マジョルカは2月4日、成績不振のためホアキン・カパロス監督の解任を発表した。シーズン開幕後は3勝2分けと好発進したが、その後は苦戦が続き勝ち点を6しか積み上げられず、降格圏に沈んでいた。かつて暗闇の中を歩んでいたマジョルカに光をもたらしながら、志半ばにして去るカパロスの情熱あふれる言葉に、今一度耳を傾けてみよう。
(※インタビューは2012年10月30日に実施)
本誌281号掲載記事
特集「これって夢…じゃない幸せ。欧州で、国内で、シーズン序盤を満喫する人々」より
ここ1、2年のマジョルカは暗かった。10年5月に経営破たんから会社更生法を申請。7月、負債過多を理由にUEFAからEL締め出しを食らう。昨年9月には、再建を担ってきた監督ラウドルップが内紛を理由に突如、辞任。監督人事を不満として、12月には株主だったテニスプレーヤーのラファエル・ナダルもクラブを去った。そんな大揺れの最中にベンチに座ったのが、自身もスイスのザマックスと喧嘩別れしたばかりのカパロスだった。「天職」という監督の座に躊躇(ちゅうちょ)せず座った彼の1年目は、「団結」を合言葉に8位と残留目標を軽々クリア。今季は、クラブ史上最高ペースのスタートダッシュでリーガの序盤をかき回している。契約更新が決まった時には、スタジアム周辺で数百人がお祭り騒ぎをしたほどの人気者が、この地中海の島に自信を取り戻した。
インタビュー・文 工藤拓
■アットホームなクラブ
「うれしかったよ。ちょっと照れくさかったけどね」
——第5節終了時点での勝ち点11はクーペル時代の97-98シーズン以来の好発進となりましたが、3勝2分の後に4連敗と急に調子が落ちました。ここまでの出来をどう評価しますか?
「本当に良いスタートを切ることができたと思う。高いインテンシティに強い精神力がともなうプレーでね。だが、その後多くの選手に重大なケガが生じてしまった。5人(ヌネス、アントニオ・ロペス、ハビ・マルケス、ジョアン・ビクトル、アルバロ)もの選手を失ったので、再びチームを作り直さなければならなくなった。せっかくだから、できることならさらに強いチームを作りたいね」
——第一の目標は残留ですか?
「今はまず、短期的な目標に集中する必要がある。現在の悪い流れを一刻も早く断ち切り、勝ち点を加えることだ。その上で新たにチームに加わった選手の適応を進め、ケガ人の回復を待ちながら、どこまで上を目指せるか検討していきたい」
——セビージャやラ・コルーニャ、ビルバオなどサッカーどころの雰囲気をご存知ですが、マジョルカにはそこまでの熱気がありません。
「ここのスタジアムは(陸上トラックがあるので)広い。それらのチームと比べ、観戦に来てくれるファンの数も少ない。だが、我われはその環境に適応し、毎週末より多くのファンが来てくれるよう盛り上げていかなければならない」
——でも、アットホームな雰囲気はあります。先日(10月15日)迎えた誕生日には、スタッフからお祝いのビデオが贈られたそうですね。
「そうだね。ビデオはコーチングスタッフが作ってくれた。彼らはあらゆる状況に対応できる優秀なスタッフだ。チームとしての団結も強く、何年も一緒に働いているからお互いのことをよく知っている。それだけに驚かされたよ」
——どんな内容でした?
「ドクターやフィジカルトレーナー、用具係やグラウンドキーパーまで、スタッフ全員からの『おめでとう』が詰まっていた。うれしかったよ。ちょっと照れくさかったけどね」
——こういう形のプレゼントは初めてでしたか?
「スタッフからもらったのは初めてだな。プライベートでは家族からビデオメッセージをもらったことがあるが」
——これまで何度も苦しい状況にあるチームを立て直してきましたが、ファンの支持を得られたと感じる瞬間はどんな時ですか?
「幸運にもファンの人々のサポートを受けてきたが、それは私だけじゃなく、スタッフ全員のおかげだ。人々は我われが意欲を持って、クラブのために力を注いでいるのを見て、共感してくれているのだろう」