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PKの判定を巡って炎上発生。VAR導入3年目、殺伐とした雰囲気に

2020.02.05

 2月2日に行われたセリエA第22節ユベントスvsフィオレンティーナ戦の裁定が”炎上案件”と化した。

相手ファンの罵倒に選手が応戦

 問題となったのは、ユベントスの1点リードで迎えた79分のPKだ。ドリブルでエリア内に侵入してきたユーベMFロドリゴ・ベンタンクールに、フィオレンティーナDFフェデリコ・チェッケリーニが接触。ファブリツィオ・パスクァ主審はPKを宣告した。

79分、フィオレンティーナDFチェッケリーニの接触がファールと判定されユベントスにPKが与えられたシーン

 両者の接触がペナルティエリア内で始まったのかどうかも微妙なら、チェッケリーニの腕がベンタンクールを倒すためのものだったのかも微妙な状況の中、VARによるレビューが通達される。しかしパスクァ主審の判定は変わらずPK。チェッケリーニは猛抗議をし、イエローカードをもらってしまった。

 そのPKをクリスティアーノ・ロナウドが決め、ユーベはアディショナルタイムにも1点を追加して勝利する。ところが試合後に、騒動は拡大した。

 まずはチェッケリーニ自身。インスタグラムにユーベファンと思われる人物から「てめえが下手くそなのを審判のせいにしてんじゃねえ、家に帰れや。3−0だろ」と罵倒するコメントが書き込まれる。これにチェッケリーニが反応し、「なんでお前らがイタリア中から嫌われてんのか尋ねてみろよ。先に答えてやる。勝ってるからじゃねえからな」と、かなり厳しい調子でレスをつけてしまった(その後、チェッケリーニはこのコメントを削除している)。

クラブ首脳同士も舌戦を展開

 しかし、彼よりももっと激昂したのはフィオレンティーナのロッコ・コンミッソ会長だ。「この7カ月間、審判を批判しなかったが、今日はVARが彼ら(ユベントス)を助けた。これでは先に進めない。強いのならジャッジに助けてもらわなくてもいいはずだ」と報道陣にまくし立て、「私の言ったことは当然アメリカにも伝わるし、このインチキが世界に伝わればみんな嫌気がさすだろう。罰金を取りたければ取ればいい、私はレガ・セリエAにも訴える」と、アメリカ人オーナーらしく外圧までちらつかせた。

 これに対して、今度はユーベのパベル・ネドベド副会長が「コンミッソ会長はお茶でも飲まれて落ち着かれた方がいい。ああいう発言はカルチョをダメにする」と応戦。すると地元メディアから「自分たちはスーペルコッパの後、テレビカメラのないところで審判団のロッカールームに詰め寄り、罰金を食らったではないか(『ラ・レプッブリカ』)」などと批判される事態に拡大した。

 コンミッソ会長は2月3日、コベルチャーノに赴き、イタリアサッカー連盟の要人に対してもリスペクトを訴えたという。一方でイタリアサッカー審判協会のマルチェッロ・ニッキ会長は「ああいう態度を取られる時、審判団だって嫌な思いをしているのだ」と批判したが、コンミッソ会長はそれにもひるまず「アメリカでは判事は黙って仕事をする。審判団も同じようなものなら黙るがよろしい」と反論した。

 VAR導入から3シーズン目に突入したセリエAだが、今シーズンは物議を醸すジャッジも少なくなく、幾度となくサッカー関係者が激昂する事態になっている。そのトーンは徐々にエスカレートし、カルチョの世界の雰囲気は結局、VAR導入前と同様に殺伐としたものになっている。


Photo: Getty Images

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VARクリスティアーノ・ロナウドフィオレンティーナユベントス会長

Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。