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クラシコは無事に開催される予定。独立派団体が企てるPRとは?

2019.12.15

 12月18日のクラシコは、どうやら無事に開催はされそうだ。独立運動の中心団体「ツナミ・デモクラティック」が、「試合の開催を妨げるつもりはない」という声明を発表したからだ。

 当然の判断だろう。

 「ツナミ・デモクラティック」の目的は、カタルーニャで起こっている事態の世界へのPRにある。そのために、世界中で650万人の視聴者がいるというクラシコを利用しようとしているのだ。試合が中止になってチャンネルを変えられてしまえば意味がないし、試合の妨害は、独立派にも多数いるだろうバルセロナファンを含め、スペインや世界のサッカーファン、メディアの反感を買いかねない。

2017年は政府のイメージが下落

 政治運動というものは、イメージ操作が非常に重要だ。

 もし、独立派のデモと試合を警備する3000人の警察+ガードマンの暴力的な衝突が世界の目に触れることにでもなれば、彼らの独立運動が共感を失うのは間違いない。独立派にすれば「表現の自由」や「民族自決権」を巡っての争いであり、それを「民主的ではないスペイン政府が弾圧する」という構図なのだから、「暴力的」というレッテルは絶対に貼られるわけにはいかないのだ。

 そもそも、この独立をめぐる騒動がこじれたのは、スペイン政府によるイメージ操作の失敗が原因だった。

 2017年にカタルーニャ独立の是非を問う住民投票が行われた際に、当時の首相はこれを憲法違反とし、多くの逮捕者や警官隊との衝突によるケガ人を出した。「民主的でないスペイン」とのイメージが、この時の報道で一気に世界中に広がってしまった。

 私見を言えば、どうせ住民投票は違法で結果には法的効力がないのだから、やらせればよかったのだ。「同じスペイン人を傷付けるわけにはいかない」とでも言って警察の介入を中止しておけば、首相の人気が上がって保守党政権は今も継続しているはずで、その後に続く1年で2回の総選挙を行わなければならなかった政治的混乱と、逮捕者の釈放をめぐってのデモが頻発することもなかっただろう。政治であれば、そういう超法規的な懐柔策もあったはずだ。

12月18日、カンプノウで何かが起こる

 話をクラシコに戻す。

 というわけで、試合は開催される。今の注目は、どこで、どのタイミングで、世界の視聴者を意識したどのようなPRがなされるのか? ということに移った。CMでも中断されず、アナウンサーにも無視されない効果的なPR、「ツナミ・デモクラティック」によれば2万5000人が参加するPRとは、いったいどんなものなのか?

 リーガではアナウンサーと解説者に対して「独立運動について言及しないように」という指示が出されている。それが今回、予想される大規模なPRにおいても守られるのか? 日本での中継ではどう言及されるのか、あるいはされないのか?

 12月18日、カンプノウで何かが起こる。

 「SPAIN, SIT DOWN & TALK」(スペインよ、対話の席に付け)の横断幕を広げる程度のものに留まってほしいと思う。


Photo: Getty Images

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バルセロナビジネス文化

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。