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生き残れるクラブとは? クロース代理人が語るコロナ禍の移籍市場(後編)

2020.10.15

 新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響で、2020年夏の移籍市場は変則的な日程になってしまった。最終的に、ブンデスリーガ全体の2020-21シーズン夏の支払額は3億1620万ユーロと、前年の9億4375万ユーロから約3分の1に縮小している。

 前回は9月16日の『シュポルトビルト』の中で、ドイツ代表のトニ・クロースやルカ・バルトシュミットらの代理人を務めるフォルカー・シュトゥルートによる将来的な移籍市場の見立てを紹介した。今回は、代理人の目線から見て、今後やってくるであろう不況の中でも生き残れるクラブを見ていこう。

フェアな給与の支払いを

 シュトゥルートが代理人として気になっているのは、ブンデスリーガの中に一度契約した選手の給与を是正しないクラブがあることだ。

 「これは個別のクラブよって異なる」と前置きした上で、シュトゥルートは次のように説明する。

 「例えば月3万ユーロの給与を受け取っている選手に対して1200万ユーロの移籍金でオファーが来た場合、クラブがその選手の給与を適切な額に是正することなくオファーを拒否するなんてことはあってはならないことだ」

 そのうえで、リーグ全体で選手と給与と移籍金の割合などのルールが共有されることを望んでいるという。

 こういった目先の利益を追求するクラブは、代理人たちにもマークされ、認知されているようだ。これらのクラブは移籍先の優先順位の下位に置かれ、優秀な選手の獲得競争に遅れを取ることになるだろう。

迅速な意思決定が必須

 また、熱心なケルンファンでもあるシュトゥルートは、時折ケルンの役員選挙に出馬するよう声を掛けられることもあるという。しかし、トラディショナルクラブの1つであるケルンで仕事をするつもりはないという。

 「ケルンというクラブのロマンティシズムや規約、あり方は、私の考えるブンデスリーガクラブの経営方針とはそぐわない。クラブ内では意思決定のプロセスは短く、素早い必要があると確信している。ものごとを決めたがる専門外のたくさんの人々が口を出すことなくね」とクラブの構造に言及した。

 さらに「将来的には、投資家たちにオープンなクラブだけがチャンスをつかむだろう。このコロナ禍の危機の中、その必要性はますます大きくなっている」と語り、投資家の持ち株を制限する”50+1ルール”との整合性を調整しながら、外部からの投資を積極的に受け入れる姿勢が必要だとしている。

移籍市場に対応できるか

 RBグループのプロジェクトを退いたラルフ・ラングニックとまったくの同意見を持つシュトゥルートは、ケルンをはじめとするトラディショナルクラブに対して警告する。

 「マネージャーのホルスト・ヘルトやアレクサンダー・ベーレの影に隠れて権力闘争ごっこをやっている連中がいる。だが、そんなことはやめなければならない。そうでなければ、10年後には7部リーグのチームと親善試合ではなく、地域リーグ戦を戦うことになるだろう」

 選手の契約期間が短くなり、移籍市場も流動的になる可能性が高い。選手獲得やチーム構想の構築も、よりスピードが求められるようになる。もはや専門外の多数のステークホルダーが、クラブ内で自身のプレゼンスを高めるために口を挟み合うような時間は残されていない。

 ブンデスリーガのプロクラブとして生き残るためには、意思決定プロセスの参加者を厳選し、組織内の調整コストを最適化することが求められているのだ。


Photo: Getty Images

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ケルンラルフ・ラングニック移籍

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。