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もつれるキエーザの去就問題。フィオの新会長がユーベを口撃

2019.07.27

ユーベは「虫唾が走るのだ」

 「ユベントスはイタリアの中で強大な権力を誇っている。だが、イタリアのサッカーにとっては良いことではない。いっつも勝つのは彼らなのだからね。そのくせ、チャンピオンズリーグに行ってはいっつも毎年のように優勝できずに敗退して戻ってくる。それがまた虫唾が走るのだ。イタリアサッカーは、もう少し均衡した状態でなければならないのだ」

 ニューヨークで発された一言が、イタリアで物議を呼んでいる。23日、フィオレンティーナの新会長であるロッコ・コンミッソが、イタリア各メディアのインタビューを通してユベントスを”口撃”した。就任間もないイタリア系アメリカ人オーナーがいきなりユーベに噛み付いた理由は、去就が話題となっているフェデリコ・キエーザを巡ってのことだ。

 イタリア代表の中核として定着し、先のU-21欧州選手権でもエースにふさわしい活躍をした成長株。今夏でのステップアップも噂されていたが、コンミッソは「彼を(かつてフィオレンティーナからユーベに移籍した)第2のロベルト・バッジョにはしない」と残留を断言した。もっともキエーザ自身は移籍を希望し、とりわけユーベへのステップアップに心を動かされているともっぱらの噂だ。彼自身は公に移籍の希望を明言したわけではないが、その意思があることを会長は冒頭のセリフで暴露した。つまり、後ろでユーベが糸を引いているのではないかと疑いをかけたのだ。

金も出すが口も出すアメリカ人オーナー

 現在、フィオレンティーナはアメリカ合宿中。コンミッソとキエーザは23日に会談を持ったが、「去就については先送りすることにした」とキエーザは発表した。一方でコンミッソは「放出はしない。カネの問題ではない。2022年までの契約は遵守してもらう」と明言。メディアの間では「キエーザが契約延長に応じない場合は”飼い殺し”の措置か」などとも書かれており、この先ももつれそうである。

 さてこの件で注視すべきことは、コンミッソがクラブ経営において積極的に発言し、立ち回っているということだ。これまでセリエAに来た海外の資本家は、チーム強化などの経営戦略は事情をよく知るイタリア人幹部に任せて一歩引くことが多かった。しかし彼は、前面に出て経営のことをコメントする。右腕とされるイタリア系アメリカ人幹部のジョー・バローネも、キエーザへ積極的に話をしているという。キエーザを売れば7000万ユーロ(約85億円)ほどの収入が見込まれるのに、というメディアの指摘に対しても「それがどうなろうが選手はちゃんと補強する」と反論していた。

 金も出すが口も出す、というタイプのオーナーは、いい意味でも悪い意味でもイタリア人クラブオーナーの典型とされた。しかし近代的なスポーツビジネスに慣れたはずのアメリカ人が、このようなスタンスを取るとは。ユーベに積年の遺恨の念を抱くファン感情を代弁してくれたということで、フィオレンティーナのサポーターズクラブ組合はコンミッソの支持を宣言している。


Photos: Getty Images

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Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。