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コッパ・イタリア決勝で物議。VARはちゃんと機能していたか?

2019.05.19

ガスペリーニ監督の表情が一変

「後半はいいサッカーが展開できたと思うが、CKというひとつのエピソードで試合が変わってしまった。それも仕方のないことだろう。わかっていたことだが、ラツィオには優秀な選手がそろっていた。ただ、このローマで行われる決勝まで来られたのは、本当に素晴らしい体験だったよ」

 コッパ・イタリア決勝でラツィオに惜敗したアタランタのジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督は、試合直後のTVインタビューでは清々しく試合を振り返っていた。

 その監督が温厚な表情を一変させたのは、試合後に国営放送『RAI』のインタビューに応じた時のこと。「これはどう思いますか」。インタビュアーはある映像を見せて、指揮官にコメントを求めた。25分、マルテン・デ・ローンがエリア内で放ったシュートが、ラツィオDFバストスの高く上がった腕に当たる。「私はこんなの見てなかったぞ」とガスペリーニは驚き、「意図的でなかったとか以前にハッキリしているじゃないか。防がれなければシュートは枠に行った。ゴールが決まっても我々は負けていたかもしれないが、試合を変えるエピソードだぞ? とても重大なことだ。酷すぎる!」と激昂。他の質問に答えても監督の気は変わらない。スポーツマンシップに則り敗戦を受け容れたガスペリーニ監督が、誤審があったと指摘され表情を歪ませる様子は、傍目にも気の毒だった。

惜しくもラツィオに敗れたアタランタのガスペリーニ監督

VAR導入下でも、判断するのは人間

 問題視されたのはVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)システムだ。この試合では両ベンチにもモニターが設置され、審判団がチェックする映像をともに共有できることにもなっていた。だが問題のシーンでは、映像による検証そのものが行われなかった。

 なぜそうなったのかということについて、ツイッターで興味深いやりとりがなされていた。『RAI』の記者が個人ツイートで「VARのコントロールルームには映像が遅れて入ってきた。もうすでにプレーは再開されていたので、担当の審判は主審に注意を促すことができなかった」と発言。それに対し、レガ・セリエAで同試合中継のスーパーバイザーを務めていた人物が「そんなことはありえない。設置されたTVカメラは全てライブ中継されていたし、実際当該シーンは6秒後にリプレイされていた」とリツイートで反論していた。

 4日前のセリエA、トリノ対サッスオーロ戦では、似たようなシーンでVARからの介入があり、主審に一度は見逃されていたハンドが再検証されPKが与えられている。リプレイによる再検証というテクノロジー導入下でも、判断するのは人間に委ねられているという点では変わりはない。ニコラ・リッツォーリ審判選定委員長は「VARを導入した昨季は警告の数も抗議の数も明らかに減っていたが、今シーズンには導入前の統計数に戻っていた」とコメントし周囲の理解を求めていた。ただVARがあるがゆえに、ジャッジの精度の要求も厳しくなっているという側面があるとも言える。

Photos : Getty Images

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Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。