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CL4強に1チームも進めず。スペイン流のサッカーは限界を迎えたのか

2020.08.17

 UEFAチャンピオンズリーグでレアル・マドリーがマンチェスター・シティに、アトレティコ・マドリーがRBライプツィヒに、バルセロナがバイエルンに敗れ、スペインである議論が起きている。

 「スペイン勢は、欧州の流れに取り残されていこうとしているのか」

リズムの遅いサッカーは時代遅れ?

 CLの準決勝にスペイン勢が1チームも進めなかったのは、2006-07シーズン以来である。もっとも、負けた側から出てくるこの種の議論は感情的になり過ぎ、結論を急ぎ過ぎるきらいがある。

 例えば07-08シーズン、ベスト4のうち3チームがイングランド勢となり、決勝がマンチェスター・ユナイテッド対チェルシーの顔合わせになった時には、プレミアリーグに流れ込む巨額の放映権料とセットで「イングランドの時代が来る」と言われたものだが、実際はそうならなかった。

 決勝がバイエルン対ドルトムントとなった12-13シーズンには、ブンデスリーガの健全な経営とセットでやはり「ドイツの時代が来る」と言われた。

 さすがにリバプールとトッテナムが決勝で顔合わせた昨季は同じようなことは言われず、今季ベスト4にイングランド勢が皆無なことを考えれば、その慎重な態度は正解だった。

 ただ、国籍ではなく戦術面に注目すれば、スペイン勢のリズムの遅いサッカーは時代遅れになりつつある、という前兆かもしれない。

 リーガでもインテンシティが高く、ボール出しにプレスをかけてくるエイバルやヘタフェ、グラナダ、オサスナのようなチームはあり、増加傾向なのだが、いずれもテクニック不足を補うための手段として使われている。

 Rマドリーやバルセロナ、Aマドリーの3強からすれば、かわしていればいずれ相手は息切れし、最後はクオリティの優位で勝てる、という計算が立つ。

 だが、マンチェスターCやライプツィヒ、バイエルンのようにテクニックがあり、かつ高リズムのチームはない。後ろから繋ぎ、こちらがプレスをかけようすればかわされて自陣に釘付けにされ、こちらがボール出しをしようとすればプレスをかけられ、やはり自陣から出られない。ポゼッションとハイプレスを両立させた戦術に内容で圧倒され、その当然の帰結として敗れたのが今回のCLだった。

 唯一、セビージャがハイテンポのサッカーを実践しているが、90分間続けるわけではないし、勝ったものの押し込まれたUEFAヨーロッパリーグのマンチェスターU戦を見る限り、戦術的な優位に立っているとは言えないだろう。

テクニックの優位も幻想か

 リズムの優位に対抗するものとしてスペインで常に言われているのが、テクニックの優位。つまり、パスを繋いでリズムを落とすことだ。だが、そのテクニックの優位は幻かもしれない。

 プレスにさらされた時のRマドリーやバルセロナのボール出しの拙さはどうだ。プレスは心理的な重圧でもあり、焦って力を出せなかったという面を差し引いても、パスミス、トラップミスの連発には目を覆いたくなった。同時に、それはボール出しがパターンとして確立されていない戦術的な未熟さも明らかにしていた。

 リーガは2強に対抗していくことで強くなっていった。だが、今季と昨季の優勝チームの勝ち点87は、08-07シーズン以来の低水準である。3強以外のチームが力を付けたのかしれないが、3強のレベル低下は否定できないだろう。

 監督交代が必至のバルセロナ、戦術的な行き詰まり感のあるシメオネのAマドリー。タレントにハードワークさせるジダンのRマドリーにしても、戦術的な修正はあっても意識改革という意味合いが強かった。

 新シーズンの3強がどうなるか、欧州カップ戦がどうなるか、ルイス・エンリケ率いる代表も同じように取り残されるのか。注目していきたい。


Photo: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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