
知ればさらにサッカーが面白くなる!
新戦術用語のすゝめ#3
「疑似カウンター」「ジャンプ」「ピン留め」……サッカー中継や分析記事内で登場する戦術用語、実はよくわからないと感じたことはないだろうか? 戦術的概念を言語化したサッカー用語は、試合をより深く味わうことができるツールにもなる。今特集では、最近よく使われるようになった新戦術用語の意味をわかりやすく解説したい。
第3回は、ハイプレス時に行われる縦方向のマークの受け渡し=「ジャンプ」について。ここ数年、現場の選手たちの間でもよく使われるようになった戦術トレンドを象徴する新用語を徹底解剖!
起源はトータルフットボールの「ボール狩り」
「ジャンプ」はハイプレスにおける前進守備の形態です。図を見ていただくのが早いでしょう(図1)。

ここでは[4-4-2]同士の対戦を想定しています。攻撃側が3バックになっているのはMFから1人が下がっているからです。フォーメーションの変化(可変システム)によって数的優位を作るビルドアップは定番化しています。
これに対して守備側が高い位置からボールを奪いに行きたい時に、MFの1人が上がって相手の3バックに対して3人がマークする形にします。攻撃側に合わせて守備側も可変するわけです。
その際に、縦方向のマークの受け渡しが行われます。これが「ジャンプ」です。
この図では守備側の左MFが最前列に上がってプレス、そのMFが放した攻撃側右SBに対して左SBが前進してマーク。さらに左SBが放した攻撃側右MFに対してCBがマークするという流れになります。いずれも縦方向へ前進しながらのマークの受け渡しで、これが「ジャンプ」と呼ばれているのは、自分のポジションから1つ前へ飛び出していく様子からだと思いますが、はっきりしたことはわかりません。
「ジャンプ」という用語自体を知ったのは3年前くらいです。選手がそう話していたのを聞いて、「ジャンプと呼んでいるのだな」と気づきました。ただ、これ自体はかなり昔からあるものでした。
いつからかは定かではないのですが、おそらく広く認識されたのは1974年W杯のオランダ代表による「ボール狩り」だと思います。
……

Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。