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プレミアの恐竜はなぜ滅びない? “失敗監督”が求められ続ける理由

2018.03.06

ロイホジドン、アラダザウルス、ジュラシックパーデュー…生き延びてきた歴史は偉大です

 今から3年前、選手のコンディション調整をめぐり“恐竜”と揶揄(やゆ)されたイングランド代表監督こそ、昨年9月上旬からクリスタルパレスの指揮を任された、御年70歳のロイ・ホジソンである。同氏に続き、同じく元代表監督のサム・アラーダイスと、これがプレミア5クラブ目となるアラン・パーデューも現場に復帰した。

 カタールのTV局で「英国人監督は二流扱いを受けている」と、外国人指導者との格差を憂えていたアラーダイス本人にとっては喜ばしい人事だが、3人ともイングランド人とはいえ平均年齢63歳である。

 では、なぜ老将が重宝されるのか。それは、ここ1年間で上記3人を雇ってきたクリスタルパレスを見れば明白だ。目の前の残留にしがみつく生活からの脱却を目指し、今季はクラブ史上2人目の外国人監督フランク・デ・ブールを招いてスタイルの刷新を図るも、わずか4試合で見切りをつけてホジソンに泣きついた。実は、上記3人のうち降格経験者はパーデュー(1回)だけ。結局、どのクラブもプレミア・バブル最盛期の放映権を求め、安心と信頼の残留実績に頼るのだ。

 恐竜の中でも最も生存力が強いのはエバートンの“アラダザウルス”だろう。引き継いだ戦力が、他2チームとは別次元にある。さらに優秀な右腕を2人(サミー・リーとクレイグ・シェイクスピア)も招へいし、彼らの活力注入でチームの蘇生に成功した。パレスの“ロイホジドン”は劇的な変化を求めずに冷静に対応している。前任者の難解な[3-4-3]からシンプルな[4-4-2]へ変更し、エースのザハを最前線で攻撃に専念させるなど、個の能力を引き出して浮上中だ。一方で絶滅の危機に瀕しているのが“ジュラシックパーデュー”である。もともと攻撃タレントが乏しいウェストブロミッチには、監督交代による一時的なブースト効果もない。それでも「私の歴代チームは得点力が売り」と豪語している。

そしてモイーズも、なぜ?

 59歳、デイビッド・モイーズのカルト人気も健在だ。エバートンにおける11年間(02-13)の実績は、よほどのことがない限り揺るがない。マンチェスター・ユナイテッド(前年王者を中位へ)とサンダーランド(10年ぶりの2部降格)での失態で多少の傷がついたとはいえ、モイーズは依然として英国フットボール界では信頼のブランドなのだ。むしろ、優勝・残留争いで負った傷のおかげで、「中位クラス専門」のブランド強化に繋がった。だから限界の見えたビリッチ体制と決別したウェストハムは、躊躇(ちゅうちょ)なく彼を選んだのだ。

 当然、守備意識が高い監督の招へいに顔をしかめるファンもいた。するとモイーズは11月のホーム初戦後、選手以上に観客を称えたのだ。さらに、半年後にW杯を控えるGKハートを先発から外し、「私はウェストハムを最優先する」と主張した。クラブOBの熱血漢、スチュアート・ピアースを補佐に招いたのも正解だ。ピアースは1-0で新体制初勝利を挙げた第16節チェルシー戦でタッチラインに転がって来たボールを(ストイコビッチのように)蹴り飛ばし、審判から注意されるも観客を沸かせた。こういう雰囲気作りに抜かりがないため、批判を気にせずに守備に専念でき、チェルシーやアーセナル(0-0)からも勝ち点を稼げているのだ。

 前任者より戦術確認に時間を割くなど、モイーズの改革は続く。おそらく、ハマーズは“中の中”にうまく収まるはずだ。


Photos: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。