ケタに行ったことは本当に光栄なことだと思います。まだまだ試合もありますし、チームの勝利につなげるゴールということは常に言い続けているので、そこを1つ1つやっていければいいのかなと思います」と、淡々とコメントした。

スクランブルの左サイドハーフ起用で見えてきた新境地

 岐阜経済大を卒業した2018年、J3グルージャ盛岡でキャリアをスタートすると、その年に15得点。2020年にはJ3ロアッソ熊本で18得点を挙げ、J3得点王となった。2021年、J2だったアルビレックス新潟へ加入すると13得点。そして今季、J1昇格2年目の新潟で10点目を刻んだ。Jの3カテゴリーすべてで2ケタ得点を記録した選手は、日本人では初となった。

 松橋力蔵監督は「彼もずっと順調なわけではなかったですし、ポジションを変えてから、彼の良さが少し出始めたなというところもあります。とはいえ、昨年もトップ(CF)としても結果は出していますし、プレーの幅をどんどん広げながら、安定的になってきているところがあり、それが結果に繋がっているような気がします」とコメントしている。

 「ポジションを変えてから、彼の良さが少し出始めた」。それは、5月15日のJ1第14節・横浜F・マリノス戦。折しもチームにはケガ人が続出し、ベンチをぎりぎり満たせる人数で戦わなくてはいけない時期だった。この日、右サイドハーフとして先発した長谷川巧が、開始19分で負傷。ベンチには谷口を除き、中盤から後ろの選手しかいなかった。松橋監督は、左サイドハーフでプレーしていた小見洋太を右へ移し、空いた左へ、谷口を投入した。

……

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Profile

野本 桂子

新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。24年4月からクラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。

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